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第36話 

今日も読みに来て頂き、ありがとうございます!


皆様からの応援が執筆の何よりの励みになっています(*^^*)

 結局、その後アデレードは滞在時間中ずっとローランの部屋にいた。


 ローランはアデレードが心理的に疲れているかもしれないことを配慮して、今日は無理をせずゆっくり部屋で話をし、屋敷の中の案内はまた次の機会で良いと判断した為、そのような運びになった。



 アデレードとローランが話題にしていたのはサノワ学園の話である。


 ローランは手紙にも書いてあった定期考査で、学年で三位という成績を修めたらしく、それによって夏季休暇が明けて二学期が始まったら、生徒会活動が加わるようだ。


「ローラン様が三位なら一位と二位はどんな方なのですか?」


「一位はアレクシス王太子殿下ですね。二位はマクシム・クレリー公爵令息――宰相閣下の二男です。アレクシス王太子殿下とマクシムと私の点数はかなり僅差で正直誰が一位になってもおかしくはなかったのですが、結果的にアレクシス王太子殿下に勝利の女神が微笑んだようです」


「ローラン様と同じ学年には王太子殿下がいらっしゃるのですね」


「国内で一番教育水準が高く、学生と講師陣のレベルが高いのがサノワ学園ですから。王族の方はサノワ学園に通われることが多いようですよ。学園の図書室に置いてある誰でも閲覧可能な卒業生名簿を見ても、王族の方のお名前が載っています。それだけでなく、学園の所在地も王宮のある王都にあって交通の利便性も良く、王族の方が通うには最適かと」


「ローラン様はその王太子殿下や宰相閣下の令息様と親しいのですか?」


「同じクラスに所属していますし、仲が良い方だとは思いますよ。彼らと友人付き合いするにしても、家格で釣り合いが取れないということもありませんので。アレクシス王太子殿下とマクシムとユーゴ・マーティン侯爵令息――騎士団長の長男と私でつるんでいることが多いですね。ユーゴは少々脳筋のきらいがあるので、成績上位争いには加わっておりません」


「何だかすごく豪華な面々ですわね。ところで、生徒会活動とはどんなことをする活動なのですか?」


「生徒会活動は学園行事の企画・運営が主な仕事ですね。貴族が通う学園なので、社交の練習を兼ねて一、二ヶ月に一度はお茶会やダンスパーティー等を学園行事としてやっているのです。それらの企画・運営です。その行事で使う予算の割り振りを決めたり、会場の飾り付けやセッティングを行ったり、会場で提供する飲食物の手配等ですね。予算自体は学費から徴収されていて、学園長から生徒会に一年間の予算額を知らされるので、その金額を元に生徒が楽しめる行事を行うということになります」


「では、私が入学したらローラン様が関わっている行事に参加出来るということですか?」


「本人から辞退がない限り任期は二年間ですので、そうなりますね。生徒会活動で著しく成績を落とした場合は強制的に退会させられますが、その心配は今のところありません。生徒会は生徒の代表や見本といった立場ですので、成績が悪い者が生徒会に所属するというのは学園側も許容出来ないのです」


 アデレードは他にもローランが入学試験を受ける時にどのように勉強を進めていたのか助言を求めたり、ローランが経験した学園での面白い・楽しいエピソードを色々聞いた。


 話の途中で紅茶のお代わりや新たな茶菓子としてピンクや黄色、緑などカラフルなマカロンをメイドが用意する以外には人の出入りはなく、ローランとアデレードは彼女が帰宅する時間までのんびりと過ごす。



 バーンズ伯爵一家の帰り際はルグラン侯爵家の家人全員で見送られた。


 特に自分の発言の責任を感じていたアンリエットはアデレードに謝った。


「アデレード様、私のせいで本当に申し訳ございませんでした。決して意地悪で言ったのではなく、お兄様との仲が縮まるようにと思って……」


「私はアンリのお陰で気づけたことがあったから、謝る必要はありませんわ。お気になさらないで下さい。もし良かったらこれからも私と仲良くして下さいませ」

 

