121.グランドオープン
朝起きて家族とグレイスと一緒に朝食をとる。グレイスにシロに乗ってもらって、一緒にゆっくり歩いて学園に向かった。
グレイスはシロに乗れるのがよほど嬉しいらしく終始笑顔だった。
これからしばらくはこの登校風景が続くだろう。
グレイスが落ち込んでいない様子で何よりだ。
教室について談笑していると、ホワイトクラスのトレバー君がブラッククラスに駆け込んでくるなり言った。
「エリス、今週末空いてるか?またテイマーパークに行こうぜ!」
それを聞いてダレル君がこちらを振り向いた。今度一緒に行こうって約束していたからな。
「いいよ、冒険が休みの日でもいいかな?あと一緒に連れていきたい子達が居るんだけど……」
「おお、俺もソドム師匠が一緒に来たいって言ってるからいいぞ」
それは大丈夫なのだろうか。まあ、ソドムおじさんなら人数が増えてもにこやかに対応してくれそうだから大丈夫かな。
それにしても七賢者が居ると知ったら大騒ぎになりそうだな。
僕はグレイスとダレル君に一緒に行こうと声をかけた。
ダレル君はトレバー君の従魔を見て大はしゃぎだ。幻鳥も居るからな。
二人は直ぐに打ち解けて楽しそうに談笑している。
グレイスは許可をもらってウルフトリオを撫で回していた。
『ジュダにも声を掛けるならひとっ走り飛んでくるぜ』
クリアが気を利かせてジュダ君に手紙を届けてくれるという。僕はお願いして手紙を届けてもらうことにした。
するとクリアがトレバー君のミズリーを連れて一緒に飛んでいく。ジュダ君のお家を教えるためらしいけど、もしかしたらデートも兼ねているのかもしれない。
そうして僕達は週末にまたテイマーパークに行くことになった。
テイマーパークがグランドオープンしてからもうしばらく経っている。今テイマーパークはすっかり人気スポットになっているらしい。楽しみだな。
当日、ジュダ君とダレル君とグレイスと一緒にテイマーパーク近くの転移ポータルに着くと、既にソドムおじさんとトレバー君が待っていた。
ソドムおじさんは僕を見ると大きくなったねと頭を撫でてくれた。
「トレバーと仲良くしてくれてありがとう。エリスをライバル視して暴走してたから、仲良くなれて良かったよ。あれだけ行く必要がないと言っていた学園にもちゃんと通うようになったし、感謝してるよ」
「暴走はしてない!ちょっと勝負を挑んだだけだ!」
トレバー君は不満そうにソドムおじさんに食ってかかっていた。
師匠と弟子と言うよりなんだか親子に見えるな。
みんなにもソドムおじさんを紹介すると、英雄の登場にダレル君が目を輝かせていた。グレイスとジュダ君はデリックおじさんで英雄には慣れたらしい。落ち着いて挨拶していた。
テイマーパークの受付を済ませると、僕らは早速従魔達をアスレチック広場に連れてきた。前の時より従魔が沢山いて、みんな楽しそうに遊んでいる。
シロはさっきからずっとしっぽを振って待ちきれなそうだったから、許可を出すと喜んで駆けて行った。
グレイスとダレル君が大興奮で従魔達の遊びの風景を眺めている。
ダレル君は持ち前の魔物知識を発揮して、ソドムおじさんと魔物談義をし始めた。ソドムおじさんがダレル君の知識量に驚いている。
ソドムおじさんは七賢者の中でも大人しいというか、魔法や魔物の研究者としての側面が強い人だ。平和になってからは特に、様々な研究に力を注いでいる。
ダレル君はソドムおじさんの魔物関連の論文は全て読んでいるらしく、とても嬉しそうに会話している。
グレイスは遊びに参加しなかったモモを腕に抱いたまま、触りたい欲求に耐えているようだった。代わりにモモが撫で回されていて、しょうがないなという顔をしている。
「あ、居た居た!エリスくん!」
遊ぶ従魔達を眺めていると、ドナさんが走ってやってきた。
「お久しぶりです、ドナさん。グランドオープンおめでとうございます。……どうかしたんですか?」
「ありがとう、お陰様で大盛況よ!でもちょっと困ったことが起きててね。エリス君……のというか、アオちゃんの知恵を借りられないかと思って」
アオの知恵?一体なんだろう。スライム関連で問題でも起きたのかな。
みんなで首を傾げてドナさんを見る。僕はまずドナさんにみんなを紹介した。
ドナさんはソドムおじさんを見て驚いていたけれど、丁度いいから一緒に相談にのって欲しいと懇願していた。
僕らは一旦従魔達を呼び戻すとドナさんについて問題の場所に行く。
ドナさんがこんなに慌てる困り事とは一体なんだろう。
やがて問題の場所にたどり着くと、僕らは絶句した。何だこれ。




