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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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96.剣の稽古

 結局おじさんの家を片付けるのに二日かかった。合間に冒険に行ったりしたので春休みももう終わりだ。

 おじさんの家にあった使えるものは、木箱三十箱分以上と大量だった。

 孤児院に寄付したらナディアと院長先生はとても喜んでいた。多すぎるから他の孤児院にも回してくれるそうだ。

 お母さんの形見は髪飾りなど細かいものが沢山見つかって、僕はいくつか分けてもらった。中でもカッコイイ装飾の入ったピンキーリングがお気に入りだ。いつも付けていられるからね。

 お母さんのものは女の子って感じがしないカッコイイものが多いから付けやすい。

 

 今日は片付け終わりにおじさんに剣術を教えてもらうことになった。

「剣術と言っても最初はひたすら素振りと型を覚えることだ。エリスは記憶力がいいから型はすぐに覚えられるだろう」

 そう言っておじさんは基本の姿勢と防御の型を教えてくれた。


「エリスは本当に物覚えがいいな。少し打ち込んでみるから防いでみろ」

 軽く打ち込んでくるおじさんを教えてもらった型で受ける。ゆっくりと打ち込んでくれるからわかりやすい。

 だんだん早くなっていくと、ほとんど反射で体を動かさなくちゃいけなくて大変だった。

「うん、いいじゃないか。エリスは剣術の才能もあるな」

 本当だろうか?おじさんは僕に関しては何でも褒める傾向にあるからな。才能があるのかは自分ではよく分からない。


「攻撃の型も教えよう。でもまだ実戦では使うなよ。実戦で剣を使うのは俺の許可が下りてからにするように」

 僕は頷いた。きちんと型が身につくまでは危険という事なんだろう。

 僕はそんな無謀な勝負はしない。命あっての物種だ。

「ルースは剣術を習ったそばから魔物に突っ込んで行ったからな……」

 おじさんが遠い目をしながら言った。お母さん……

「エリスはそんな事はしないから、安心して教えられるな」

 おじさんの指導の基準がお母さんなら確かに僕は良い生徒なんだろう。あまりお母さんのようにおじさんに心配をかけないようにしよう。

 

 攻撃の型を教わると、おじさんに打ち込んでゆく。当たり前だけど簡単に防がれてちょっと悔しい。

 時々おじさんが攻撃してくるから反射的に防御する。その度におじさんは褒めてくれる。

「攻撃が雑になってるぞ、ムキになるな。今は型通りの攻撃をすることを意識しろ」

 時々指導が入るけど僕は楽しかった。剣術ってこんなに楽しいんだな。毎日練習しよう。


 二時間も続けたら僕はヘトヘトになって座り込んでしまった。

「本当に覚えが早いな。今日教えたのは本当に基本の型だけだ。他にもあるが、エリスならすぐに覚えられるだろう」

 おじさんが水を差し出しながら言った。水を受け取ると一気に飲み干す。冷たくて気持ちいい。

『エリス、頑張ったの!』

 アオが疲労回復の魔法をかけてくれる。いい感じに疲れが和らいだ。

『いいなー剣、カッコイイなー。僕も使いたい!』

 シロが剣を羨ましそうに眺めている。

『兄さんには立派な爪と牙があるじゃねえか』

 クリアがシロをなだめている。クリアの方が生まれが遅いのになんでかクリアは言うことが大人っぽいんだよね。モモが卵のうちから教育した成果かな。

 

 そんなモモは使ってない花壇に穴を掘って土を耕していた。いつの間にか生い茂っていた雑草も無くなっている。雑草はアオが食べたのかな?

『雑草はお片付けしておいたの!』

 アオが誇らしげに言う。花壇を見たおじさんは苦笑していた。

「何も植える予定は無いんだけどな……せっかく耕してくれたんだし何か育てるか」

『育てるならベリーがいいと思います!手間がかかりませんし、美味しいですし』

 モモの言葉を通訳するとおじさんは笑った。

「わかった、ベリーな。植えておこう」

 モモは嬉しそうだ。おじさんの家には滅多に来ないと思うんだけど、おすそ分けを期待しているのかな?

 土で茶色くなったモモをアオが浄化魔法で綺麗にすると、僕らはおじさんの家を後にした。

 

 家に帰ると僕はベッドに倒れ込む。シロがすぐに横に来て抱き枕になってくれた。

 夕食まで一眠りしようかな。

 

 僕はお母さんのピンキーリングを見つめて考える。

 おかあさん、今日は剣術を教わったよ。身軽なお母さんみたいに早く上達出来ないかもしれないけど、きっと強くなるからね。そしたらお母さんの剣を使わせてね。

 

 疲れから、僕の意識は夢の中へ旅立って行った。

 見た夢は珍しく前世の夢ではなくて、おじさんとお母さんの夢だった。僕はお母さんの顔も知らないのに、不思議だね。

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