優しい光 六話
夏休みに入る 終業式の前の日
その日はめずらしく恵美がいなかった。
「恵美は?」
「風邪で寝込んでる。今日はシッタ―さん来てるんだ。
だからおべんとうは作れなかったの。
ごめんね~。」
「いいよ~俺は弁当だけが楽しみじゃないし…」
思わず口から出た言葉を慌てて飲みこんだ。
「え?何?何?」 おもしろがって千夏がその後の言葉を聞きたがる。
「いや…恵美に癒されるからさ~」矛先を恵美に向ける。
「あ~っそ!!」千夏はむくれて唇をとがらした。
キスしたい……
そんな衝動にかられた。
「何よ……。」俺の視線に気づいた千夏がちょっと慌ててる。
「あ…そういえば夏休みだからしばらく会えないね……。」
千夏がめずらしく慌ててるのがめっちゃ可愛かった。
「うん……。そうだった…。」
それに気づいて俺は急に寂しくなった。
「一カ月か~~長いね~
こんた 携帯持ってないんだよね……」
俺には携帯なんていつ与えてもらえるのかなんて謎だった。
でも今日くらい欲しいと思ったことはなかった。
連絡の手立てが俺にはないから……。
「会いたい時にテキトーに来てみるよ。」
俺がそう言うと 千夏は
「それじゃあ うちは毎日会いに来るもん…」と言った。
「え?毎日?」俺はビックリして千夏を見ると
「こんた 男でしょ?うちから言っていいの?
言うから……もう…我慢できない…」
千夏の可愛い唇がさらに尖っていた。
思わず俺は…千夏を抱きしめた。
「こんた・・・・?」シャンプーのいい香りが俺の鼻をくすぐった。
「俺も…毎日会いたい…。いつも一緒にいたい……。
だから毎日来てみるよ…。会えなくても……。
約束しないのにこうして会えたらめっちゃ嬉しい……。」
素直な気持ちを千夏には言えた。
「こんな俺だけど…付き合って下さい…。」心が汗をかいている……。
答えを待ちながらドキドキしていたら
千夏が俺から静かに離れて 俺を星がたくさんあるキラキラした大きな目で見つめる。
「その言葉…ずっと待ってたよ…うれしい~」
そう言って突然俺の唇を奪った。
素早く顔を離して「冷たい~~こんたの唇気持ちいいわ~」
そう言うとまた俺の胸に顔を埋めた。
「好き…こんなに人を好きになったの生れて初めて…」
千夏の言葉に感動していた。
人に好かれるなんて俺だって初めてだったから……。
俺は千夏を一生離さないとその時誓ったんだ。




