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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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26.魔物マニア

 今日は久しぶりの休日だ。朝から僕は回復薬を量産していた。

 アオが絞り出してくれた体液を使ってできるだけ多くの回復薬を作る。

 冒険者の人たちに人気の回復薬だから、できるだけ隙を見ては作るようにしていたけれど、まだまだ需要はあるらしかった。

 

 今回はアオがしおしおにならないようにこまめに水を与えながら作業している。

『頑張れ私!絞り出すの!もっと、もっと絞り出すの!』

 必死に自分を鼓舞しながら体液を絞り出すアオに申し訳ない気持ちになった。納品した帰りに好きなものを沢山買ってあげようと思う。

『スライムに限界は無いの!最弱なんて言わせないの!人間共に思い知らせてやるの!』

 どんどんアオの言葉が不穏になってゆく。今日はこの辺にしておこう。

 

 平べったくなって心なしか小さくなった気がするアオにお礼を言って、回復薬を完成させる。

 今回はもう一種類、アオをテイムする前に作っていた安価な回復薬も沢山作る。実はパスカルさんにお願いされたのだ。安価な方は駆け出しの冒険者にとても人気らしい。これならアオに頑張ってもらう必要も無い。

 

 完成すると、シロに乗ってパスカルさんのお店に行った。

 シロの上に乗って移動していると周りの視線が痛い。毎日街を歩いていたらみんな慣れてくれるだろうか。

 

「おいおい、シロはどうしちまったんだ!?」

 パスカルさんが驚いて聞いてくる。

 僕は事情を説明した。パスカルさんは驚いていたが、変異種だからなと納得していた。なんと昔回復薬を与えることで突然大きくなったスライムの話を聞いたことがあるらしい。

 僕はアオを見た。

『わ、私は大きくならないの!小さくて可愛いが私の売りなの!』

 ぷるぷると震えながら何故か必死だ。大きくなるのは絶対に嫌みたいだ。

 確かに僕もアオは小さい方が可愛くていいと思う。

 

 パスカルさんが納品した魔法薬の数を数えている。納品した分のお金を受け取ったらパスカルさんになにか差し出された。

「冒険者になったって聞いたぞ、これは入学祝いも兼ねたプレゼントだ。受け取ってくれ」

 中を見ると冒険者に必須な虫除けや魔物避けなどの消耗品がたくさん入っていた。

「ありがとうございます!」

 嬉しくて満面の笑みでお礼を言った。パスカルさんは僕の頭を撫でると言う。

「回復薬も毎回たくさん納品してくれるが、勉強優先でいいんだからな。無理はするなよ」

 今はまだ余裕があるけど、試験前なんかは納品が難しいかもしれない。その時は甘えさせてもらおう。

 

 

 

 パスカルさんと別れると、またシロに乗って街に繰り出す。屋台でアオの求める料理を買いながら、僕もつまませてもらった。

 

 みんなシロにビックリしていたが、大人しいとわかるとオマケをくれたりした。シロは大きくなっても顔が優しいからな。人混みや屋台の近くでは尻尾の動きを抑えてくれるくらいには賢いから、みんなすぐ慣れてくれると思う。

 

 広場の席に座って、屋台で買った料理を食べていると声をかけられた。クラスの級長であるダレル君だ。

「エリスくん、シロはどうしてそんなに大きくなっているんだ!?」

 普段落ち着いているダレル君にしては珍しく興奮している。経緯を説明すると益々興奮しだした。目がキラキラ輝いている。

「あの論文は本当だったんだ、魔物の特殊個体は急速な進化の可能性を秘めているって。それが何をきっかけに起こるのかはまだ解明されていないけど、シロの場合は食事で起こったんだね。すごいな、本物の事例をこの目で見られるとは思わなかったよ」

 

 聞くところによるとダレル君は魔物マニアらしい。実家がテイマー向け用品店で、幼い頃から色々な魔物を見てきたようだ。

 ダレルくんは恥ずかしげにメガネを持ち上げながら言う。

「ごめんよ、驚かせて。テイマーの従魔に他人があまり構うのは良くないことだから我慢してたんだけど、二匹ともレア種だし、任意テイムみたいだし、ちょっとよく見てみたかったんだ」

 ダレル君は申し訳なさそうだ。

『触ってもいいよ』

『私もこの子は嫌いじゃないの』

 二匹とも触っていいと言っていると言ったら、ダレル君は大喜びしていた。

 ダレルくんが実家のテイマー用品店に来てみないかと誘ってくれたので、ついて行く事にする。

 なんと前にシロのスカーフを買った店だった。前に利用したことを説明するとダレルくんは驚いていた。

 ダレル君は商品の説明をしながら店を案内してくれる。面白いものが沢山あって、ついシロのおもちゃや歯ブラシなどを買ってしまった。

 スライム用のカチューシャも新作が入荷していて、アオにねだられる。結局二つも買ってあげることになった。


「シロは今スカーフをつけているけど、今後もう少し大きくなるかもしれないよね、伸縮性のある魔法道具の首輪に変えてみたらどうだろう」

 ダレル君の提案に確かにと思う。大きくなって首が締まってしまったら可哀そうでは済まない。

『新しい首輪!』

 シロも嬉しそうだし買ってあげることにした。黒にかっこいい銀の装飾が施された首輪をシロは選んだ。シロもアオも何でかモノトーンの物が好きだ。似合うからいいんだけどね。

 

 買い物の後はダレル君のふれあいタイムだ。ダレル君は終始感動して、ふれあいながら僕にもウルフ種とスライム種の健康管理の方法などを細かく説明してくれた。

 今日はすごく勉強になったし、ダレル君とも仲良くなれたと思う。

 今後従魔の事で困ったらダレル君に相談しよう。

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