表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/186

152.おばあちゃんの慰霊碑

 今日はおばあちゃんの慰霊碑の完成式典だ。僕は正装をして参加していた。

 おばあちゃんと暮らした森の側の小高い丘の上、そこに慰霊碑が建てられた。

 真っ白な石に『偉大なる大魔女、ネリー・クーリエ。ここに眠る』と記されている。僕はなんだか寂しい気持ちになった。

 でも、同時にとても嬉しかった。今日この式典には多くの人が参加していて、みんながおばあちゃんの死を悼んでくれている。それがとても誇らしかったんだ。

 おばあちゃんは、死んだ後もみんなにとても慕われている。おばあちゃんは天から見ていてくれているだろうか?みんなおばあちゃんのために集まってくれたんだよ。

 

 式典には七賢者派の貴族が多く招待されていた。七賢者もアンドレアス殿下以外は全員揃っている。

 最初声をかけられたとき、僕は対抗戦での仕打ちを思い出して無視をしてしまった。

 みんな大慌てで僕に謝罪するので、行き場のなかった気持ちをぶつけられて溜飲が下がった。

 僕はお父さんの隣に居て、貴族の人達に紹介された。養子になってから一応貴族流の礼儀作法の勉強はしていたけれど、実践するのは初めてで緊張した。

 この間のグレイスの家では学校の友達としての訪問だったから、貴族の礼儀作法なんて知らないメルヴィン達に合わせていたんだ。でも今日はちゃんとしっかり手順にのっとって挨拶しないと。

 シロ達も今日はおめかしして僕の後ろで大人しくしている。

「安心しろ、今日はネリー様と深い交流があった貴族しか招待していない。弟子のエリスの事は尊重してくれるだろう」

 お父さんが緊張している僕を宥めてくれる。

 

 挨拶も落ち着いて少し休憩していると、濃い茶髪の六十代くらいの貴族と、四十代くらいの貴族がお父さんに話しかけてくる。

 僕はその人達になぜか強い既視感を覚えた。なんでだろう?

「君がエリス君かい?私はラルフ・エヴァンス。伯爵位を賜っている」

「私はセドリック・エヴァンス。エヴァンス領の後継者だよ」

 彼らは僕にとても丁寧に挨拶をしてくれた。その目はなんだか悲し気で、見つめられると落ち着かない。

「エリス・ラフィンと申します」

 僕が礼をすると、彼はすぐに去っていった。しかし式典の間中、ずっと彼らからの視線を感じていた。

 エヴァンス伯爵達は七賢者達と仲が良い様で、式典の合間ずっと七賢者の誰かの近くに居た。

 僕はデリックおじさんの裾を引くと、問いかける。

「もしかして、僕はエヴァンス伯爵達と会ったことがある?」

 デリックおじさんは目を見開いて僕を見つめる。その目は明らかに泳いでいる。

「そうだな、小さい頃に会ったことがあるはずだ」

 デリックおじさんは深く息を吐くとそう言った。なんだか何か隠しているようだ。

 胡乱気な目でおじさんを見つめていると、おじさんは用事を思い出したと言って僕から逃げ出した。

 なんでみんな、僕には秘密なんだろう。僕はちょっとイライラしてシロに抱き着いた。

 

『みんな秘密ばかりなの!エリスの気持ちを考えるの!』

 アオは僕のために怒ってくれる。

 シロは首をかしげながら、エヴァンス伯爵を見つめていた。

「どうしたの?シロ?」

『うーん……あの人達、エリスと匂いが似てるんだ』

 僕はその言葉に固まった。同時に頭に浮かんだ仮説に僕は動揺していた。

『もしかして、エリスの本当のお父様とおじい様でしょうか……?』

 モモが僕の思ったことを言葉にする。まさか……でも、僕はお父さんに関しては何も知らない。生きているか、死んでいるのかも。そして前にエリカ族長が僕にはおじいさんが居ると言っていた。でもそれが誰なのかは、まだ知らない方がいいとも……。

 ああ、なんだか、頭の中がぐちゃぐちゃだ。変な期待はするべきじゃないと思ってる。でも、もしかしてと思ったら止められない。

 一度そう思ったら、僕と彼らは顔立ちが似ているように見えた。

 最近は色々な事があって、僕は疲れているのかもしれない。

 きっと僕の勘違いだ。そうに決まってる。……でも、僕は少し、エヴァンス家について調べてみようと思った。

 

 

 おばあちゃん、僕はどうしたらいい?みんな僕のために知らない方がいいというけど、僕はもう疲れたよ。

 知りたい、僕が本当は誰なのか。どうして生まれてきたのか。そしてどうするべきなのか。

 僕はおばあちゃんの慰霊碑を見つめながら、最近ため込んでいたもやもやとした感情を打ち消そうと努力した。

更新再開です!

お待たせいたしました。


挿絵(By みてみん)

アース・スターノベル様より1巻発売中です!

本編加筆の他に外伝3作と大ボリュームになっておりますので、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