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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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82.卒業式

 今日は先輩達の卒業式だ。フランク先輩やフローレンス先輩が卒業してしまう。

 全学年の生徒と卒業生の保護者達がホールに集まって、厳粛な空気が流れていた。僕もなんだか緊張してしまう。

 ちなみにシロ達は式の間預けてある。ホールには従魔立ち入り禁止だ。

 

 静かなホールに、やがて卒業生達が入場してきた。僕らもいつかこんな風にここを巣立つ時が来るのだろうか。そう思うと感慨深い。

 先輩達一人一人に、卒業証書が授与される。六年生になる前に脱落してしまう生徒もいるから、人数が少なくてあっという間だった。流石名門校といった感じだ。

 制服に、普段はつけないローブと帽子を身につけた先輩達はかっこよかった。

 卒業生代表の挨拶はイエロークラスの知らない先輩だったけど、聞いていたら本当に先輩達が卒業してしまうんだなと悲しい気持ちになった。

 式が終わり卒業生が退場する時、天井から花びらが舞い落ちてきた。見ると学園長が身の丈ほどの長さの杖を構えて魔法を掛けていた。

 花びらと共に光の粒子が優しく降ってきてとても幻想的だった。

 卒業生の中には泣きながら退場する人もいて、ちょっともらい泣きしそうになった。

 

 卒業式が終わると僕達は急いで玄関前に向かった。そこでは卒業生達が別れを惜しんでいた。

 ブラッククラスの集団を見つけると声をかける。フランク先輩が僕らを笑顔で迎えてくれた。

「先輩達に贈り物があるんです!」

 ダレル君が代表でプレゼントを渡す。それは僕らが話し合って用意した、一人一輪ずつの花だった。花には僕らが状態保存の魔法を掛けた。この魔法はまだ一年生の僕達には難しくて、何度も失敗してしまったけど、何とか数年はもつようにできた。

 リボンをつけた花を先輩達に配ってゆくと、みんな喜んでくれた。サプライズは成功だ。

 

「みなさん進路はどうなったんですか?」

 僕らが何気なく先輩達に聞くと、フランク先輩から意外な答えが帰ってきた。

「この領の騎士団に入ることになったよ。エリスのお父さんが直属の上司になるな」

 フランク先輩は魔法だけでなく剣技も得意らしい。入団試験を受けて合格したのだそうだ。それなら今後も会うことがあるかもしれないと、僕は嬉しくなった。

 そしてなんとフローレンス先輩も、この領地の魔法師団に入団するらしい。この領地で生まれ育ったというフランク先輩は兎も角、どこかの下級貴族の令嬢であるフローレンス先輩がこの領に残るのは意外だった。

「私は三女だから、将来は自分で自由に選べって言われてるのよ。それにこの街が気に入ったの」

 先輩の家はだいぶ放任主義らしい。でもすぐ近くにいてまた会えるかもしれないのは嬉しいな。

 

 話をしていると、五年の級長のアジズ先輩とドミニク先輩がやって来た。

 フランク先輩は来年度ブラッククラスを仕切る事になるアジズ先輩に応援の言葉をかけていた。

 今年上手にフランク先輩の補佐をしていたアジズ先輩ならきっと大丈夫だろう。

 ドミニク先輩は相変わらずのマシンガントークで色々な先輩に絡んでいる。先輩達も今日は楽しそうにドミニク先輩の話を聞いている。普段は鬱陶しいけど、これで最後だと思うと寂しく感じるのかもしれない。

 

 先輩達と話していると、撮影機を持った先生達が玄関前にやってきた。これから集合写真を撮るらしい。僕らはそっと邪魔をしないように離れようとした。しかしドミニク先輩が大きな声で言う。

「せんせーい!俺達が一緒のやつも撮ってよ」

 先生はしょうがないなと了承してくれた。先輩と一緒の写真なんて嬉しいな。

 卒業生だけの写真を撮った後、僕達も混ざって写真に映る。ドミニク先輩が掻き回したからもう列がグチャグチャだ。皆ふざけて下級生を持ち上げたりしてまとまりが無い。僕もフランク先輩に抱えあげられた。

「楽しいな。こんな楽しい卒業式になるとは思わなかったよ」

 フランク先輩が笑っている。

 撮れた写真は卒業式とは思えないくらいみんな満面の笑みだった。

 

 写真は後日みんなに配られた。誰が貼ったのか、学園の掲示板にも暫く張り出されていて見る度嬉しくなった。

 僕が卒業する時もこれくらい楽しく卒業できるといいな。

 

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