151.対抗戦の結果
今日は久しぶりの学園だ。全クラス共通授業だったので、講堂に入るなりみんなに心配された。
「エリス君、風邪大丈夫?対抗戦出られなくて残念だったね」
ダレル君が僕に真っ先に話しかけてくれてクラスのみんなもそれに同調する。
「エリスが居なかったから、先輩達もなんだか寂しそうだったよ」
なんだか僕は心苦しかった。みんなを騙していたわけだから、当然かもしれない。
話を聞きつけたのか教室にアジズ先輩とドミニク先輩まで来てくれた。
「エリス君が居ないとなんだか寂しくてね。みんな心配していたんだ。今年は残念だったけど、来年以降は期待しているよ」
「おおー俺達は居ないけど、頑張れよ!今年の雪辱を果たしてくれ!」
先輩達が僕の頭を撫でてくれる。対抗戦に参加できないのは寂しかったけど、こんなに気にかけてもらっていたのは嬉しい。ますます申し訳ない気持ちになった。
放課後、秘密基地でテディー達に今年の対抗戦について聞いた。
「今年はブラックは二位だったんだ。イエローに負けちゃった」
テディーがため息をつきながら教えてくれる。
「でもいい勝負だったじゃない。最後までハラハラしちゃったわ」
ナディアがお茶を入れてくれながら笑う。
今年もイエローとブラックの戦いは熱かったようだ。
「レッドは相変わらず最下位だったな。でも先輩達との勝負は楽しかったよ」
「いつかレッドの下剋上が見たいですね。頑張って下さい、メルヴィン」
グレイスがメルヴィンをからかうと、メルヴィンは微妙な顔をした。レッドが勝つビジョンが見えないんだろう。
「俺らはほら、格闘では負けないから。ほとんど騎士志望だしな、うちのクラス」
『うーん、やっぱり観戦したかったですね。仕方のないこととはいえ、とっても残念です』
モモがグレイスの腕の中でそう呟いた。僕も同じ気持ちだ。
「そういえば、王様が来たんでしょう?どうだった?」
僕はなぜ王様が対抗戦を見に来たのか知りたくて、みんなに聞いてみた。すると、みんな苦虫を噛みつぶしたような顔をして黙り込んでしまう。
先ほど話した先輩達も、不自然なほどに王様の話には触れなかった。普通王族が見学に来たら少しくらいは話題になるんじゃないかな。
「なんていうか……すごく迷惑だったんだよな。やってることも意味わかんねぇし。王のせいで次の競技が始められなくてさ」
メルヴィンが言いにくそうに話し出した。次の競技が始められないってどういう事だろう?
「才能ある若者と話がしたいとかって、一人ずつ呼び出されたのよ。支持率は低いけど一応王様だし、拒否するわけにもいかないでしょう?呼ばれた子は王様のとこまで行かなきゃいけなくて……私も呼ばれたけど、簡単な家族構成を聞かれただけで帰されたわ」
ナディアはとても不快そうだ。あまり負の感情を見せないナディアにしては珍しい。
「それが何人も続いたんだよね。しかも競技の間の休憩時間だろうが関係なく。みんな怒ってたよ。大した話もしないのになんで呼び出されたんだって」
テディーもとても嫌そうだ。楽しい気分に水を差されたような気持ちなんだろう。
「私はコービン家の娘だと名乗ったら、しつこく家族構成と交友関係を聞かれました。先日の誘拐事件もあって怖かったので、喋りませんでしたけど……なんだか誰か探しているみたいでした」
探されてるのは恐らく僕とトレバー君なんだろう。本当に鍵って何なんだろう?そんなことをしてまで探さなきゃいけないほど大事なものなのかな?
「お父様に相談したら、お父様の方からも王に抗議して下さるそうです。他の貴族階級の子もそんな感じなんじゃないでしょうか?他の貴族と連携をとってしばらく自由に動けないようにしてやるって言ってましたから……」
今の王には本当に力が無いんだな。他の国だったら王様にそんな不敬な事できないだろう。
でもしばらく動けないのなら安心かな。やっぱり狙われてるとわかってからはちょっと怖かったし。デリックおじさんも豊穣祭までの辛抱だって言ってたんだ。きっと見つからずに過ごせるだろう。おばあちゃんのアンクレットもあるしね。
「ま、王の事なんてどうでもいいだろ。それよりさ、今度泊りがけの冒険にチャレンジしてみないか?」
メルヴィンの言葉に僕らは大賛成だ。
「そうと決まればテントなんかも買わないとね。今度みんなで買いに行こうよ」
「他には何が必要でしょうか?パスカルさんに聞いてみましょう」
『お泊り!楽しそう!』
『迷子になるんじゃねーぞ。チャチャ。エリスから離れるな』
その後はみんなで冒険の計画を立てた。対抗戦の事で沈んでいた気持ちが元に戻ってくる。もうすぐテイマーコンテストもあるし楽しいことはいっぱいだ。僕は膝の上のアオを撫でながら楽しく冒険の計画を立てた。




