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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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90.グレイスの悩み

「練習は進んでいるかな?」

 ブライトンさんはメルヴィンから順番に個人指導してくれた。

 僕の番が回ってくるまでソワソワしてしまう。

 そわそわし過ぎて水晶に込めた魔力が乱れてしまった。反省しなくては。

 

 そしてやって来た僕の番。一旦水晶の練習を中断して魔法を見てもらう。

「驚いた、本当にネリーはちゃんと教えていたんだな。指導にはとことん向かないと思っていたのに」

 ブライトンさんが驚いている。おばあちゃん、ブライトンさんをちょっと振り回しすぎたんじゃない?

「ネリーが指導担当だったデリックも自主的に私のところにきていたくらいだからな」

 新事実発覚に笑ってしまう。デリックおじさんはきっとおばあちゃんの感覚的で雑な指示を理解できなかったんだろう。僕も基本ひたすら反復練習だったからな。

 学園の授業があまりに分かりやすくて感動したくらいだ。

 それを言うとブライトンさんは笑った。

 

「エリスは歳の割に基礎がしっかりしているが、まだ安定させられるはずだ。魔力制御と魔力操作の練習は毎日やること。後はそうだな、魔法陣を描く時間が少しかかりすぎているな。色々な魔法を日々もっと使うようにして魔法陣を描く時間を短縮できるように努力することだ。特に得意な魔法はもっと描く時間を短縮できた方が役に立つぞ」

 ブライトンさんは僕にあっていそうな効率的な練習方法を教えてくれた。短い時間でとても為になった。

 その後も、練習は続いて気づけば終了時間になっていた。

 とても時間が早く過ぎた気がする。

 周囲を見回すと英雄に魔法を教わることが出来た皆は目を輝かせていた。

 

 マリリンおばさんとブライトンさんが前に出る。

「今日はみなさんそれぞれ有意義な時間を過ごすことが出来たでしょうか?ここにいる皆さんが立派な魔法使いとなって社会に貢献できることを期待します。本日はこの魔法講座を受講して下さりありがとうございました」

 みんな拍手をして、魔法講座は締めくくられた。

 僕らは感想を語り合う。

「やっぱり基礎って大切なんだね。魔力制御の練習、最近してなかったから久しぶりにやって出来なくなってて驚いたよ」

 テディーが溜息をつきながら言うとみんな頷いた。

 つい新しいことばかり練習してしまいがちだけど、土台がしっかりしてないと崩れてしまうんだな。

 これからは基礎訓練も頑張ろう。

 

 僕らは話しながら転移ポータルで街に戻ると、グレイスを連れてカフェに入る。

 魔法の練習中は普通だったけど、今朝の様子は普通じゃなかった。

 僕らはみんな心配していたんだ。

 なるべく人の少ないテラス席に案内してもらうと、グレイスに詰め寄る。

「で、グレイスはなにがあってあんな顔をしていたの?」

 ナディアが問うとグレイスは遠慮がちに語り始める。

「実は来年度から、私の双子の妹が学園に入学することになったんです」

 双子の妹なんていたんだ。グレイスからは兄の話しか聞いたことがない。

「それはおめでとう。でもどうしてそれでそんなに落ち込んでたの?」

 ナディアが続きを促す。

 

「妹は、ティアラは『占い師』なんです。ティアラは去年の入学試験の前に未来を見ました。学園に合格する未来です。それからティアラはどうせ合格するからと勉強もサボるようになって……試験の前日も遊びに行っていました。そして入学試験の当日、高熱を出したんです」

 

 占い師はとても珍しいジョブだ。唐突に未来が見えることがあるというジョブで、自由に未来を見るには相当な鍛錬が必要だけど、欲しがる人の多いジョブだ。でも未来は流動的で、見た未来は確実に当たるわけではない。妹さんは自分の能力を過信しすぎたんだろう。

 

「それから元からあまり仲の良くなかったティアラとの仲は最悪になってしまって。もしかしたら入学してきたら皆にも失礼なことを言うかもしれません。妹はジョブ至上主義なので、上位魔法使い系のジョブ以外は軽視するんです。古臭い考えだからやめるように父と兄が何度も言ったんですが、母もそういう傾向があって……母は妹ばかりを甘やかすので、父が言っても妹は耳を貸さないんです」

 

 僕はグレイスが自分はまじない師だから役に立てないと言っていたのを思い出した。

 ジョブ至上主義の母親に育てられたんなら納得だ。まじない師はまじないの効力が弱い分人数も多い、魔法使い系のジョブの中では下位扱いされるジョブだ。

 お母さんは妹さんの方が将来有望と判断したんだろう。

 最近はその考えは見直されてきていて、騎士団にもまじない師とかが居るし、『商人』なのに文官になる人だっている。

「せめて私に突っかかるのを止めてくれるといいんですが……どこか当たり散らす場所がほしいみたいで……」

 

 なんだか大人びたグレイスとは対照的な子なのかもしれない。グレイスは妹が僕らに迷惑をかけないか心配しているようだ。

 みんなで大丈夫だとグレイスに言う。グレイスは泣きそうな顔をしていた。

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