21.初授業
今日は学園の初授業だ。今日の授業は全クラス合同で行う魔法学だ。一日に一科目を長時間なのは前世と違うところだ。一年生の内は週三日で一般教養、魔法学、魔法実技の授業の繰り返しになる。
『が~っこう~がっこ~う』
通学中アオが歌っている。
『勉強楽しみだね』
シロが尻尾を振って楽しそうにしている。
下級生のうちは一般教養や基礎魔法学の授業が多くなる。上級生になると無くなって、より実践的な魔法の授業になっていくらしい。
だから最初のうちは僕には退屈だろうと兄さんに言われた。
でも僕は楽しみだ。おばあちゃん以外に魔法を教わったことは無いから、なにか新しいことを教えてもらえるかもしれない。
試験の時に使った大きな講堂に入ると、テディーが手を振ってくれた。席は自由みたいだ。メルヴィンもテディーの隣にいる。
従魔を連れてる僕のためか、端っこの席を空けておいてくれたみたいだ。
「おはようエリス。最初が合同授業で良かったな」
「おはよう、二人とも、席空けておいてくれてありがとう」
着席するとメルヴィンから解らないところは教えてくれと懇願された。どうも座学に自信が無いらしい。
メルヴィンの方が年上だけど、年下の僕に教えを乞うのは気にしないみたいだ。メルヴィンのそういう所が好ましいと僕は思う。
テディーは僕たちのやり取りを見て笑っていた。
グレイスとナディアもやってきて、僕達は固まって授業を受けることになった。一クラス十人だからこの講堂には四十人いる。
雑談しながら待っていると、始業の鐘が鳴った。
講堂に入ってきたのは杖をついたお爺さんだった。
「皆さん初めまして、下級クラスの魔法学を受け持つトロイヤーです。皆さんのテスト結果を見させてもらいました。基礎知識は十分という子も居るようですが、初歩的なことから教えていきたいと思います。これを機に基礎を復習してくださいね」
このトロイヤー先生は魔法研究の第一人者だ。名前を聞いたことがある。確か、今あらゆる場所で使われている虫除けの魔法陣を開発した人だ。僕もおばあちゃんも森ではこの魔法陣のお世話になった。
「まず魔法とは魔法石に魔力を込めながら魔法陣を描くことで発動するものです。魔法陣は魔法言語の組み合わせで作られます。一つの魔法陣の開発には膨大な時間がかかるものです。この授業ではこの魔法陣について主に学習することになります」
先生は前方にいた男の子を指して言った。
「魔法陣を使わない魔法もあります。それが何か分かりますか?」
「自己身体強化魔法です」
男の子が応えると、先生は頷いた。
「そうです。自己身体強化魔法とは自身の体内の魔力を操り、任意の部位を魔力によって強化するものです。これだけは魔法陣が必要ありません。要するに魔力を体外に放出して使う場合のみ、魔法陣が必要になるんですね」
僕はこの身体強化魔法は苦手だった。魔力操作をどれだけ学んでも、身体強化にはまた違ったセンスが必要らしく、上手くいかない。
これに関してはメルヴィンの専売特許だろう。彼は身体強化魔法に関しては天才だ。
「身体強化魔法が得意なものは大抵、魔法陣を用いた魔力操作が苦手な傾向にあります。その逆も然りです。稀にどちらも上手く扱える人が居ますが、少数派ですね」
ナディアはこのタイプだろう。どちらもそれなりの精度で扱える。
試験の時に見せてもらったが、二つを組み合わせられるととても強い。
「さて皆さん、強い魔法使いになるにはどうすればいいと思いますか?」
先生の言葉に皆考え込む。
「強い魔法使いはとにかく魔法陣を沢山暗記しています。そして瞬時にそれを描くことが出来るのです。この時に魔力制御と魔力操作技術が高いとより強力な魔法を放つことが出来ます」
それはおばあちゃんがよく言っていた事だ。僕はとにかく魔法陣を暗記させられた。
「ではみなさん、魔法言語を学びながら。魔法陣を覚えましょうね」
授業はそのまま二時間ほど続き、昼休憩を挟んでまた三時間ほど続いた。魔法言語は奥が深い。今日だけでノートがかなりの枚数埋まった。流石に疲れた。
メルヴィンなんて終わった途端、机に突っ伏してしまった。半年に一回テストがあるんだけど大丈夫かな?
「これは定期的に勉強会をするべきじゃない?」
ナディアがいい案を出してくれた。確かに勉強しないとすぐに置いていかれそうだ。
僕たちは冒険と並行して勉強会もやる事にした。
そういえば、シロたちみたいな魔物はどうやって魔法陣を覚えているんだろう。
『魔法陣?勉強なんてしなくても勝手に出るよ?」
どうやら魔物には特殊な才能が備わっているらしい。『テイマー』の僕がテイムする時、勝手に手が動いたのと同じかな。
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