95.おかたづけ
今日は宣言通りデリックおじさんの家の片付けにやって来た。お母さんの形見の品があるかもしれないからだ。
おじさんはもう三十年以上同じ家に住んでいるらしい。そりゃあ散らかりもするだろう。
『おっ片付け~するの~』
アオが軽快に歌いながら飛び跳ねている。
『俺は手がないからな、片付けは手伝えそうもねーや、悪いな』
クリアが申し訳なさそうに言う。
皆のんびりしてくれてて大丈夫なんだけどな。クリアは意外と律儀だ。
『お母さんの形見の品が見つかるといいですね!』
モモもどうやら手伝ってくれる気のようで、何やら気合を入れている。
シロは匂いで探せるかなと首を傾げていた。何十年も前ならさすがに無理なんじゃないかな。
おじさんの家に着くと、おじさんが出迎えてくれた。
とりあえず玄関は何かよく分からない置物が置いてあるけど綺麗だ。
「いらっしゃい、今日はありがとうな」
おじさんはそう言うとリビングに通してくれた。あれ?雑然としてるけど散らかっては無いぞ。
「流石にリビングと私室はそれなりに綺麗にしてるぞ。散らかってるのは普段使わない部屋だ。リジル曰く倉庫部屋だな」
倉庫部屋?おじさんは物が多いんだろうか。とりあえずその部屋を見てみることにする。
部屋の扉を開けると驚いた。天井近くまで積まれた木箱の山に、隅に置物やら何やらが積まれている。
何だこの部屋。
「あー、仕事で強い魔物とか倒すとな、近くの町の人達が感謝の印にと沢山色々なものをくれたりするんだ。食品以外の使わないものをとりあえず部屋に放り込んでたらこうなったんだよ」
なるほど倉庫部屋か、納得だ。七賢者ともなると貰える感謝の品も多いだろう。これは頑張って片付けないと。
「ちなみに同じ状態の部屋があと三部屋ある」
僕は思わず真顔でおじさんを見てしまった。おじさんは必死で目を逸らしている。
「ちゃんと浄化魔法はかけているからホコリなんかは無いからな。まあいいかと長年放置した結果がこれだ」
僕は呆れてしまった。みんなの感謝の印を一体なんだと思っているのか。でも貰いすぎるとそうなるのかもしれないな。
僕は早速木箱を開けて、中の物ごとに分類することにした。
分類されている部屋もあるらしいが、その中のものをどうするのかは決まっていないらしい。
貰える品は食べ物や布地、民芸品が多いそうだ。僕はおじさんに布地は孤児院に寄付しないかと提案してみた。布地なんかあってもおじさんは絶対使わないだろう。役立ててくれる人のところに行く方が布地も幸せだと思う。
「確かにそうだな、片付けたら寄付しに行くか」
ナディアもきっと喜ぶ。小さな子が多いから服は直ぐにダメになると嘆いていたからな。
僕はおじさんと一緒に木箱を開けながら分類していく。色々な民芸品はどうしようか本当に困った。放置してきたおじさんの気持ちがわかる気がした。感謝の印なのだからゴミに出すのもはばかられる。
とりあえず食器なんかの使えそうなものと置物なんかの使えなさそうなもので分けてゆく。
「食器も孤児院に寄付で良さそうだな」
確かに、それでいいように思う。かなり高価そうなものだけど、食器は食器だ。やはり使ってくれる人のところにあるのがいいだろう。
視界の隅でアオが体を変形させて木箱を開けている。モモも協力して中の物を僕に教えてくれた。
シロとクリアは手伝えないのでお休みモードだ。
木箱を開けていると、おじさんが小さい頃着ていた服を見つけた。
「お、きっとその辺に子供の頃ルースが置いていったものもある気がするぞ。確かまとめて片付けたからな」
僕はその周辺の木箱を開けてゆく。すると玩具が沢山詰まった木箱を見つけた。
「ああ、懐かしいな。小さいルースとこれで良く遊んでやったんだ。ネリー様が仕事をしている間ルースを預かってな。ルースとは十歳近く歳が離れていたのに、子供同士遊んでろなんて言われたもんだ」
お母さんが遊んでいた玩具は男の子向けのものが多かった。女の子向けの物にはあまり興味を示さなかったらしい。
「好きなものを持って行っていいからな。この魔物型の人形なんてルースが特に気に入っていた物だ。よく正義の味方ごっこに付き合わされたよ」
それはボロボロのぬいぐるみだった。僕はそれを貰っていくことにした。
おじさんが玩具ごとにお母さんとの思い出を語ってゆく。僕はお母さんを身近に感じられて嬉しかった。二人は本当に兄妹みたいに育ったんだな。
兄としか思えないとお母さんは言ったらしいけど、話を聞いていたら本当に兄妹のやり取りだ。僕はお母さんにフラれたというおじさんを少し不憫に思った。
ブックマークや評価をして下さると励みになります。
お気に召しましたらよろしくお願いします!




