67.可愛いコンテスト
午後の競技開始のアナウンスが鳴ると、一般参加者が五つの花の飾りを貰って競技場に入ってきた。みんなそれぞれのブースの前に人が来るとアピールを始める。僕はさっき優勝したシロに乗っているから、違った意味で注目を集めているようだった。僕は優勝おめでとうと沢山声をかけられてひたすらありがとうと返し続けた。その間台の上でアオ達は頑張って踊っていた。
観客は花を一人に一つだけ渡すことが出来る。要するに五人に投票できるんだ。花のいちばん多い人が優勝だ。
僕達に花をくれる人も沢山いて、アオも満足そうだ。
その時会場の一角から歓声が響いた。
「あれは去年の優勝者だね」
ブースが隣のお姉さんが説明してくれる。そこにはフワフワな小型犬のような従魔が五匹居て、一斉に宙返りしていた。
「有名なトリマー店の看板従魔よ。人懐っこいし可愛いから人気なの」
僕はすごいなと思った。みんなドッグ系の従魔だけど多分混血なんだと思う。ペット代わりにするために改良された種類の魔物だろう。ほとんど動物と変わらないくらいまで交配されている種類だと思う。
だからテイマーでなくても飼うことが許されている種類だ。そういう魔物はテイムしてもどうしても知能が低くなるけど、あの子たちはちゃんと芸を身につけている。
大変だったんじゃないかな。あそこまで綺麗に揃った芸を身につけるのは。
彼らは沢山の花を貰っていた。僕が観客でも彼らに花をあげたいと思うだろう。
『むむ、モモ私達も行くの!練習の成果を見せつけてやるの』
アオが言うと、モモはアオを踏み台に高く飛んだ。まるでトランポリンだ。モモは何度も飛んでは空中でポーズを決めている。僕たちのブースにも人が集まってきた。観客が拍手して花をくれる。
モモとアオは疲れていそうだったけど、楽しそうだった。沢山花を貰って嬉しそうだ。
途中皆もやって来て花をくれて、僕の両手は花でいっぱいになっていた。
投票タイムが終わると、集計に入る。モモとアオは疲労困憊で台の上で水を飲んでグッタリしていた。
集計係のお姉さんに花を数えてもらって結果発表を待つ。
待っている間も僕は色んな人に話しかけられていた。このイベントはテイマー達の交流会も兼ねているから、みんな積極的に話しかけてきてくれる。
その時聞き覚えのある音が大音響で鳴り響いた。
「ああ、今年も居たんだね。従魔を攫おうとする輩が」
ああそうだ。これは従魔用の防犯ブザーの音だ。従魔を攫おうとしたとしたと思われる男は、迅速に警備員に連行されて行った。
「毎年居るんですか?」
僕が聞くと、攫うか収集目的で来る嫌な客もいるんだと教えてくれた。でも主催者が目を光らせているから会場内では滅多ことはおきないんだそうだ。会場を出てからは跡をつけられていないか気をつけた方がいいと教えてもらった。
いくら長生きで賢いからって、人の従魔を収集して何が楽しいんだろう。僕にはわからないや。
ブザーの音で心配してくれたのかジュダ君達が僕の所に来てくれた。
「よかった、また攫われそうになってたらどうしようかと思ったよ」
テディーがホッとした様子で言う。前は大変だったもんな。
その後はみんなそばに居てくれて、僕とジュダ君は話しかけてくる人から少し休憩をとる事が出来た。楽しかったけど話しかけられ続けるのは少し大変だと思っていたのでちょうど良かった。
集計が終わって、結果が発表される。僕達は残念ながら六位だった。アオとモモは残念そうだ。
『来年は絶対五位以内に入るの!モモ、特訓なの!』
アオは来年に向けて闘志を燃やしている。モモも気合を入れて頷いていた。
落ち込んではいないようで良かった。
シロの表彰式で壇上に上がると、主催者のドナさんが賞金をくれた。拍手でたたえられて僕も手を振り返す。
帰り際、ドナさんにお願いされてシロ達と写真を撮った。今度の月間テイマーの表紙にするらしい。なんだか恥ずかしいな。ジュダ君も去年経験したそうで、苦笑いしていた。
僕達は帰りのインタビューも終わらせると、皆で帰路に着いた。ジュダ君のお母さんも心配だし、早く帰ろう。
帰り際に貴族を名乗る人から従魔を売って欲しいと声をかけられたけど、僕が領主の家の子だと知ると逃げていった。名前をお父さんに教えておこう。なにかやましい事があるのかもしれない。
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