初顔合わせ? 7
──結論。
義理の妹は、幼児ではなかった。
そしてその義理の妹こそが、昨晩彼が出会って早々に求愛した娘である……。
「………………」(※苦悩)
「……、……、……?」
ひとまず落ち着こうと、状況をまとめた男がひとり立ち尽くして苦悩している。そんな彼の前で、エミリアはひたすら義理兄を見上げて、彼の反応を待っている。
(? なぜ? お兄様が……何もおっしゃってくださらない……)
そんな彼女の戸惑う顔を見つめたまま、グンナールはまだ困惑したままだった。ただ言葉を失くし、なぜか自分を“狩る者”の目で見ている娘の瞳を見返すばかり。
(……なぜエミリアはわたしを睨んでいるのだろう……もしや……昨日の男がわたしだと気がついたのか?)
少し不安になるも。しかしどうやらエミリアの視線は、彼が自分に求婚した男だと気がついてのことではなさそうだった。
まずはそのことにホッとする。
求婚は撤回しない。
だが、こうなってしまったからには、彼にまず必要なのは一時撤退。必要な情報を手に入れ、状況を整理し、事態を好転させるための戦略的撤退というやつだ。
新しくできた家族との融和を壊さず、母の新婚生活を邪魔することなく、叶うことならば、目の前の娘に愛を乞いたい。こうして再会すると、どうにもその気持ちが止められなかった。
グンナールは、ほんの少し落ち着きを取り戻し、改めてエミリアを眺めた。
(……よかった、だいぶ体調は戻ったようだ……)
昨晩出会った時の彼女は、とても具合が悪そうだった。本当ならば、最後まで付き添いたかったが、ある者の登場で、それは断念せざるを得なかった。
とても心配していた。だから、こうして無事を確認出来て、とても嬉しい。
自分を見上げる緊張した義妹の顔が、どうにも愛おしかった。
長いまつげに縁どられた、ミントグリーンの三白眼。見つめていると、彼はこれまで感じたことのないときめきを覚える。
これは彼が昨日から感じていたことだが……エミリアは、とても小柄なのに、その身から放たれる気迫は武人のそれ。
しかしそれも、元は国王の親衛騎士だったアルフォンス・レヴィンの娘ということで納得がいった。アルフォンス・レヴィンは、王国でも名の知れた存在である。
(……なるほど……軍門育ちであったゆえか……それにしては、魔力も強いようだが……?)
彼の目には、エミリアの周りをとりまく魔力がキラキラと輝いて見えていた。
昨日出会った時よりは、健全に流れる魔力と、そこからにじみ出る美しい空気にグンナールはうっとりした。
おまけに彼女は、自分が贈ったウロコをわざわざ銀細工のロケットに収め、ペンダントとして身に着けてくれている。これが……嬉しくないわけがない。




