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第43話 

今日も読みに来て頂き、ありがとうございます!


皆様からの応援が執筆の何よりの励みになっています(*^^*)

 ローランとアデレードを乗せた馬車がバーンズ伯爵邸に到着する。


 アデレードは眠ったままなので、ローランがお姫様抱っこで彼女を抱え、屋敷の中の彼女の部屋まで運ぶ。


 そしてローランはアデレードをベッドにそっと下ろす。


 その後、メイドを呼び、彼女が今、着ている服から寝間着に着せ替えるよう頼む。



 メイドが着せ替えをしている間、ローランは退室し、そのままバーンズ伯爵夫妻と話をする為に夫妻の元に向かう。


 ローランと伯爵夫妻は応接室で話をすることになった。



「結局、アデレードは無事だったのか!?」


「アデレードは大丈夫なの!?」


 伯爵夫妻はやや興奮気味でローランに詰め寄った。



 伯爵夫妻もアデレードに起きた事態の大まかな部分は知っている。


 知っているが、それはあくまでアデレードの居場所がわかり、捜索と救出の為に私兵を数名派遣したところまでで、結局本当に彼女がそこにいたのか、そこで彼女に何が起きたかまでは知らない。



「落ち着いて下さい。アデレードは無事です。今は精神的に疲れて眠っているので、とりあえず部屋まで運びました。今、メイドに着替えを任せています」


 アデレードは無事だというローランの言葉に伯爵夫妻はひとまずほっとする。


「それで? 私達はアデレードを捜索・救出する為に私兵をここから数名派遣したところまでしか知らない。それから先の出来事について教えてくれないか?」


「街で私は護衛の方を一旦バーンズ伯爵邸に戻しました。そこまではご存知だと思います。その間、私は手掛かりになるような情報がないか聞き込みをしていました。すると、一旦伯爵邸に戻した護衛の方がまた戻って来て、アデレードの居場所がわかったからついて来てくれと言って、彼と彼女が捕らえられていた小屋まで馬に乗って向かいました。そして、小屋の手前で数名の伯爵家の私兵達と合流しました」


 バーンズ伯爵邸から出発した私兵達は例の人質を取られ悪事に加担した護衛と一緒に直接小屋に向かい、ローランについていた護衛は場所だけ教えてもらい、一旦ローランと合流する為に街に向かい、合流後、小屋に向かった。


 そして小屋の前で全員揃った。


「全員が集まったところで、私兵達が手持ちの武器を使い、小屋の扉を思いっきり破壊し、小屋の中に入りました。そこにはチンピラ風情の男が三人と痩せこけて目だけが爛々と輝いている女が一人、アデレードを取り囲んでいました。女は小瓶に入った液体をアデレードに無理矢理飲ませようとしていましたが、飲ませられる前に救出出来たので間に合いました。その後、私はすぐにアデレードを連れて現場を離脱し、一足先に伯爵邸に戻りました。アデレードと彼らの間でどんなやり取りがあったのかは分かりません。現場の後始末は私兵の方々にお任せしています」


「そうか。では、その男達とリリーをどう処理するかは私兵達が戻って、話を聞いてからになるな。とりあえず地下牢にぶち込んで、じっくりと尋問するか」


「バーンズ伯爵閣下。お願いがあります」


「何だ?」


「私もその者達の処分について口を挟んでもよろしいですか? 楽しいデートを邪魔された上、アデレードにあんな怖い思いをさせてしまった。もし私達が到着するのがあと少し遅かったら、男達に襲われていたでしょう。婚約者として黙っているなんて出来ません」


「わかった。その時は君も呼ぼう」


「ありがとうございます。では、私はアデレードについています。目が覚めた時、誰もいなかったら心細いでしょうから」


「アデレードのことは頼みますわね」


 そして、ローランは応接室を出て、再びアデレードの部屋に戻った。



***


 アデレードは自室に運ばれてから数時間後に目を覚ました。


 目が覚めたら、服は寝間着に着せ替えられ、温かく柔らかいベッドの中だったので、誰かがここまで自分を運び、着替えさせたのだろうと思った。



 そして手を動かそうとしたら、右手が誰かの手に握られている状態であることに気づく。


 アデレードは右手の方に視線を動かすと、手を握っていたのはローランだとわかった。


 ローランはベッドの横に置いてある椅子に腰掛け、右手をアデレードと握ったまま静かに眠っていた。 


(もしかしてずっと私についていてくれたのかしら……?)



 アデレードが起きてベッドの中でもぞもぞと動いたことで、それが手を繋いでいるローランにも伝わり、ローランはぱちりと目を開ける。


「起きたのですね、アデレード。寝るつもりはありませんでしたが、いつの間にか眠ってしまっていたようです。気分はどうですか?」


「大丈夫ですわ。ローランはずっとここに……?」


「馬車から貴女をここまで運び、伯爵夫妻と話をする為に一旦退室しました。退室している間にメイドに着替えをお願いしたので、寝間着に着せ替えたのは私ではありません。ご安心下さい。伯爵夫妻との話が終わってからずっとここにいました」


「そうだったのですわね。ところで今何時ですの?」


「今は夜の七時半くらいです。ディナーの時間はもう終わっています。アデレードの分は後で料理人が作って部屋まで運んで下さるそうです。食欲がなければ無理して食事を摂る必要はないです」


