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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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70.ジュダ君の特技

 学園に行って家に帰ってくると、庭でジュダ君が何やらやっていた。

「何してるの?」

「ああ、お帰りエリス。絵を描いているんだよ。俺、美術学校を出てるから」

 芸術家さんだったのか。穏やかなジュダ君によく似合っていると思う。スケッチブックを覗き込むと庭の花々が綺麗に描かれていた。

「本当は一番得意なのは木像なんだ。木を彫って像を作るんだよ」

 それはなんだか楽しそうだなと思った。

「近所の雑貨屋に置いてもらってるんだけど、なかなか売れなくてさ。仕方なしに似顔絵を描いたりして稼いでるんだ」

 ジュダくんが困ったように笑った。絵も描けて木像も彫れるなんて凄いな。エルフは芸術的な木の家に住むと聞いているけど、ジュダ君もやっぱりその血を引いているんだろう。

 

 ジュダ君は小さな木彫りのオクサナを見せてくれた。

「すごい!なんでこれが売れないんだろうね」

 僕は不思議だった。こんなに本物そっくりに作れるのに。

「多分木像自体の人気があんまりないんだと思うよ。エリスも部屋を飾ろうとする時にわざわざ木像を選ばないだろう?」

 確かにそうかもしれない。買ったとしても一個あれば十分って思うかも。でもこんなにそっくりに作れるなら僕なんかはシロ達を作ってもらいたい。従魔とそっくりなインテリアなんて素敵じゃないかな。

 僕がそう言うと、ジュダ君は目を見開いた。

「もし従魔そっくりの木像を作りますって宣伝したらお客さんが来ると思う?」

 ジュダ君が真剣な顔で聞いてくる。きっと人気が出るはずだ、前世でも愛犬の毛を使ってそっくりの人形を作ってくれる作家さんなんかが人気だったはず。

 ジュダ君は何か光明が見えたようで、興奮している。

「ありがとうエリス、これで木像で生計が立てられるかもしれない」

 良かった、やっぱり一番好きなことを仕事にできるのが良いよね。

 

「問題はどうやって宣伝するかだな。ちょっと高いけど月間テイマーに広告を出すか」

 ジュダくんの考えに、僕は思ったことを言ってみる。

「最初はダレル君の実家に木像を置いてもらったらどうかな。それで従魔ソックリの木像を作りますってカードでも置いておけば興味を持ってくれる人達がいるかも」

 ダレル君の実家と聞いてジュダ君が首を傾げていた。そういえば彼の実家がテイマー用品店だとは言っていなかった。僕は慌てて説明する。

 話を聞いたジュダくんは目を輝かせていた。実家に帰れるようになったら一緒に交渉に行くと約束する。

 

「じゃあ、交渉のために店に置いてもらう木像を作らないとな。シロ達をモデルにさせてくれないかな?あのテイマー用品店は行ったことあるけど、シロ達の写真が飾られていただろ?お客さんが写真と見比べればどれだけソックリに作れるかわかると思うんだ」

 確かに、いいアイディアだと思う。僕らはラキータさんにお願いして、屋敷で木像を作っても大丈夫な場所を教えてもらった。木像作りに必要なものだけジュダ君の実家から持ってくる許可も貰った。まだ残党が捕まっていないので、安全のため騎士を伴って明日行ってくるという。明日が楽しみだな。

 

 

 

 翌日、僕が学校から帰ると早速ジュダ君が木像を彫り始めた。

 ジュダ君は素早く彫刻刀で木を彫ってゆく。僕はもっと時間がかかるものだと思っていたから驚いた。荒く彫ったと思ったら丁寧にヤスリがけして、綺麗な丸にしてゆく。カチューシャ部分も丁寧に作り込まれた、アオの木像が数時間で出来上がった。職人技に思わず見入ってしまった。

「どうかな?結構似てると思うんだけど」

 結構なんてものじゃない、ソックリだ。アオも興奮して飛び跳ねている。

『凄いの!可愛いの!』

 スライムの目なんて薄っすら見える程度なのに、木で忠実に再現されている。アオ本人の反応を見て安心したのだろう。スライムは初めて作ったとジュダ君は笑っていた。翌日にはモモを、次の日にはシロを作ってくれるという。一日一体ペースで作れるなら人気が出ても大丈夫だろう。

 

 数日後。収集家の他の協力者が捕まったようで、ジュダ君は家に帰れるようになった。しかしスーナさんの解毒がまだなのでもう少し屋敷に居るようだ。僕らは一緒にダレル君の家に交渉に行くことにした。

 ダレル君の実家に向かう途中、ジュダ君は緊張しているようだった。ジュダ君が頑張って作った木像だ。ちゃんと評価されてくれるといいな。

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