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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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131/186

131.人魚の子供達

 僕らが買い物に夢中になっていると、いつの間にかたくさんの子供達がこちらを覗いていることに気がつく。

 トリニちゃんは申し訳なさそうに僕らに言った。

「人魚族では100歳で成人です。成人するまでは特別な許可がない限り人間の住む場所には行けません。その上この島に来る商人と話すことも出来ません。だからお話ししたいんだと思います」

 そっか、人魚に認められる人間は少ないから珍しいのか。それにしても子供が多い。エルフの里とは真逆だな。

「この島には人間の商人から買った本が置いてある図書館があって、年齢問わず大人気なんですよ。みんな人間に興味があるんです。でも成人の儀式をするまでは姿を変える術を上手く使えないので、鑑定されるとバレてしまうんです」

 トリニちゃんがテディーに人魚であることがバレてしまったのもそういう理由らしい。

「私はまだ二十とちょっとなので成人の儀式はまだまだ先なんですよね。人間のいる大陸に行ったことをお母さんに叱られてしまいました」

 トリニちゃんの発言に僕らは驚いた。どう見てもトリニちゃんは十歳前後に見える。人魚族は成長が遅いらしい。ということはこちらを見ている子供達も見た目通りの年齢じゃないんだろう。

 

 トリニちゃんは僕らの驚きの理由がわからないらしく首を傾げている。試しにトリニちゃんに僕らが幾つぐらいに見えるのか聞いてみた。

「え?私と同じくらいですよね?ああ、でも人間は寿命が短い分成長が早いと聞きました。二十歳くらいですか?」

 大ハズレだ。エリカ族長が楽しそうに笑っている。僕らがまだ十歳前後だと知ると、トリニちゃんはかなり驚いたようで口をあんぐり開けていた。

 

「私、そんな小さい子達に危険な材料集めを頼んでしまったんですね。本当に申し訳ありませんでした」

 項垂れたトリニちゃんはデリックおじさんにも歳を聞いた。そしてまたショックを受けている。この世界の人間の寿命は百歳前後だから、人魚からしてみれば短すぎて成長が想像できないんだろうな。デリックおじさんのことも百歳を超えているように見えていたらしい。

 

 ちょっと気になって、覗いている子の中に十歳くらいの子が居ないか聞いてみると、トリニちゃんは僕らには三、四歳にしか見えない子を指さした。

 なるほど、確かにこの子達が十歳なら僕らは二十歳くらいに見えるだろう。

 人魚族は面白いな。

 

 次に僕らは桟橋があるのとは逆の海辺へ案内される。結局あれから人魚の子供達も加わって森の中を大移動になった。

 人魚の子供達はまた面白いくらいに女の子しかいなくて、男の人魚がどういう暮らしをしているのか少し気になった。陸に上がれない掟でもあるのだろうか。

 

 だからか、人魚の間では男性はかなりモテるらしい。デリックおじさんと人間の世界では成人間近のメルヴィンが女の子達に囲まれて質問責めにされている。

 僕とテディーは実年齢を言ったら子供認定されたらしく、落ち着いた女の子しか話しかけて来ない。しかも話の内容は人間の生活のことだ。

 ナディアが女の子に囲まれて満更でもなさそうなメルヴィンを冷たい目で見ている。グレイスは苦笑していた。

 お母さんに未だに未練があるらしいデリックおじさんは僕に助けを求める目を向けてくるけど、どうしたらいいのかわからない。

 でもおじさんもそろそろお母さんのことは忘れて新しい幸せを探してもいいと思う。せっかくカッコイイんだから勿体ない。僕は笑顔でおじさんに手を振る。おじさんは項垂れた。ごめんね、おじさん。

 

『走るよー!』

 シロは先程から特に小さい子達と海スライム達を乗せて走り回っている。みんなウルフを見たことが無かったらしく、最初は怖がっていたけど、すぐに慣れてくれた。

 騒がしいのが苦手なモモは早々にグレイスの腕の中に避難していた。

 クリアは先程飛んでいたところを矢で射られそうになったので僕のそばに戻ってきている。

 どうやら人魚族にはテイマーが居ないようで従魔という存在がわからなかったらしい。

 僕の家族だよと言ったら納得してくれた。

 

 桟橋の逆の浜辺に着くと、大人の人魚族達が宴の支度をしてくれていた。

 砂浜に敷物を敷いてたくさんの料理を作ってくれているようだ。

 僕らは人魚のおもてなしが楽しみだった。

 

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