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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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183/186

183.豊穣祭の結果

 僕は結局無事家に帰ることができた。

 帰ったとたん、シロやテディー達に泣きながら迎えられた。

『うわーん、ごめんね、エリス。守れなくて』

 シロが大きな体を思いきりこすりつけてくるので倒れそうになってしまう。

 それを支えてくれたメルヴィンの目にも涙が浮かんでいた。

「エリス!良かった!本当に良かった!」

 モモを抱きしめながら大泣きするグレイスにハンカチを差し出すと、もっと泣かれてしまう。

 安全のため外出を禁止されたので、みんな退屈な僕のためにと家に泊まり込んでくれた。

 お父さんは家に居ない。お母さんの話によると、僕の証言から王が誘拐の犯人であるとされたため王の元に抗議に行っているのだそうだ。

 無事に帰ってきてほしいと思う。

 

 そして僕らは豊穣祭当日を迎えた。

 今夜は豊穣の儀式がある。テディー達に聞くと、街は五十年ぶりの儀式に大盛り上がりなのだそうだ。

 僕は儀式が失敗に終わると知っている。みんなのように盛り上がれなくて少し切ない。

 いよいよ儀式の時間になって、空が明るくなった。僕達は空を見るためバルコニーに出る。

「わぁ、これが豊穣の儀式ですか?」

「空が光ったね、これが朝まで続くんでしょ!きれいだね!」

 テディー達は初めての豊穣祭に大はしゃぎだ。だがおじいちゃんとおばあちゃんだけが困惑している。

「五十年前と全く違うな。あの時は空が七色に輝いてもっと美しかった」

 

 翌日、外出禁止を解かれた僕が街へ出ると不穏な空気が漂っていた。街の人達曰く、昨日のは本物の豊穣祭ではない。王は偽物なんじゃないかと。

 普通ならそんな噂が一日で広まるはずがない。でもなぜかその噂は真実であるように語られていた。

 アンドレアス殿下の仕業だろうなと僕は考える。

 

 それから三日後には、王都で偽物の王が隠れて暮らしていた王族に討たれたというニュースが街中に広がった。

 街は何年も王族のふりをしていた悪しき偽王の話で持ちきりだ。反対に、王によってかつて城を追われた王子である新王ピスメルを支持するという声があちこちで囁かれていた。

 ピスメルとはトレバー君の祖父らしい。トレバー君は本当に王子様になったんだな。学園はどうするんだろうとどうでもいいことを考える。

 そして豊穣祭をやり直すというお触れが出ると、民は沸いた。

 

 再び街は豊穣祭でお祭りムード一色になり、なぜか偽王ギディオンの演劇があちこちで上演された。

 ギディオンがいかに悪逆な王であったかを語るその演劇は、まるで民に刷り込みを行っているようだと僕は思った。真実を知ってしまっているからかもしれない。

 

 豊穣祭が行われる前、僕はある場所に向かう。もしかしたら居ないかもしれない。いやきっと僕を待っている。アンドレアス殿下ならきっと僕が来るのもお見通しだろう。

 僕はおばあちゃんのペンダントを首にかけて、ぎゅっと握りしめた。

 答え合わせをしなければならない。僕の考えが本当に正しいのか。

 おばあちゃん。どうか真実を確かめる勇気をちょうだい。

ラストが近づいて参りました。

実はこのお話を一人称で書いたことをだいぶ後悔しています。

次回作では今作の反省をいかして書けるようにしたいです。



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