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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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35.旧校舎探索

 授業が終わった後、僕たちは旧校舎に向かった。旧校舎は学園の敷地の端にある。この学園にまだ普通科と魔法科があった頃に使っていた校舎らしい。しかし、五十年以上前からもう使われていないようだ。

 廃墟のような場所を想像していた僕は、中の綺麗さに驚いた。古いのは古いんだけど、今でも定期的に掃除されていそうだ。

 

「なんか幽霊が出そうな感じじゃないですね」

 先程までは怖がっていたグレイスも、落ち着いたみたいだ。

「マジか、ハズレかな?面白そうだと思ったんだけどな」

 メルヴィンは残念そうだ。ナディアがメルヴィンの肩を叩いて言う。

「せっかく来たんだし、一応見に行ってみましょうか?」

 

 僕達は館内図をみて、学園長室に向かった。

『おっばけな~んて~やっつけて~や~るの~』

 アオが歌うので緊張感もなにも無い。僕らは怯えること無く学園長室に向かった。

 

 扉を開けると、中にはほとんど何も無かった。今は使われていないのだから当然か。

「あった、これだろ初代学園長の肖像画」

 メルヴィンが指さしたのは年季の入った額に飾られた肖像画だった。初代マルダーと書かれたその肖像画の人物は、今の学園長とは違う仮面を付けていた。

 

 全員でまじまじとその肖像画を見ていると、ギョロリと仮面越しの目が動く。

「ひっ……!」

 グレイスがナディアの後ろに隠れる。僕は驚いて呼吸が止まるかと思った。

『お化けなの!成敗するの!』

 アオが飛び跳ねて肖像画のところまで行く。

「待った!違うよ、これ、魔法道具だ!」

 

 テディーが叫ぶと近くにあったテーブルに乗って肖像画を取り外す。鑑定で見たのだろう。僕たちは魔法道具だと聞いて落ち着いた。

 

 額を外すと確かに、幻術の魔法の魔法陣が彫られた魔法道具だった。

「誰だこんな悪趣味なもん作ったやつ」

 魔法陣の傍に製作者の印が彫られている。名前はネリー・クーリエ。……おばあちゃんだ。

「なんか、ゴメン……」

 僕は思わず謝ってしまった。なんでこんなもの作ったんだよ、おばあちゃん。

 グレイスは大魔女の作品と知って興奮している。

『エリスのおばあちゃんはユーモアのある人だったんですね』

 モモがフォローしてくれたけど、僕らは呆れてしまった。

 

 

 

「一応他の怪談も調べるか」

 メルヴィンの言葉に、僕たちは今度は足取りも軽く音楽室に向かった。

 音楽室に近づくと、確かにピアノの音が聞こえる。グレイスはまた緊張しているようだ。

『今度こそお化けなの!成敗するの!』

 アオはどうやってお化けを倒す気なんだろう。何でか自信満々で飛び跳ねていた。

「どうせ今回も魔法道具だろ」

 メルヴィンが音楽室の扉を勢いよく開ける。

 すると、中を見て固まった。

 

 メルヴィンの後ろから音楽室を覗くと、僕も固まってしまった。……学園長が居たからだ。

「おやおや、皆さんこんな所に何の用ですか?ここは立ち入り禁止ですよ」

 ピアノの椅子に腰掛けたまま学園長が言う。ピアノを弾いていたのは学園長だったらしい。

 

「ごめんなさい!」

 学園長の言葉に我に返った僕たちはとりあえず全力で謝った。

 旧校舎にいる理由を話すと、学園長は腹を抱えて笑いだした。

「君たちはあの魔法道具に引っかかったんですね!数十年越しに弟子が引っかかったと、ネリーが知ったら大笑いするでしょうね!」

 確かにおばあちゃんならそうだろう。僕はその光景が見えるようだった。

「あの魔法道具は暇つぶしにネリーが作った玩具ですよ。この旧校舎は学生時代のネリーのアジトのような物でしたからね。他にも色々な仕掛けがあります」

 他にもあるのか、こんな子供だましが。

 

「じゃあ旧校舎の怪談は全部嘘なんですね、良かったです」

 グレイスの言葉に、学園長は悲しげに笑った。

「それが全て嘘というわけでも無いのですよ」

 指先でピアノを撫でながら、学園長は言った。

「少なくとも自殺した女生徒が居たことと、彼女がいつもこのピアノを弾いていたのは本当です。あれが全ての始まりでした」

 僕たちは息を飲んで学園長の話を聞いた。伝記に確かに書いてあった、おばあちゃんが学園の貴族相手に戦争を始めたのは、一人の女生徒の死がきっかけだったと。それが自殺したという彼女なんだろうか。

 

「この旧校舎は元々、かつての貴族の親玉がサロン代わりに使っていたんです。彼女は下級貴族の娘でしたが、下僕のように扱われ虐げられていました。そしてとうとう自害してしまったのです。それからです。ネリーが上位貴族相手に戦うようになったのは」

 

 そこまで言うと、学園長は話を変えた。

「せっかくですから、最後の怪談の種明かしをしましょうか。図書室に行きましょう」

 そう言って学園長は歩き出した。僕らは黙って学園長について行った。

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