81.冒険デビュー
今日はクリアを連れての初冒険だ。銀級に上がってから初冒険でもある。とても楽しみで早起きしてしまった。
新しく鞍をつけたシロに乗って冒険者ギルドに向かう。
『きょ~うはくりあ~のデビューな~の~』
アオもご機嫌に歌っている。最近オペラっぽい曲にハマっているアオの歌は伸びやかだ。
冒険者ギルドに着くと、皆で依頼を見繕う。この間仲良くなった冒険者さん達が頑張れと声をかけてくれた。
その時何か視線を感じた。振り向くと先日絡んできた冒険者の人達がいた。僕らを睨んでいるように見える。でも次に絡んだら資格剥奪だと言われているから何も出来ないらしい。怖いなと思いながらも無視をすることにした。
掲示板から良さそうな依頼を見繕う。ブルーポイズンスネークの討伐依頼があったので、それにする事にした。毒はアオがいるから怖くない。警戒しなければならないのは即死毒くらいだ。ブルーポイズンスネークの毒は効くまで時間がかかるからアオがいればすぐに解毒できる。
アオは久しぶりに活躍できるかもと張り切っていた。
転移ポータルを使って依頼の場所に行くと、それなりに大きな町だった。町役場でポイズンスネークの情報を聞く。元々森の奥に居たのに、最近町の近くで見られるようになってしまったらしく、町付近の個体を討伐して欲しいそうだ。僕らは早速役場を出てポイズンスネークを探した。
クリアが空を飛んで上空からポイズンスネークを探す。シロはポイズンスネークの匂いを知らないので一匹目は自力で見つけなくちゃならない。
いつも通りグレイスに幸運値アップのまじないをかけてもらっているのできっとすぐに見つかるだろう。
『おーい見つけだぜ、コイツだろう?』
あっという間にクリアが鉤爪でポイズンスネークの喉元を掴んで戻ってきた。
「やったね、流石幻鳥!狩りは大得意だね」
テディーが大はしゃぎでまだ生きているポイズンスネークを仕留めた。シロが匂いを嗅いで覚えている。こうなると後はシロの独擅場だ。
「おし、頼んだぞシロ!」
メルヴィンが言うとシロはポイズンスネークを探してくれた。時々木の上に居ることもあったがそういうのはクリアが捕まえてくれる。
やっぱり飛べるクリアが居ると狩りがはかどるな。
しかし流石はスネーク、静かなる暗殺者と言われるだけある。不意打ちで飛びついてきたスネークにナディアとテディーが噛まれてしまったが、すぐにアオが解毒してくれた。
「ありがとうアオ。助かったわ」
『回復は任せるの!安心してスネークを狩るの!』
アオは活躍できて嬉しそうだ。
それにしてもスネークの数が多すぎる。少し前まで森の奥にしか居なかったと言うから驚きだ。町の人は不安だろう。
「こりゃ森の奥にスネークの天敵でも増えたのかもしれないな」
メルヴィンの言葉に僕らは首を縦に振った。
ポイズンスネークの天敵ってなんだろう?普通の蛇なら沢山思いつくけど、ポイズンスネークを食べるって自殺行為じゃないのかな。毒に耐性を持った特殊個体でも現れたのかもしれない。
生態系に変化があったと思われる時は冒険者ギルドに報告しなければならない。報告すると、ギルドから調査員が派遣されるはずだ。
僕達はとりあえず依頼通りに森の浅いところにいるポイズンスネークをひたすら狩った。
狩りを終えて役場に戻ると、戦果を報告する。職員さんもその数に驚いていた。
依頼完了のサインをしてもらって冒険者ギルドに戻る。
ブルーポイズンスネークは薬の材料になるのでそれなりの値段で売れた。依頼料を含めると結構な稼ぎだ。銀級の依頼はやっぱり稼ぎが違う。その上生態系の異常を報告した褒美も貰えた。僕らは大喜びで併設された食堂で祝杯をあげる。
食堂にはマシンさんも居て、折角なので一緒にお茶をする事になった。その時また視線を感じた。例の冒険者達だ。
「あー、アイツらいつもはこの時間に居ないのにな。何を考えてるんだか……」
僕らは子供なので、冒険は朝は遅めで夜は早めに帰ることが多い。だから余裕のある冒険者さんとしかかち合わないのだ。
マシンさんは冒険者達を睨んだ。すると視線を逸らして行ってしまった。目をつけられたみたいで怖い。
「この事は俺からもギルドに報告しておくよ。ギルドの外では気をつけてくれ」
マシンさんは心配そうにしている。
「大丈夫です。シロがいますから」
マシンさんはシロを撫でると、確かにアイツらじゃ敵わないなと笑った。シロは誇らしげだ。
その後はマシンさんの過去の冒険の話をきいた。ソロで金級になっただけあって、苦労話も為になるものが多かった。人数の多い僕らはマシンさんとは真逆のスタイルだけど、参考になる。
楽しくて少し長居してしまったけど、僕は皆を家まで送って帰った。しばらくはこの送迎を続けようと思う。シロに周囲に気をつけてもらって後をつけられないように家に帰る。
逆恨みで襲われないといいけどな。
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