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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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71.交渉

 作った木像を持ってダレル君の家に行くと、ダレル君のお父さんが歓迎してくれた。

「お、一位と二位が揃ってお出ましとはいいねえ……ジュダ君のお母さんは大丈夫だったのかい?」

「はい、快方に向かってます」

 ダレル君のお父さんは良かったと胸を撫で下ろしていた。

「今日はジュダ君の作品を見てもらおうと思って来たんです」

 僕が言うと、ダレル君のお父さんは不思議そうな顔をした。

 ジュダくんが木像を見せると、ダレル君のお父さんは驚いた顔で真剣にシロ達と見比べていた。

「これはすごいな、そっくりだ。ジュダ君が作ったのか?」

 ジュダ君は緊張した面持ちで首肯した。

「実は従魔そっくりの木像を作る仕事を始めたくて、店の隅にでもこれを置いて貰えないかどうか交渉しに来たんです」

 ジュダ君は数点の木像と連絡先が書かれたカードを見せた。

 

 ダレル君のお父さんは他にも個人作家さんと契約を結んでいる。スライムカチューシャもそのひとつだ。スライムカチューシャはここでしか買えない。今回は現物の納品ではなく店の一角を間借りして宣伝をさせて欲しいという依頼だ。どう転ぶか分からない。

「なるほど、完全受注生産の木像か、考えたね。この売り方なら確かに宣伝できる場所が必要だろう」

「そうなんです。どれだけそっくりに作れるかが重要だと思うので、それを見比べられる場所が必要で……」

「大きさは小さいものだけかい?サイズによって料金が変わると書かれているけど」

「いいえ、等身大のものでも製作可能です。高くはなりますが大きな従魔も大丈夫です」

「いいね、僕も作ってもらいたくなったよ」

 二人は真剣に話し合っている。僕は邪魔にならないように静かに二人のやり取りを聞いていた。

「いいよ。店に置こうじゃないか。宣伝料として毎月少し納めてもらうけどいいかい?」

「はい、ありがとうございます」

 無事話が纏まって、二人は宣伝料の交渉を始めた。とても良心的な値段で聞いていた僕もホッとした。

「早速ウチの子たちの等身大の木像も作ってもらいたいんだけどいいかな?お店に飾りたいんだ」

 ダレル君のお父さんは楽しそうに言う。

「なら写真を貸していただけませんか?そして寸法を測らせてください」

「木像の代金は前金以外は店の間借り料金と相殺でいいかい?」

 ダレル君は頷いて最高の作品を作りますと宣言した。

 僕らはダレル君のお父さんの従魔の寸法を測ると、店を後にする。

 

「ありがとうエリス。お陰で好きなことを仕事にできるよ」

 ジュダ君は上機嫌だ。僕らは一緒に月間テイマーの編集部へ向かう。実は社長のドナさんから写真撮影の依頼が来たんだ。ドナさんはダレル君の実家の写真達が人気なのを見て、月間テイマーでも巻頭ピンナップを掲載することにしたらしい。前世の雑誌で良くあったやつだ。

 今月はレース優勝のシロと二位のオクサナ、そして三位の人らしい。

 来月はコンテストで昨年に引き続き優勝した犬達と二位三位の従魔

達だ。

 雑誌が発売されるのがとても楽しみだ。

 

 編集部に着くと、そこでは撮影の準備が開始されていた。随分本格的な設備で驚いた。ドナさんいわく自社で何時でも撮影出来るようにしていると便利らしい。雑誌を作るのって大変そうだもんな。

「今日は来てくれてありがとう。シロちゃんとオクサナちゃんも元気そうね」

 ドナさんはシロ達が撮影に入ると、色々な話をしてくれた。何でもテイマーのための魔物の捕獲事業もやっているらしい。

 ドナさん自身は任意テイム推奨派らしいけど、それではなかなか難しい事もある。できるだけ魔物に負担をかけない捕獲をして、従魔を大切にする顧客だけに販売しているんだそうだ。

「エリス君とジュダ君は凄いわね。みんな任意テイムでしょう。従魔がとても幸せそうに見えるわ」

 僕達は褒められてなんだかくすぐったかった。二人で顔を見合せてしまう。


 その後は何かやってほしい企画はあるかと聞かれた。

 企画じゃないけど、夢で見たドッグランみたいな物があれば嬉しいと応えると、ドナさんは目の色をかえた。

「それってどういうもの?会員制の従魔の遊び場ってことよね」

 僕は前世で行ったドッグランについて詳しく説明した。

「土地さえあれば後は整備するだけで出来るわね。部外者が入って来れないなら安心だろうし、何より従魔の運動不足問題を解消できる。これはいいかもしれないわ」

 ドナさんはブツブツとそう言うと、僕の両手を取ってブンブン振り出した。

「ありがとう、完成したらエリス君には永久無料のフリーパスをプレゼントするわね!」

 本気で作るつもりらしいドナさんに僕は面食らった。言ってみるものだな。

 撮影は順調に終わり、帰りにはドナさん自ら見送ってくれた。

 

「遊び場が出来たら一緒に行こうな。オクサナもたまには思いっきり遊びたいだろうし」

 ジュダくんの言葉に従魔の遊び場ができるのが楽しみになった。シロもオクサナも嬉しそうだ。

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