144.チャチャのお披露目
エルフの里から帰って、次の日は学園だった。
『学園ってどんなところ?みんなで勉強するんだよね』
冒険がしたいと言っていたチャチャはとても好奇心旺盛だった。質問攻めにあって大変だ。
『あんまエリスを困らせんなよ。行けばわかるって、騒がしいところさ』
クリアが宥めてくれるので何とかなったけど、通学中ずっと質問攻めにされるところだったよ。
グレイスがモモを抱きしめてシロに乗りながら笑っている。僕らの様子からどんな状態かわかったんだろう。
今日もチャチャは僕の胸ポケットに入っている。お母さんがなるべく早く僕の服に胸ポケットを追加でつけてくれるそうだ。
とてもありがたい。
僕らは登校するとまっすぐダレル君の所に行った。
「おはよう、ダレル君」
「おはようエリス君……あれ?またなんか増えてる?」
ダレル君は胸ポケットのチャチャを見て目を見開いた。
「シュガーグライダーか。エリス君にしては普通の子をテイムしたんだね」
「……実はただのシュガーグライダーじゃないんだ」
「……そっか、今度は何ができるのかな?」
ダレル君は最早受け流すことにしたようだ。毎回毎回騒がれるのもアレだからありがたい。
またレア種と聞いてクラスメイトも集まってくる。
「チャチャは氷魔法を使うんだ」
「氷!?珍しいね、野生の魔物はあんまり使えるようにならない魔法なのに……」
ダレル君がチャチャに見せてほしいとお願いしている。
チャチャは魔法で氷の塊を出した。クラスの子が拍手すると、チャチャは調子に乗ったようだ、次々と氷を出してゆく。ダレル君の机が氷で埋まりそうだったので、僕は拾って窓から捨てる。グレイスがダレル君の机の上を拭いてくれた。
「チャチャ、もうやめて」
『わーい、僕人気者だね』
皆に拍手されてよほどうれしかったらしい。飛び跳ねて喜んでいる。目立ちたがり屋な所も可愛いんだけど、軽々しく魔法は使わないようにとくぎを刺す。掃除が大変だから。
「シュガーグライダーを飼う時気を付けるのは、気になるだろうけど爪を切らないところかな。切ると落下の原因になったりするから。チャチャは頭がいいみたいだから爪を立てちゃいけないところを教える方が早いと思うよ」
僕はダレル君の言ったことをメモしていく。
「それから胸ポケットに入れるのは正解かもね。寒さに弱いから、冬はなるべくあったかくしてあげて。……氷魔法が使えるなら、もしかしたら使う度に体が冷えるかもしれないからよく見ておいた方がいいかも」
僕はチャチャに寒くないか聞いてみた。
『ちょっと寒いかも』
今度からもう少し早く言ってほしい。モモがチャチャに近づいて温めだした。
『確かに体が冷えてますね』
ピンクラビットがシュガーグライダーを温めている絵は可愛い。
「あと普通は大きい音が苦手だったりするんだけど……チャチャの場合はそんなことはなさそうだね。好奇心が人一倍旺盛なのかな」
さすがダレル君。簡単にチャチャの特性を理解してしまった。
「後学のためになんで氷魔法が身に付いたのか教えてもらってもいいかな」
僕はダレル君にスネーク事件のことを話して聞かせた。
「なるほど、だとしたらチャチャは凄く勘がいいのかもね。スネークの苦手な魔法をピンポイントで覚醒させたんだから」
勘がいいのか。そういえばテイムしたての頃にいち早く魔物の存在を感じ取ってたな。小さい魔物だから危機には敏感なのかも。
「可愛いなー僕もシュガーグライダー飼いたいな」
セス君が気に入ったのかチャチャのことをずっと見つめている。
「いいペットショップ紹介しようか?うちが親しくしてる店なんだ」
『ピンクラビットも忘れないで下さい』
テイマーじゃなくても許可無く飼える魔物の中にはピンクラビットも含まれている。モモはチャチャに謎の対抗心を燃やしていた。今までは唯一の可愛い担当だったからな。通訳するとグレイスがモモを抱きしめて可愛がる。モモは満足そうだ。
『私も可愛いの!忘れちゃダメなの!』
アオが僕の所に来たので撫でてやる。僕からしたらみんな可愛い。
『僕は可愛いよりかっこいいがいいな』
『シロ兄さんはかっこいいぜ。なんてったって強いからな』
クリアの言葉にシロは喜んだ。
「エリス君、今度また写真撮らせてね。チャチャにぴったりのリボンも沢山あるから」
僕はこまめにダレル君の家の宣伝に貢献している。アオ達の写真集の売り上げはなかなかで、写真を撮るたびにまとまった収入を貰っていた。チャチャが増えたらまた収入も増えそうだ。




