第32話
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ルグラン侯爵夫人とローランの訪問以降、アデレードはローランと手紙のやり取りをするようになった。
先に手紙を送って来たのはローランの方だ。
手紙の内容はこのような感じだった。
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親愛なるアデレード嬢
貴女のお陰で先日のバーンズ伯爵邸への訪問は非常に楽しいものになりました。
改めてありがとうございました。
さて、これを認めている今日、サノワ学園では定期考査が始まりました。
これは夏季休暇に入る前のテストで、春から今まで習ったものがどの程度習得出来たのか確認するものになります。
私が受講している科目の数はそれなりに多いので、謂わば夏季休暇前の試練といったものです。
この定期考査の点数が悪ければ夏季休暇が始まるまでに補講を受け、追試を受けたり、個人個人に配布される成績表に点数が載り、親の叱責を受ける羽目になるので、皆、真剣に取り組んでいます。
一夜漬けの勉強でどうにかなるような甘いものではないとだけはお伝えしておきましょう。
日頃の頑張りが大切です。
定期考査が終わると、ようやく夏季休暇に入ります。
夏季休暇は来月一日からなのですが、両親に相談すると一週目から二週目はルグラン侯爵家関係の付き合いが入っていて、予定があまり空いていないそうです。
なので、アデレード嬢にルグラン侯爵邸を訪問して頂くのは、三週目から四週目がルグラン侯爵家としては都合が良いです。
今のところ、三週目から四週目には予定はほぼ入っていないので、大体どこの日でも可です。
バーンズ伯爵御夫妻とも相談の上、この手紙の返信内容に都合が良い日を三つ程記して、教えて下さい。
最後に暑い日が続きますが、夏風邪などひかれないよう元気にお過ごし下さい。
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ローランの筆跡は流れるような流麗な字だった。
定期考査中で勉強が忙しいだろうに、手紙からは焦ったり逼迫しているような雰囲気は感じられない。
最後にはアデレードに気を配るような文章まであって、アデレードは感激する。
アデレードが何を送っても返事の一つもなかったベンとは違う。
アデレードは手紙の返事を認めるよりも先に、伯爵夫妻にルグラン侯爵邸訪問について、都合の良い日時を相談しようと思い、自室を出る。
自室を後にしたアデレードはとりあえずサロンに向かう。
運が良ければ、二人がサロンで休憩している場合があるからだ。
サロンではちょうど伯爵夫妻が揃ってお茶をしていた。
「御機嫌よう、お父様、お母様。少し相談したいことがあるのですが、今、お時間よろしいですか?」
「執務の合間に休憩していただけだから時間はある」
「私も時間は大丈夫よ」
伯爵夫妻から時間は大丈夫だと了承を得られたので、アデレードは本題を話す。
「ローラン様からお手紙が届きましたの。そのお手紙にはルグラン侯爵邸訪問の日程の相談が書かれておりました。ローラン様によると来月の一週から二週目は都合が良くないようで、三週から四週目が都合が良いそうです。それで、ローラン様にお返事を書くにあたり、お父様とお母様の都合を確認したかったのです」
「今すぐは予定はわからないから後で執務室に戻ってから確認しよう。確認もせず適当な日を指定しても、後で困ったことになるだけだ。誘われているのはアイリスとアデレードだけかもしれないが、私も一緒に出向いてルグラン侯爵閣下に挨拶しよう」
「私もこの場では予定はわからないから後で確認するわね」
「わかりましたわ。では、お二人の都合の良い日程が決まったら教えて下さい。ローラン様は三つ程都合が良い日を教えて欲しいとのことでしたわ」
「三つね。わかったわ」
「お話はそれだけですので私は部屋に戻りますわ」
アデレードはサロンを退室し、自室に戻る。
自室に戻ったアデレードは書き物机の上に、メモ用紙を一枚用意し、ローランへの手紙の下書きをする。
実際に送る分には上等な便箋を使用するが、いきなり上等な便箋を使って手紙の文面を書き、誤字脱字などで失敗すると勿体ないことになってしまう。
なので、失敗しても問題ないメモ用紙に一度下書きとして書き、書いたものを自分で読み直し、それで良いか確認する。
時間はかかるが、失敗なく書ける為、アデレードは基本的に手紙を書く時はいつもこの方法を使っている。
アデレードが自室で手紙の下書きを書いている最中に、伯爵夫妻からの伝言を預かったメイドがやって来て、先程サロンで三人で話したルグラン侯爵邸を訪問するのに都合が良い日が決まる。
アデレードは予定はなかったので、伯爵夫妻の予定に合わせるのみだ。
訪問するのに都合が良い日がわかったので、アデレードが書いていた手紙の下書きは完成する。
読み直して文章構造的におかしな点や誤字脱字もなかった為、今度は上等な便箋を一枚、書き物机の引き出しから取り出し、下書き通りに丁寧に認める。
上等な便箋は明らかに紙質が良く、薄いピンクベースで、四隅には花の柄が入っている。
アデレードはこの便箋がお気に入りで、いつもこの便箋を使用している。
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親愛なるローラン様
早速のお手紙、ありがとうございました。
学園の定期考査でお忙しい中、私に手紙を送って下さったことを申し訳なく思うのと同時に嬉しく思います。
お手紙からは慌てて勉強されているご様子は読み取れませんでしたので、きっとローラン様は問題なく定期考査を終えられるのだろうなと感じました。
ローラン様と出会ってサノワ学園に入学することを決めたので、私は日々受験勉強に明け暮れております。
勉強のやる気を向上させる為、これからも学園でのローラン様のお話を聞きたいです。
ローラン様からのお手紙にありましたルグラン侯爵邸への訪問の件につきましては、両親と相談した結果、三週目の週末、四週目の週末が都合が良いという結論に至りました。
二つしか候補を挙げておりませんが、もしこの二つの内どちらも都合が悪い場合は遠慮なく仰って下さい。
それと、私とお母様だけではなく、お父様もルグラン侯爵閣下にご挨拶申し上げたいとのことでしたので、当日は三人でルグラン侯爵邸を訪問させて頂きます。
これからまだまだ暑くなりますが、ローラン様こそ体調管理はしっかりなさって下さい。
またお会いできる日を楽しみにしています。
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アデレードはインクがしっかりと乾いたのを確認した後、丁寧に便箋を折りたたみ、便箋とセットになっている上等な封筒に入れ、最後にバーンズ伯爵家の家紋の封蝋をして封を閉じる。
そして部屋に置いてある呼び鈴を鳴らし、メイドを呼びつける。
「失礼致します、アデレードお嬢様」
「今、お手紙を書いたので、これを配達に出して欲しいの。宛先は封筒にきちんと記載しているから、それを見て確認して頂戴ね」
「畏まりました。間違いなく手配します」
「お願いね」
アデレードが書いた手紙はメイドに渡り、ローランの元へと無事に届く。
後日、ローランからアデレードにまた手紙が届き、ルグラン侯爵邸への訪問日が来月の三週目の週末に決定した。
アデレードは伯爵夫人と一緒にルグラン侯爵邸を訪問する時の為にドレスを新調したり、手土産を選んだりと楽しみにしながら過ごす。
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