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第31話 

今日も読みに来て頂き、ありがとうございます!


皆様からの応援が執筆の何よりの励みになっています(*^^*)



※更新遅れまして、申し訳ございません。

「軽食は全て食べ終わりましたし、そろそろ温室の方に移動しますか?」


「ええ、そうですね。そこは思い出の場所ですので、案内して頂けるのならお願いしたいです」


「では、行きましょう」


 アデレードは今まで滞在していたガゼボを出るにあたり、再度メイドを呼びつける。


「私達はここから温室に向かいますわ。なので、ガゼボの後片付けをお願いしていいかしら?」


「畏まりました、アデレードお嬢様。私達はここの後片付けをしますので、他のメイドに温室の方に向かうよう声をかけておきますね」



 メイドにガゼボの後片付けを頼み、アデレードとウィリアムとローランは温室へ向かう。


 温室は上から見下ろすと大きめの五角柱型の建物で、屋根の部分は五角錐になっている。


 五角錐の頂点には黄金の薔薇のオブジェがちょこんと乗っており、太陽の光が当たるときらりと輝く。



 今日も温室は解放されているので、三人はそのまま温室の中へと足を踏み入れる。


 温室の中は青紫色の紫陽花が壁側にぐるりと植えられており、温室の内側から見ても、温室の外側から見ても美しい青紫色の紫陽花を堪能することが出来る。


 紫陽花の花はこんもりと大きいので、沢山の紫陽花の花が集まると、見応えがある。


「見事な紫陽花ですね。青紫色の紫陽花だけではなく、ピンクや赤紫、白の紫陽花もあって、見ていて目が楽しいです」


「青紫だけは地面に直に植えていますが、後は鉢植えにしておりますわ。庭師が言うには、結構色の調整が大変だったようなので、お客様に見せて色合いが美しいと仰られると私達も嬉しくなりますわ。ローラン様はどのお色の紫陽花が好きですか?」


「私は王道の青紫が好きですね。自分の瞳の色にどことなく似ていて親近感があります」


「そう言えば、ローラン様は私と出会った時、瞳は青でしたわよね?」


「ええ。成長するにつれて今みたいな青紫のグラデーションのような色合いになっていきました」



 温室の中は紫陽花がメインに植えられているとは言え、他の植物や花も育てている。


 温室は庭園と違って屋根も壁もある建物の中なので、風や大雨といった自然環境に晒されている中では育てにくい珍しい花を育てていたり、品種改良中の花を育てている。


 アデレードはローランにそれらを紹介しながら案内する。


 すると、ソファーが置いてある場所までたどり着く。


「これはローラン様が昔、座っていらしたソファーですわね。お天気が良ければ明るく、かと言って直接太陽の光を浴びる訳でもないから、ここで読書をするというのはすごく分かりますわ。しかも人は庭師が温室の手入れをする為に来るくらいで、ほとんど来ないから静かにゆっくりしたい時は最適の場所です。そう言えば昔、ウィリアムもよく自室を抜け出してここにいましたわね」


「もう、アデレード姉様! そんな昔のことをお客様の前で言わないで下さい!」


 アデレードによって思わぬ暴露をされたウィリアムは慌てて制止しようとするが、既にアデレードの口から出た言葉は消えない。


「ウィリアム君はどうして自室を抜け出したりしたのですか?」


「それは勉強から逃げていただけですわ。次期伯爵としてかなり小さい頃から家庭教師を手配されていたのです。昔のウィリアムは少々やんちゃで勉強よりも遊びたい男の子だったのです」


「私にも身に覚えがあるので気持ちはわかります。しかし、今のウィリアム君からはあまり想像出来ない一面ですね」


「そんなことをしていたのは本当に一時期だけでしたけれどね。今はすっかり落ち着きましたわ。さて、これで温室も案内が終わりましたので、そろそろ本邸のサロンの方へ向かいましょう」



 庭園と温室の案内は終わり、アデレードとローランとウィリアムは本邸のサロンの方へ戻ることになった。



***


 アデレード達が庭園や温室を巡っている頃。


 本邸のサロンではバーンズ伯爵夫人とルグラン侯爵夫人が二人でお茶をしながら話に花を咲かせていた。


 今日は三段のティースタンドにスコーンやプチケーキ、マカロン等の茶菓子を載せて紅茶と共に楽しむアフタヌーンティーのスタイルだ。



 久々に二人で会ってゆっくり話す時間が取れたので、話題は尽きない。


 まずは最近流行しているお菓子やファッションについてひとしきり話をしたところで、ローランとアデレードの話へ話題が移動する。

 