 アデレードとしては、アンリエットの発言は今まで気づいていなかったことに気づくきっかけになったので、良かったと思っている。


 アデレードは眉を下げて、半泣き顔のアンリエットの頭をポンポンと撫でる。


「は、はい……!」



 ルグラン侯爵とバーンズ伯爵は父親同士でこれから先のことを含め、十分に話をし、ルグラン侯爵夫人とバーンズ伯爵夫人もたっぷりと話が出来てご満悦の様子だった。

 

 こうしてルグラン侯爵邸への訪問は幕を閉じた。



***


 ルグラン侯爵邸の訪問以降、アデレードは自室で学園の入学試験の為の勉強に励みつつもローランの言った言葉について考えてみたが、答えは出なかった。


 アデレードにとって今、最も大切なのは勉強なので、余計なことは考えず、極力頭を空っぽにして知識を詰め込んでいる。


 主に考えるのは、勉強の合間の休憩時間だが、そんなちょっとした時間で答えが出る訳がなかった。


 しかも、ルグラン侯爵邸の訪問以来、やり取りは手紙のみで、アデレードはローランに直接顔を合わせて会っていなかった。



 そんな中、ある日のランチの時間でバーンズ伯爵が重々しく口を開いた。


 バーンズ伯爵家では、食事は基本的に家族全員で摂ることになっているので、この日のランチは家族全員がテーブルについていた。


「門に配置している私兵から連絡が一件あったので、注意喚起を含めてアイリス、アデレード、ウィリアムにも言っておく。もうこの名前を聞きたくもないだろうし、思い出したくもないだろうが、リリーが昨日この伯爵邸を訪問して来たそうだ」


「え……? トーマス伯爵邸を追い出されたと聞いていたので、てっきりそのままトーマス伯爵領にいるのかと思っておりましたが……」


 アデレードの疑問に伯爵夫人も同意する。


「対応した私兵によると、服はぼろぼろで身体は(やつ)れてみすぼらしくはなっていたが、名前と髪の色や瞳の色等の身体的特徴、ここに住んでいたことも言っていたらしく本人で間違いないと思われるとのことだった。それで、また伯爵邸の離れに住みたいから私を呼べと大声で叫んだらしい。しかし、私は彼女が出て行った時、二度と敷地は跨がせないと決めたので、門番には彼女が訪ねて来ても一切取り次ぐなと指示を出していた。それで、その私兵は私の指示通りの対応で、門を開くことはなかった」


「それで連絡だけがあったということですわね」


 伯爵夫人が伯爵に確認する。


「そうだ。それで昨日は帰ったそうだが、彼女が納得しているかどうかはまた別の問題だ。近日、再度訪問するかもしれない。気を付けてもらいたいのは、彼女がこのバーンズ伯爵領にいるということだ。私達からすれば彼女を家に入れて保護しないというのは正当性があるが、私達が伯爵邸を出て外で活動している時に彼女が私達を偶然見かけ、逆恨みで襲ってくる可能性も全くないとは言えない。だから、外に出かける時は護衛を何人かちゃんと連れてからにして欲しい」


「わかりましたわ。そのようにしましょう。アデレードとウィリアムはあまり外出する機会は多くはないでしょうが、屋敷にいても門の付近には立ち寄らないようにした方が良いですわね」


「ああ。門の付近には立ち寄るな。今の段階では念の為だが、警戒しておくに越したことはないから。出て行く時は”頼まれたって戻って来ない”なんて言っていたが、一体どの口がそんなことを言うのだか……」



 バーンズ伯爵家に不穏な雰囲気が立ち込める。

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※ローランの学園での友人の面々が乙女ゲーム転生ものの作品に出てくるような肩書付きですが、本作品にこれから乙女ゲーム転生ものの要素が絡むということはありません

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