55.開催
僕達が競技場に出て整列すると、観客席の人達が手を振って迎えてくれた。
ドミニク先輩は観客席に手を振り返して応えている。実に楽しそうだ。
学園長が登壇して挨拶する。
開催を宣言すると、空に花火が打ち上がった。魔法を使った花火かな。空を埋め尽くすような沢山の光の花が、最後には落ちてきた。
僕達も観客も、みんな夢中になって拍手していた。
午前の前半の競技に参加する人以外はみんな各待機所に戻ってく、競技の準備中、解説だろうか先生方の声が客席の方に響いていた。客席を飽きさせない為でもあるんだろう。
耳を傾けていると去年の結果の話をしているようだ。ホワイトとブラックの一騎打ちの話をしている。
そうこうしているうちに、競技が開始された。
最初の競技は威力を競う的当てだ。僕はこれに出場する。参加人数は九十人くらいだ。順位によって入る点数が違う。
学年ごとに順番に的に同じ魔法を当ててゆく。威力は数値化されて表示されるので分かりやすい。
僕は何とか五点ゲット出来る順位に滑り込むことが出来た。一年生の中では一番らしい。やっぱり先輩は強いな。
次はテディー達の出場する、正確さを競う的当てだ。動く的に魔法を当てていってその正確さを競う。これも成績が点数化されるので分かりやすい。
「テディーとグレイスは流石だな。一年生の中でも抜きん出ている」
フランク先輩が僕の横でそう評価した。グレイスはともかく、テディーはおじさんに魔法が雑と言われてから頑張っていた。努力の成果だ。
「そうか、努力か……今年の一年は本当に勉強熱心だな」
フランク先輩は感心した様子だった。
競技が終わると、午前の成績発表のためみんなで競技場に行く。テディーを見つけると声をかけた。
「テディー、すごい上達してたね!」
テディーは照れたような顔をして、グレイスには勝てなかったけどと言う。
「私も負けるかと思って頑張りました。まさかこんな短期間でテディーに追い越されそうになるなんて……本当にすごいです」
グレイスは一学年の中では一位だ。次点がテディーである。
僕達はみんな五点貰える順位になんとか食い込むことが出来たので少しは点数に貢献出来ただろう。結果発表が楽しみだ。
壇上に先生があがると、点数が発表された。同時に大きな掲示板に点数が表示される。
ブラッククラスの得点は百五十二ポイントだ。百七十ポイント獲得したイエロークラスに続いて二位だった。ちなみにホワイトは百二十六ポイント、レッドは九十二ポイントだった。毎年の事らしいけど、レッドの勝ちはもう難しいんじゃないかな。
僕達も思いの外イエローに差をつけられてしまったけど、まだ午後の競技がある。陣取りと取り合いの二つの競技は一位になると三十ポイントゲットできるから、まだ勝ちの目は残されている。
僕達は一旦家族と合流してお昼休憩をとることになった。グレイスと僕は一緒に観覧席に向かった。
警備員さんに名前を確認されると、僕達は席……というか部屋に通される。僕達の待機場と同じでマジックミラーになっているらしい。競技場の様子がよく見えた。
僕を見るとシロが突進してくる。寂しかったのかもしれない。僕はシロを撫でると、まずグレイスを紹介した。グレイスは礼儀正しく挨拶していた。
「君がコービン伯爵のお嬢さんか、彼とは領地が近いから親交があるが、娘がいたとは知らなかったよ」
お父さんがそう言うと、グレイスが少し俯いたように見えた。
やっぱり家族と仲が良くないのかな。少し心配だ。
お屋敷のシェフが張り切ってくれたようで、昼食はとても豪華で美味しかった。
お父さん達とおじさんは食べながら、僕らのことを褒めてくれた。
兄さんはホワイトの後輩の成績が低かったので少し心配しているようだ。兄さんは去年のホワイト六年の級長だったから、責任を感じているのかもしれない。
でも僕らだって負けていられないんだ。フランク先輩達に優勝をプレゼントして、去年の雪辱を晴らしてから卒業させてあげたい。
そのためにも取り合い合戦は絶対負けられない。グレイスも拳を握って気合を入れている。
昼食を食べていると、徐々に客席が埋まってゆくのが見えた。家族席とそれ以外の席は分けられているらしく、今まで人がまばらにしか居なかった場所が人で溢れてゆく。軍服や仕事の制服の人も多いから、スカウトに来ているんだろう。
一年生の僕らにはまだ関係ない話だ。
僕達は昼食が終わると待機場所に戻った。午後の最初は格闘トーナメントだ。メルヴィンが出場するからどうなるのかとても楽しみだ。
申し訳ありませんが、少々風邪を拗らせましたので一日か二日更新をお休みします。皆様も体調にはお気をつけください。




