75.卵
翌朝、僕はシロ達に起こされた。昨日夜ふかししたからまだ眠い。
なんとか起きたら、僕は隣に寝ていた族長にビックリした。
驚いていると、族長が目を開ける。
「なんだ、もう起きたのか?早いな」
そう言うと起き上がって僕を抱き上げた。
「朝食にしよう。帰る前にプレゼントも用意しているんだ」
プレゼント?と僕が首を傾げると、楽しみにしていろと頭を撫でられた。
朝食もとても美味しかった。族長に学園は楽しいかと聞かれたのでみんなのことを話すと、冒険がてらみんなで遊びにおいでと言われた。この辺りでは珍しい獲物が沢山取れるので、高く売れるだろうということだった。
僕は嬉しくて族長にお礼を言う。今度絶対みんなで来よう。
朝食の後、族長が僕にプレゼントをくれた。それは大きな卵だった。
「幻鳥の卵か!」
おじさんが興奮したように言った。幻鳥はとても探すのが難しい。何故なら魔法で姿を消せるからだ。珍しい鳥である。
「卵のうちなら容易に任意テイム出来るだろう。もうすぐ生まれるから可愛がってやってくれ」
僕は喜んで杖を構えた。魔法陣を描くといつもの様に手が勝手に動いた。卵の表面に不思議な文様が浮かびあがる。魔法陣が完成すると光が消えた。
「名前はクリアね。よろしくクリア」
僕は卵を撫でた。シロ達も卵に近づいて挨拶している。
『やっと後輩が出来て嬉しいです』
モモが卵を前足でポンポンと叩いた。
「うん、卵の状態でも幻鳥は賢いからテイムを拒むことも多いが、エリスは大丈夫だったようだな」
族長の言葉に僕はちょっと混乱した。さっきは容易にテイムできるとか言っていたのに。良かった、拒まれなくて。
僕は既にシロ達をテイムしているから今回で限界かなと思っていたんだけど、なんだかテイム数にまだ余裕がありそうに感じた。みんな任意ティムだからかな。
ちなみに鳥系の従魔は卵のうちから任意テイムに挑戦するのが普通だ。弱いうちなら応えてくれる可能性が高いからだ。任意テイムの魔法陣と強制テイムの魔法陣はそもそも別物なのである。浮かび上がる文様も少し変わる。
任意テイムの方がテイマーの負担が少ないというのは有名だ。
僕は卵のクリアを抱いて早く生まれてこないかなとワクワクしていた。幻鳥は個体によって色が違う。この子は何色か楽しみだ。
「喜んでもらえて良かったよ、幻鳥は姿を隠せる分何にでも使えるからな。もし困ったら姿を消して身近な大人の所に飛んでくれるように躾けるといい。文字も覚えられるから、いざと言う時の意志の伝え方も決めておくといいぞ」
『勉強を教えるなら私に任せて下さい!』
モモがやる気になっている。僕は文字が書かれた紙を常に持たせようかなと思った。それなら僕と離れても相手に僕の状況を伝えられるだろう。族長は僕の守りの事も考えてくれたんだな。族長の気遣いにとても嬉しくなった。
名残惜しいが、僕はおじさんとエルフの里を後にした。
「族長と話せて楽しかったか?」
おじさんの問いに僕は思い切り首を縦に振る。
「幻鳥の卵って温めた方がいいのかな?ずっと抱いてた方がいい?」
「そうだな、温めて魔力を分けてやるのが一番だろう。授業中とかエリスができない時はシロに頼むといいさ」
さっきから魔力を吸い取られている感じはしていた。育つのに必要なら沢山あげよう。元気に生まれて来て欲しい。シロも任せてと言って鳴いていた。
帰宅してお父さん達にクリアを紹介すると驚いていた。そして珍しいから気をつけろと言われた。産まれたら真っ先に防犯用の魔法具を買いに行こう。
翌日クリアを学園に連れていくとダレル君が大興奮していた。
「幻鳥の卵なの!?すごい!やっぱり卵から育てるのはテイマーの夢だよね。羨ましいよ!」
クラスのみんな集まってきて珍しい幻鳥の卵を観察していた。
「今度はふわふわが生まれるんですね!楽しみです!」
グレイスが期待でソワソワしている。
テディーはまたレアな従魔をと呆れていた。本当に気をつけてねと心配されてしまった。
僕も従魔達を守るために強くならないと。大切な僕の家族だ、誰にも渡せない。
気を取り直したテディーが、産まれたら空からの探索もできるねと言うので僕は今後の冒険に思いを馳せた。空からの探索も出来たら、僕達のパーティーは色んな意味で最強なんじゃないかな?
クリアは透明になれるから、今のところ冒険者グループ『カラフル』は色かぶりがない。その事実に気づいて僕は少し笑ってしまった。テディーとグレイスは不思議そうに僕を見ていた。説明すると同じように笑ってくれる。
「じゃあ次は茶色だね。誰とも被らないよ」
「名前はブラウンですか?チョコレートとかも可愛いと思います」
二人とも気が早い。僕は早くクリアが生まれてきてくれることを祈っていた。
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