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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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59.おばあちゃんのからくり箱

 今日は久しぶりの何も無い休日だ。対抗戦で疲れてしまったから、皆で休みをとる事にしたんだ。そんな日は回復薬を作って売りに行くんだけど、それも午前中で終わってしまった。暇だった僕はおばあちゃんの作ったからくり箱の謎に挑戦することにしたんだ。

 これは秘密基地に置いてあったものだ。おばあちゃんが作ったガラクタの中の一つで、テディーいわく中にもう一つ魔法道具が入っていそうだという話だったんだけど、中々開かなかったんだ。

 何故だか今なら開けられるかもしれないと思って挑戦している。

 ずっと挑戦していたら夕方になっていた。難しすぎるよ、この箱。ご飯を食べて、再度挑戦する。もう今日一日はこの箱に使うって決めたんだ。シロもアオもモモもからくり箱挑戦には飽きてしまったらしい。固まって眠ってしまった。

「あーもー!開かない!」

 僕はベッドに倒れ込む。特に何も考えず、からくり箱を天窓から差し込む月明かりに当てた時だった。なにか箱のパーツに違和感があった。僕は少しだけ色が変わったパーツを動かす、するとまた別のパーツの色が変わった。僕は横になったまま夢中でパーツを動かしていた。するとカタッと小さな音を立てて箱が空いた。そうか、月明かりが必要だったのか、開かないわけだ。

 

 僕はベッドから起き上がって箱の中身を確認する。

 中に入っていたのは腕輪のようなものと手紙だった。僕はその手紙の宛先を見て固まった。手紙にはハッキリと『エリスへ』と書かれていた。

 間違いなくおばあちゃんの字だ。僕は心臓がバクバクして指先が震えた。おばあちゃん?どうして、死んだはずのおばあちゃんの手紙がここにあるの?

 何故か涙が溢れてきた。僕は震える指で手紙を開封する。

 

『エリスへ

 この手紙をお前が読んでいるということは、一番可能性の高い未来へ進んだんだろう。領主様の家での生活はどうだい?学園は楽しいかい?聞きたいことは沢山あるけれど、私が先見で見た未来の話をするよ。』

 

 僕は涙を零しながら滲む視界で手紙を読んだ。大魔女と呼ばれたおばあちゃんは、どれほど先まで未来が見えていたんだろう。

 

『お前はいつか必ず巻き込まれることになる。おばあちゃんのせいさ、ごめんね。怖い思いをさせてしまうかもしれない。だからせめてその未来が訪れてしまった時のためにアンクレットを渡しておくよ。絶対に、絶対に外してはいけないよ。どこに行くにも身につけるんだ。王家の持つ魔法道具の効果を妨害できるのはそのアンクレットだけだ。だから、それを肌身離さず身につけて、王族には関わるんじゃないよ。』

 

 王族?どうして王族が出てくるんだろう。僕は狙われているんだろうか?何故 ?大魔女であるおばあちゃんはともかく、僕は普通の『テイマー』なのに。お母さんが関係しているんだろうか、わからない。

 

『あとはそうさね、お前の前世の記憶のことだ。少しずつ精神に馴染むように夢で過去を見られるようにしたけれど、お前が記憶のせいで変わってしまわないか心配だ。前世はあくまで前世、それを覚えておくんだよ。それと夢はお前の精神を映す鏡だ。嫌な夢を見た時は注意するんだよ。感情的になって俯かないように、前を向いて歩くんだ。いいかい?おばあちゃんとの約束だよ?』

 

 前世の記憶は朧気だ。たまに夢で過去の記憶を見るけれど、僕は前世の自分の名前も知らない。何故かそういうのは見えないんだ。おばあちゃんが僕が変わってしまわないようにそうしてくれたのかな?

 

『さて、私が見た未来もこれが最後だ。これからは助けてあげられない。本当にお別れさ。いいかい、何度だって言うよ。前を向いて生きるんだ。そして困ったらデリックや七賢者を頼るといい。一人で何とかしようとするんじゃないよ。』

 

 僕は涙が止まらなかった。こんなの反則だよ、おばあちゃん。

 

『言いたいことはまだまだ沢山あるけれど、時間切れさ。おばあちゃんとの最後の約束、どうか守っておくれ。おばあちゃんはいつだってエリスの幸せを願っているよ。』

 

 手紙はそこで終わっていた。僕はしばらく泣き続けた。いつの間にかシロ達が起き出して僕の様子を窺っている。僕は久しぶりにおばあちゃんの痕跡に触れて、嬉しいのか悲しいのかよくわからなくなっていた。ただ、涙が溢れて止まらなかったんだ。

 シロ達が気遣わしげに近くに来てくれた。僕はシロに抱きついて心が鎮まるのを待つ。ようやく涙が止まった僕は、アンクレットを身につけた。効果は分からないけど、おばあちゃんが最後に僕に残してくれたお守りだ。肌身離さず身につけよう。

 

 僕はその日はシロに抱きついたまま眠った。見たのはお葬式の夢だった。棺桶の中の顔だけが、塗りつぶされたように見えない。僕は夢の中でも泣いていた。

 それでも、起きたらちゃんと前を向いて歩くから、今だけは悲しんでもいいよね、おばあちゃん。

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