「そう言えばランチは食べていないので、何となくお腹が空いています。ランチはせっかくローランに選んで買って頂いたのに、何を買ったのか知ることも出来ませんでしたわ」


 アデレードは眉を下げて、しょんぼりする。


「そんなことよりアデレードが無事だったことの方が大切です。あれはやり直しが効きますが、貴女の無事はやり直しという言葉はありません。得体のしれないものを無理矢理飲まされそうになっているあの光景を見て、ゾッとしました。間に合ったのはただ運が良かっただけです。街中に行った時、もう二度と別行動はしないと約束して下さい。貴女をあんな目に遭わせたくないのです」


 ローランは悲痛な顔で訴える。


 今回は偶々捜索と救出が間に合ったが、次も間に合うとは限らない。


 それにローランとアデレードが二手に別れたことで、今回の事件は起きた。


 もう二度とあんな目に遭わないように危険はなるべく排除しようとローランは決意していた。



「わかりましたわ。危ない目には遭いましたけれど、ローランがそこまで私のことを心配して下さって嬉しいです」


 アデレードははにかむようにふんわりと笑う。


「私の気も知らないで、嬉しそうにそんなことを仰る。……では、私を心配させたお詫びをして頂きましょう」


「お詫び?」


「そうです。アデレードから私に口づけをして下さい」


 アデレードは両手でローランの顔を引き寄せて、口づけしようとするが、ローランから制止が入る。


「そうそう。この間みたいに頬に、ではありません。唇にお願いしますね」


 ローランは蠱惑的な微笑みを浮かべ、自分の形の良い桜色の唇を右手の人差し指でとんとんと軽くタッチする。


(くっ、く、唇に、ですって……!?)


 羞恥で悶えるアデレードにローランは早く、早くと急かす。


「目は閉じて頂けませんか? 恥ずかしいので……」


「……いいですよ」


 ローランはアデレードに言われた通り、目を閉じる。


(睫毛が長い……それに目を閉じていても本当に綺麗なお顔ですわね)



 アデレードは勇気を出して、ローランの唇に自分の唇をそっと合わせる。


 彼女はさっと離れようとしたが、その瞬間、ローランが彼女の後頭部に右手を回し、啄むような口づけを数回する。


 そして、二人は離れる。



「ありがとうございます、アデレード。これで私の心は癒えました」


 ローランはにっこりと満面の笑みを浮かべる。


「一回だけではないのですか!?」


「一回だけなんて私は一言も言っていませんよ。これから徐々に慣れていきましょうね」


「~~……!!」


 アデレードは反論しようとしたが、声にならなかった。


「アデレードも目覚めたことですし、夕食を運んでいただきましょうか」


 ローランがメイドにそろそろアデレードの夕食を運ぶよう頼み、数分後に夕食が運ばれて来た。


 アデレードが食事をするのをローランは優しく見守る。



 食事が終わり、アデレードの部屋の中で二人はホットミルクを飲みながら談笑する。


「そう言えば、ローランは冬生まれだとお母様から聞きましたが、誕生日はいつですの?」


「誕生日は1月12日ですね。自分から誕生日を言うと、何だかお祝いを強請っているみたいで言い辛くて……」


 ローランは苦笑いする。


「私、お母様から聞いて、誕生日の贈り物を用意したのです。私の部屋の中で雰囲気も何もありませんが、受け取って下さいまし」


 アデレードは用意していた贈り物をアクセサリー類を仕舞う大きめの箱の中から取り出し、ローランに渡す。


「これは今、開けても……?」


「ええ。使って頂けると嬉しいですわ」



 ローランは細長い指を器用に使い、しゅるしゅるとリボンと包装紙を解いていく。


 包装紙を取り払い、箱を開けると、ネクタイピンとカフスボタンが姿を現す。


 ローランはアデレードの瞳の色の宝石がついていることにすぐに気づく。


「こんな素敵な贈り物をありがとうございます。大切に使わせて頂きますね。アデレードの誕生日には私の色の入った贈り物をしますので楽しみにしていて下さい。アデレードの誕生日はいつですか?」


「私は7月7日ですわ。今からだとまだまだ先ですわね」


「その分、何を贈るか考える時間はたっぷりあります。貴女のことを考えながら選ぶ時間は楽しそうです」



 時刻は就寝の時間に差し掛かる。


 今回、ローランは泊りがけでの滞在なので、彼はバーンズ伯爵邸で夜を明かす。



 ローランが就寝する場所は客間だ。


 そろそろローランを客間に案内する為のメイドが迎えに来る。


「アデレード、そろそろお休みの時間です。ゆっくりおやすみなさい」


 ローランはそう告げて、アデレードの額に軽く口づける。



 そして、案内のメイドがアデレードの部屋をノックしたので、ローランは退室する。


 メイドはアデレードの部屋の扉が完全に閉まっているのを確認し、薄暗い廊下で小声で囁く。


「旦那様が例の件で話をするそうです。このまま談話室に来て頂いてもよろしいですか?」


「わかりました。案内をお願いします」

 


 ――こうして、アデレードが知らぬ間に事件を起こした犯人達の処断が決まる。

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