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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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78/186

78.絡まれた

 マシンさんから銀級の冒険者依頼について色々聞いていると、ギルドの受付の方から怒鳴り声が聞こえた。

「ふざけんな!なんであんな子供が銀級で、俺達が銅級のままなんだよ!」

「あなた方は銀級に上がる資格を満たしておりません。ですから銅級なのです」

 見ると、十代後半くらいの三人にギルドのお姉さんが怒鳴られていた。

 怒鳴られてもギルドのお姉さんは動じていなかった。普段はとても優しくて柔らかい物腰の人なのに、今は毅然としていてとてもカッコイイ。

「あんなガキ共が資格を満たしているのに俺達が満たしてないのはおかしいだろ!」

「何もおかしくありません、彼らは依頼人からの評判もすこぶる良いですし。クレームばかりのあなた方とは違います」

 ああ、素行が悪くて銀級に上がれないのか。昇級条件に素行の項目があるのすら見ていないのかな。

「うそつけ、学園生だからって贔屓してんだろ。冒険者ギルドが貴族のガキに尻尾振って恥ずかしくないのかよ!」

 僕らはほとんど平民だ。ギルドが僕らに媚びる理由なんてない。確かに僕は領主の息子だけど、一度もその事実をギルドで言ったことなんて無いしね。お姉さんは知らないはずだ。学園生の半分は優秀な平民だって、彼らは知らないんだろうな。

「何とでも言ってください。これで益々あなた方を昇級させる訳にはいかないと判断しました。次に問題を起こせば冒険者資格を剥奪します」

「何でだよ!ふざけんなよ!」

 男の人達はギルドのお姉さんに掴みかかろうとするが、お姉さんは軽く避けていた。食堂で見ていた冒険者達が口笛を吹いてお姉さんを称える。それに怒ったのだろう。男の人達の矛先は僕らに向いた。

 

「おい、不正で銀級に上がりやがって恥ずかしくないのかよ!ちび共」

 僕らは不正なんてしていない。話す価値も無さそうなので目配せしあって無視する。ナディアなんて美味しそうに特大パフェを食べていた。

 周りの冒険者さん達は僕達の対応に大笑いだ。

 

 逆上した男の人達がテーブルに近づいてくるとシロが彼らを威嚇する。それだけで彼らは僕らに近づけなくなったみたいだ。根性ないな。

 彼らはどうやらシロはマシンさんの従魔だと思っていたようだった。マシンさんにずっと撫でられていたからかな。

「おい、人の従魔で威嚇しやがって、自分で戦う気も無いのかよ、腰抜けが」

 腰抜けはどっちなのか。未だ威嚇し続けるシロに怯えて彼らは僕らに近づけない。ここに居るほとんどの冒険者はシロが僕の従魔だと知っているし、だからこそ僕らの早期昇級にも納得していた。それに今まで他の冒険者に絡まれなかったのもシロのおかげだろう。

 僕らは今初めて不良冒険者の洗礼というものを体験している。だからなんだという話なので、僕達は徹底的に彼らを無視し続けた。

「話の続きを聞かせてください」

 僕がマシンさんに言うと、マシンさんは半分笑いながら続きを聞かせてくれた。

 周囲の席の冒険者さんは腹を抱えて笑っている。

 男達は顔を真っ赤にして怒っていた。

 そうしていると、上の階から大柄の男の人が降りてきた。とても強そうだ。彼は例のグループに近寄ると、別室に連行して行った。彼らは資格剥奪になるのかな?

 

「お前ら肝が座ってるな。流石その歳で銀級に上がるだけある」

 褒められて僕らは嬉しかった。だって彼らは小物感満載だったしね。大したことは出来ないだろうと思ったんだ。僕は威嚇してくれたシロを目一杯褒める。

 周囲の冒険者さん達が僕らの健闘を称えジュースやスイーツを奢ってくれた。素行の悪い冒険者は自然淘汰されてゆくもので、基本的にはいい人が多いんだ。

 ナディアが幸せそうにスイーツを頬張っているが、夕食が食べられなくなっても大丈夫なんだろうか。このままではスイーツが夕食になりそうだ。

「でも気をつけろよ、奴らが逆恨みして襲ってこないとは限らないからな」

 マシンさんが心配してくれる。うん、暫くは僕がみんなを家まで送ってから帰ろう。僕らの中でいちばん強いのはシロだから。連れてるだけで抑止力になるだろう。

 

 話が終わったのか、視界の隅で例のグループがギルドから追い出されていた。

 こちらにやって来た強面の職員さんにどうなったのか聞いてみる。

「奴らは余程冒険者資格を剥奪されたく無かったらしい、なんでもすると言うから最後のチャンスを与えることにした、次に見当はずれの暴言を吐いたり他の冒険者に絡んだら即資格剥奪だということにした。絡まれたお前達には悪いが、資格を剥奪したら逆恨みでお前らの方が危険な目にあいそうだったしな。悪く思わないでくれ」

 僕達は頷いた。確かに僕らもそちらの方が有難い。おかしな敵が増えるのはゴメンだ。

 今後彼等が銀級に上がることは余程改心しなければ無いだろう。

 

 この騒動のお陰で複数の冒険者グループの人達が僕らを気にかけてくれるようになった。

 ベテランを味方にできたのはとても心強い。今後冒険で困ったことがあったらマシンさん達を頼ろう。

 僕達はその日は色々な冒険者さん達から有意義な話を聞けてホクホクしながら家に帰った。

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