100.お肉祭り
その後僕達は楽しく狩りをした。初心者のダレル君とセス君もコツを掴んでからは簡単に獲物を狩れるようになった。
むしろ狩りより解体の方が苦戦していたくらいだ。
グレイスもラビットの解体は初めてだったので、涙目になりながら頑張っていた。ピンクラビットを解体しながらごめんなさいモモちゃんと呟くのは僕も心が痛むから止めて欲しい。
モモはシロと元気に遊んでるはずだから。
なんとか解体を済ませて、決められた時間にイヴリン先生の所へ戻ると異様な光景が広がっていた。なんだこの魔物の山。
「あ、エリスくん!お帰りなさーい。凄いのよ、シロちゃんとクリアちゃん。沢山美味しい魔物を狩ってきてくれたの!」
イヴリン先生がシロを思い切り撫でながら満面の笑みで報告してくれる。この山シロ達のせいなの?
『お帰りエリスー!皆と狩りで競争して遊んだんだよ!僕、優勝したからね』
なるほど、他の従魔達と狩りで遊んだのか……狩りは遊びなんだろうか?まあ、皆が楽しかったならいいんだけど。
『この後野外炊飯があると聞いていたので、美味しいことで有名な魔物を探して狩ってもらいました!』
そう言ったモモの足元には臭み消しに使われる薬草といい出汁が取れるキノコが沢山置いてあった。モモが見つけてくれたんだろう。
草原にはいない魔物が多くいるから、草原から繋がっている森の中に入って狩ったようだ。みんな怪我してないかな?僕は他の子の従魔を見回した。見た感じ大丈夫そうだ。
「すごいね、みんな頑張ったんだね。でも危ないから森では気をつけるんだよ」
そう言ってシロを撫でると、シロは嬉しそうに顔を擦り寄せてきた。
『なんだか自称俺達のライバル?らしいウルフ達が勝負を仕掛けてきたから受けてやったんだ。シロ兄さんのおかげで圧勝だったぜ!』
クリアが誇らしげに胸を張っている。そう言ったクリアも美味しいと評判のボアの幼体を沢山狩ってきてくれたみたいだ。
それにしても自称ライバルって、もしかしてさっきのトレバーくんのウルフかな?
辺りを見回すと、さっきのウルフ達が項垂れていた。トレバーくんとの勝負は断ったけど、みんなが勝負を受けてしまったらしい。しょうがないか。
どうやらウルフ達を慰めているらしいトレバー君と目が合うと、こちらにやって来た。
「今日は負けたが次は絶対負けないからな!」
トレバーくんは一方的に宣言して去っていく。完全にライバル視されているみたいだ。次は何で勝負するつもりなんだろう?僕はちょっと楽しみになった。
「さあ、先生も手伝いますから、この魔物達を解体してしまいましょう!今日はお肉祭りですねー。お昼が楽しみです」
イヴリン先生がそう言うと、皆から歓声が上がった。大きなシープやディアもいたので、勉強がてら皆で解体する事にする。
本当に肉祭りだな。絶対食べきれないだろう。
『エリス、あのつけダレを使うの。絶対美味しいの』
アオの言葉に僕はつけダレを沢山作って良かったと、過去の自分の選択を褒めてあげたくなった。
実は野外炊飯があると聞いて、お肉を美味しく食べるためのつけダレを数種類作っていたのだ。セス君がとても楽しみにしていたから喜んで欲しかったんだ。
前世知識で作ったつけダレはうちのシェフにも好評だった。
イヴリン先生に許可をとって、薄切りにしたお肉をタレに豪快に漬ける。いつの間にか皆興味津々でこちらを見ていた。せっかくだから皆にも食べてもらおうと沢山漬けた。冒険の時にも使えるかもと思って大量に作っておいてよかった。
漬けた後は焼く準備をする。
ついでだからスープも作ろう。モモが取ってきてくれたキノコを野外炊飯用の大きな鍋に入れてダシをとる。臭み取りの薬草を揉みこんだお肉を焼いてスープに入れたら最高に美味しいはずだ。
本当は野外炊飯は班ごとの予定なんだけど、みんな僕に調理法を聞きに来たからどの班も似たような味になりそうだ。
途中シロとモモとグレイスがキノコと薬草を追加で取ってきてくれた。
「エリスは料理上手だからね、参考にしたら絶対美味しいってみんなに宣伝しちゃった」
ナディアが僕のところに来てスープの作り方を聞いてくる。前に孤児院で料理を手伝った時も驚愕されたっけ。前世の世界は食が充実してたみたいだからな。
僕は色んな子達と楽しく話しながらスープを完成させた。
後はお肉を焼くだけだ。みんな喜んでくれるといいな。
なんと100話目です。これからものんびりほのぼのとしたエリスの日常を書いていこうと思うので、軽い気持ちで読んでくださると嬉しいです。