「それにしてもアイリスから手紙をもらった時は驚いたわ。うちのローランだけではなく、まさかアイリスの娘のアデレード嬢も婚約解消したなんて」


 バーンズ伯爵夫妻はアデレードとベンの婚約解消後、少しずつアデレードの新たな婚約者探しに動き出していた。


 その一環で、バーンズ伯爵夫人はルグラン侯爵夫人に近況としてアデレードの婚約解消について手紙で教えた。


「少し色々ありまして。ローラン様についてはスキャンダル的な要素はないけれど、アデレードは違うわ。あの子の婚約者だったトーマス伯爵令息がアデレードと婚約破棄して、新しい婚約者にカトリーヌにも以前教えた例の養子を迎えるなんて言い出したのです。詳細は言わないけれど、最終的にトーマス伯爵令息は例の養子をトーマス伯爵邸に連れて行き、二人はトーマス伯爵に婚約者同士とは認められなかった。二人はそのまま追放されたそうですわ。令息の方は貴族籍を抹消されておりますし、例の養子も既に養子縁組は解消済みですので、もうバーンズ伯爵家とは関係や繋がりはありません。また、令息が婚約破棄を突き付けてきたとは言いましたが、書類上は穏便に婚約解消となっています」


「災難でしたわね。世話をした養子が、婚約者を略奪するなんて。でも、そのお陰でローランにチャンスが来たことだけは感謝したいわ。ローランとアデレード嬢が婚約することになれば、私達も家族ですわね」


 バーンズ伯爵夫人からの手紙でアデレードの婚約解消について知ったルグラン侯爵夫人はすぐに夫であるルグラン侯爵とローランに相談した上で、バーンズ伯爵に婚約の打診をした。


 ローランはその話にやけに反応が良かった為、変に思った夫人が問い詰めた結果、初恋相手だと判明した。



「私も私で驚きましたわ。ローラン様の婚約者としてアデレードに婚約を打診したいなんて。その上、ローラン様の初恋の相手がアデレードなんて聞いたらもう吃驚して……。トーマス伯爵令息の件があったから、私達もアデレードを蔑ろにせず大切にしてくれる方がいいとは思っておりましたの。高望みは出来ないとはわかっていても望んでしまう……」


「それは私もわかりますわ。ローランにお見合いさせてもどの子も問題のある子ばかりだったわ。ローランの容姿目当てだったり、次期侯爵夫人という肩書目当てだったり、侯爵家の財産目当てだったり。婚約者がいないという此方の足元を見るような話もありました。ここで、アイリスの娘と婚約するチャンスが巡って来るなんて思ってもいなかったわ。私達は見守るだけで、あとはローラン次第ね。ローランを見たアデレード嬢の反応を見る限り、第一印象は悪くはなさそうだったから頑張って欲しいところですわね」


「そうですわね」



 バーンズ伯爵夫人とルグラン侯爵夫人がローランとアデレードの話をしていたところでアデレードとローランとウィリアムがサロンにやって来た。


「あら、もう庭園の案内は終わったの?」


「ええ。庭園と温室をローラン様に案内しましたわ。庭園ではゆっくり軽食と紅茶も頂いたので、かなり時間は経っていると思いますわよ?」


 そこでバーンズ伯爵夫人は慌てて時計で時間を確認すると、ルグラン侯爵夫人とお茶会をはじめてからもう二時間経過していた。


「もうこんな時間なのですわね。カトリーヌ、そろそろお茶会はお開きでよろしいですか?」


「ええ。久々にアイリスに会ってお話出来ただけでも満足よ。話足りない分は今度、ルグラン侯爵邸でお話しましょう。アデレード嬢もアイリスと一緒に来て下さいましね」


「ローラン様にも言いましたが、ルグラン侯爵邸にもお邪魔させて頂こうと思っておりました。今度、是非伺わせて下さい」



 ルグラン侯爵夫人とローランは帰宅することになり、バーンズ伯爵夫人とアデレードとウィリアムは二人を見送る為に玄関まで同行する。


「では、アデレード嬢。お手紙は書きますのでお待ち下さいね。次に貴女に会える日を楽しみにしております」


「私もお返事は必ず書きますわ。では、また今度」

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