113.お泊まり会
お屋敷に帰った時、外はもう暗くなっていた。いつもの夕食の時間を大幅に過ぎている。
お屋敷に入るとクリアとおじいさんが玄関ホールの隅でボードゲームをしながら待っていた。帰宅した僕達を見るとおじいさんが話しかけてくる。
「ああ、お帰り。クリアから手紙を受け取って待っていたぞ。君達がエリスの友人か。私はリジル・ラフィン、エリスの祖父だ」
おじいさんが挨拶すると、みんなも挨拶を返した。グレイス以外は少し緊張しているようだった。まるでこの家に来たばかりの僕のように、大きな屋敷に驚いているのだろう。
さっきのグレイスの家でもそうだったけど、豪華な場所は緊張するよね。僕も慣れるのに時間がかかった。
「みんなお腹が空いているだろう?早速夕食にしよう。デザートもたっぷり用意させたから、沢山食べるといい」
おじいさんの言葉にテディーたちは喜んだ。
みんなで食堂に行くと、お母さんと兄さんが待っていた。僕らのために食べないで待っていてくれたらしい。それぞれ挨拶をしてから席に着く。
「みんな今日は大変だったのでしょう?明日は学園もお休みなんだから、家でゆっくり休んでいってね」
お母さんはみんなを気遣って部屋の用意をしてくれていたらしい。グレイスだけは長期滞在になるので着替えなどを持ってきていたけど、他のみんなは無い。お母さんがみんなに丁度よさそうな寝巻きを用意してくれたみたいだ。
みんなお母さんにお礼を言っていた。
今日のメニューは一際豪華だった。おじいさんが隣国で仕入れたレシピで作られた料理は、馴染みの無いものだけどとても美味しかった。
おじいさんがみんなに隣国での事を話してくれたので、終始楽しい夕食会だった。
夕食後もおじいさんの話が面白くて、デザートをつまみながら談笑する。
僕らの冒険の話もすると、おじいさんは言った。
「テディー君がそれほど高度な鑑定のジョブ持ちなら、私が見つけられなかった幻の花も探せるかもしれないな」
「幻の花ってなんですか?」
僕らは初めて聞くその名前に食いついた。なんだか面白そうな響だ。
「リタの女王花と呼ばれる花だ。リタの花は知っているな?どこにでもあるなんの効能もない素朴な花だが、リタの群生地に一輪だけ、女王花と呼ばれる花が咲くことがある。見た目はリタとほぼ同じだが、女王花だけ少し大きくて花の根元が淡く光るんだ。それを持っていると幸運が舞い込むと言われていてな。私も妻にプレゼントしようとしたが見つけられなかったんだ」
そんな神秘的な花があるなんて知らなかった。テディーなら見つけられるかな?
「ちなみにオークションにかけると高く売れるぞ。欲しがっている好事家や研究者は多いからな。金貨一枚は超えるだろう」
それを聞いて僕らはますますチャレンジしてみたくなった。花一輪で金貨一枚はかなり高額だ。普段の冒険の10倍以上稼げることになる。
「僕、絶対見つけてみせるよ!みんなも手伝って!見つかったら報酬は山分けしよう!」
テディーが喜色満面で宣言した。それにみんなで頷く。
「それならもし見つけられたら、その金で隣国に旅行に行くのはどうだ?私が保護者として同行しよう。宿は向こうで買った別荘を使えばいい。もちろん、親御さんの許可がとれたらになるが……」
おじいさんの提案にみんな乗り気で返事をする。国外へ行く転移ポータル料金は高い。それに子供だけでは許可が下りない。
おじいさんが保護者として同行してくれるならこんなにありがたい事は無い。
僕らはまだ見ぬ隣国に思いを馳せた。
夕食の後はお風呂に入って就寝だ。
僕とメルヴィンとテディーは僕の部屋で一緒に寝ることになった。
グレイスとナディアは別の部屋で一緒だ。アオとモモが女子会だと喜んでついて行った。
寝る前に明日のことについて話し合う。明日はリタの花の群生地巡りだ。
おじいさん曰く国内にリタの花の群生地は複数あるそうで、それを一日で巡ることは出来ない。数日かけてゆっくり回ることになるだろう。
「リタの花って小さいよね。見つけられるかな」
一足先に寝落ちしたシロを撫でながら少し不安そうにするテディーにメルヴィンが言う。
「お前の鑑定で見つけられないものなんて無いさ。いっそ幾つも見つけてやろうぜ!」
メルヴィンがテディーの頭をグリグリと撫でる。僕らはお宝を夢見て笑った。
今日は色々なことがあったけど、楽しい話でグレイスの気が紛れているといいな。ナディアが一緒だからきっとよく気にかけてくれているだろう。
借りた本も早めに読まないとな。
その日見た夢は友達とキャンプをする夢だった。
もう少し大きくなったら、森でみんなで一泊するのも楽しそうだな。今度提案してみよう。
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