126.水遊び
シロが真っ先に海に辿り着いて水の中に飛び込む。
『うわ!しょっぱい!何なに?何で?』
どうやら海水のしょっぱさに驚いたようだった。
二番目にたどり着いたメルヴィンも、水の中に駆け込んで頭の先まで水に潜る。
「うわ!なんだこれ、しょっぱい!」
同じリアクションに僕は笑ってしまった。
その後追いついたみんなも靴を脱いで海水に浸かると、そのしょっぱさに驚いていた。
みんなで感動していると、パーシー兄さんが遠くから走ってくる。
「おーい!みんなずるいぞ!俺も混ぜろ!」
パーシー兄さんも荷下ろしを放棄してきたらしい。まあきっと昨日先行して別荘に来ていた使用人さん達がやってくれるから大丈夫。
あ、馬車の運転手さんにお礼を言うのを忘れてたな。少し反省しないと。
パーシー兄さんは靴を脱ぎ捨てると勢いよく駆け込んできた。
「すごいな、湖と違ってなんか変な感じだ」
感心したあと僕らに思いっきり水をかけてくる。僕達は大はしゃぎでやり返す。もう全身水浸しだ。せっかく水着を作ってもらったのに着替えすらしていないから服が重い。
モモが僕らの元まで泳いでくる。僕らにとっては腰くらいの深さだけど、モモにとっては結構な深さだろう。置いてきちゃって悪いことしたな。
グレイスがモモを抱えて浅瀬の方に行った。遊んであげるつもりだろう。テディーもそれについて行く。
「深いところまで泳ごう!」
兄さんが言うので、シロとメルヴィンとナディアと僕と兄さんで沖まで競争した。一等賞はもちろんシロだ。
足がつかない深さで僕らは泳いで楽しんだ。
潜って海の中を見ると魚が泳いでいる。海の中はとても綺麗だ。
みんなで不思議なものを見つけては指を指して教え合う。
浜辺を見ると浅い所で、モモ達とデリックおじさんが遊んでいる。僕もそろそろそちらに加わろうかな、砂遊びもしたいし。
いつの間にか砂浜にシートが敷かれていて、おじいさんとクリアが僕らを眺めて寛いでいた。メイドさんが飲み物を持ってきてくれている。なんだか貴族って感じだ。
浅瀬に戻ろうとしていると、アオが突然飛び出してきた。
『エリス、見るの!海スライムなの!」
アオは透明に近いスライムを連れていた。
「わ、すごい!友達になったの?」
僕が聞くとアオは胸を張る。
『そうなの!この辺りの海は安全だから沢山いるの!』
僕はアオ達を連れて浅瀬に向かう。テディーに海スライムを見せると大興奮していた。
「わ、海スライムだ!見てみて、ちょっと下がスカートみたいにヒラヒラしてるんだよ。泳ぎやすいようにこうなってるんだって!」
本当だ、よく見たらクラゲみたいな形をしている。
『これが海スライム!お話しましょう!このあたりの海の話を聞かせてください!』
モモは 大興奮で海スライムと対話を試みている。海スライムは快く応じてくれている様だった。
僕とグレイスとテディーとデリックおじさんはすっかりお勉強モードになってしまったモモをアオに任せて、砂遊びを始める。砂に海水を混ぜるとお城が作れるよと僕が言うと、みんな楽しそうだと参加しだした。
メイドさんがバケツを持ってきてくれたので、みんなでお城を作る。これにはおじいさんも参加して、なんだか凄く大きくなってしまった。
デリックおじさんが魔法も駆使して細かい造形を担当してくれたので、即興で作ったとは思えない城が出来上がってゆく。
「うわっ!近くで見ると凄いわね」
僕らの様子を見て海から上がってきたナディア達が、砂の芸術をみて感心していた。モモ達もいつの間にか海から上がっていて、みんなでしばらく休憩する。
『エリス、このあたりの海が安全なのは人魚族の里が近くにあるかららしいですよ』
モモが海スライムから聞いた話を教えてくれる。
『人魚族の里は海中と島と二種類あって、海中の里は深すぎて人間には行けないんですって。島の方は人間との交易のために使われているらしいんですけど、許可された人間以外は近づけないんですって。妖精の里と同じですね』
僕がモモの話を通訳すると、みんな人魚族のことが気になるようだった。デリックおじさんなんて、魔法を駆使すれば何とか会えそうだなと言っている。おばあちゃんじゃあるまいし、人魚族を驚かせるのはやめて欲しい。
「海の底の街ってどんなのなんでしょうね……見てみたいです」
グレイスの言葉にみんな頷く。きっと綺麗なんだろうな。
僕らはメイドさんが用意してくれたお茶を飲みながら広大な海を眺めた。
一巻が七月十八日に発売になります!
本編加筆に書き下ろしは外伝二本と番外編一本、プラス特典ストーリーでお届けしますので、よろしければ書店さんでご予約ください!




