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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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53.取り合い合戦

 さて三度目の合同練習日、僕達は取り合い合戦の練習をする事にした。半分は先輩の陣取り合戦の練習に協力して、残りは取り合いの練習だ。

 取り合い合戦の陣取りとの違いは魔法が使用禁止なところだ。単純に飛行の腕で勝負しなければならない。僕たちブラッククラス一年生はスピード狂の集まりだ。これは勝てるかもしれないとほくそ笑む。

 しかし、実際に練習してみると全方向に注意を払うのがなかなか難しい、ルール上他人が争っているうちに帽子だけ奪う漁夫の利戦法がいちばん強そうだ。だから周りには気を使わなきゃいけないのに、つい帽子を奪うのに夢中になってしまう。

 僕らは作戦を考えた。そして気づいた。総合的に多くの帽子を取れればいいのだ、何人かで協力しちゃダメなんてルールは無い。僕達は追い込み漁方式を採用することにした。数名で協力しながらブラックの軍勢の中に追い込むのである。

 それともう一つ、ブラックの一年が速いのは他の一年も知るところだ。まず間違いなくブラックを分断させて帽子を取る事を狙ってくだろう。僕達はまず帽子を取られない練習をしなければならない。

 

 不思議なことに、超個人主義な二年生もお願いすればちゃんと協力してくれる。別に個人行動が好きなだけで和を乱したいわけでは無いらしい。二年生は特に研究者気質の者が多いみたいで、隙の少ない戦法の議論には毎回積極的に参加してくれる。二言目には会場を爆破させようとするデボーン先輩以外はだけど。多分先輩はみんなの反応を面白がっている。去年の事件をちゃんと反省して欲しい。

 そうして互いに二つのチームに分かれてて帽子を取り合っていると、コツが掴めてきたように感じられた。なかなか帽子を取られなくなったし、逆にみんなの帽子を取るのも難しくなってきた。少し休憩をとる事にしたのか、フランク先輩達も僕らの戦いを見学していた。

 

「短時間で随分上達したな。これなら他のクラスにも勝てそうだ」

 フランク先輩が僕達が戻ってきたタイミングで話しかけてくれた。

 今日の最初、下級生も全員参加できる競技が追加されたと嬉しそうに報告してくれたのは先輩だ。我がことのように喜んでくれた先輩に褒められるのはとても嬉しい。

「本当にいい競技を発案してくれたな」

 フランク先輩に頭を撫でられて、僕は気恥ずかしかった。他の生徒にもまた揉みくちゃにされる。女性陣に微笑ましげに眺められていた。

 

 その時練習場に学園長が現れた。皆慌てて整列しようとする。

「楽にしていて下さい。私は新しいゲームのルールに穴がないか確認しにきただけなので」

 学園長は全クラスを回ってルール上の不備がないか確認しているようだった。

 魔法の使用禁止や暴力行為の禁止、帽子を取られたら即座に地上の待機場に離脱、相手が一度獲得した帽子は奪えないなどのルールがあるが、僕達は特に不備があるようには感じなかった。

 一応僕達は休憩を終わらせて一試合やって見せることになった。陣取りの選手達も一度やって見たかったようで、参加してくれるという。

「申し訳ありませんね、休憩中にお邪魔して」

 学園長の言葉にフランク先輩が気にしないで欲しいと返す。

「取り合いにも一度参加してみたかったので、機会を貰えて嬉しいですよ。下級生達と一緒に参加できるのは楽しいですね」

 フランク先輩と学園長は楽しそうに話している。

 

 人数が少ないのでチームを四つではなく三つに分け、ゲームが開始されると、陣取りに参加していた先輩は僕らに早々に帽子を取られて離脱してしまった。僕らはそれが少し嬉しかった。練習の成果が出ている証拠だ。

 先輩達は一様に驚いていた。実はこのゲームは飛行以外の魔法を使わないので、実力差が発揮されづらいんだ。こういう所が下級生向けだなと思う。

 試合中でも騒がしいドミニク先輩の帽子を奪うと、ドミニク先輩は大笑いしていた。実に楽しそうだ。

 

 制限時間に余裕があったので、結局最後は残った生徒同士の一騎打ちになる。最後まで残っていたのはグレイスだった。グレイスは避けるのが上手いからな。

 僕はグレイスとの一騎打ちに緊張した。お互い帽子に手を伸ばしながら飛行を続ける。このゲーム、一対一になると途端に難しくなる。

 どうにか緩急をつけながら飛んで、騙し合いをする。一瞬の判断が勝敗を分けるだろう。

 結果帽子を取ったのは僕の方だった。反射神経は僕の方が上だったようでグレイスが作った一瞬の隙を逃さなかったんだ。

 グレイスは悔しそうにため息をついた。

 

 帽子を数えると結構いい勝負だった。優勝したのは結局テディーの居るチームだった。僕とグレイスの一騎打ちは勝利になんの影響も無かったらしい。僕達のチームは二位だった。

 学園長が拍手で迎えてくれる。

「いい試合でしたね。何より学年関係なく戦えるのが素晴らしいです。ルールはこのままで良さそうですね」

 上級生達も帽子を取られてしまったけど、楽しかったらしい。

 本番も頑張れよと僕らの頭を撫でてくれた。

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