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女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~  作者: イノセス
16章~天上篇~

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420話~次の相手って何処なんだろう?~

『今年の夏も、各地で熱い戦いが繰り広げられております!先ずは東京、オリンピックの話題からです!』


夕方のニュース番組から、元気な女性キャスターの声が聞こえる。

彼女の話を聞く限りだと、他の日本選手は随分と苦戦しているみたいだ。水泳や球技は何とか予選をクリアしている種目もあるが、陸上などのトラック競技は予選落ちが続出しているらしい。

そして、注目されている異能力戦だが、チーム戦は既に予選落ち濃厚の雰囲気となっているとの事。どの年齢層でも中国チームが強すぎて、既にメダルを諦める空気になっているみたいだ。

シングルとチームはU12、U15、U18としっかりと年齢階層が分かれていて、その分メダル獲得の可能性が広がっている。それなのに、もうメダルは無理だろうと言われているみたいだ。


それどころか、予選すら突破できない可能性が濃厚となっていた。

シングル戦以外の異能力戦競技は、ファランクスと同じで予選だけリーグ戦となっており、既にいくつかの試合が終わった後であった。

その結果、あと1敗したら予選敗退確定だとか、既に他チームの勝敗頼みになっているチームばかりになっているそうだ。

どの話題も暗い物ばかりだ。


『反面、シングル戦とファランクス戦は絶好調です。先ずは本日行われたファランクスのフランス戦です』


テレビの映像が今日の試合のハイライトに切り替わり、フィールドでは蔵人を中心にフランス選手を蹴散らす日本チームの様子が映し出された。

随分と我々の力を疑っていたみたいだったので、ここで力を示してやろうと思ったのだが…思った以上に相手が頑固で、力が入り過ぎてしまった。

終盤には、フランス選手全員が座り込んで、全く動かなくなっちゃったし。


ちょっと、えげつないやり方だったか。

そう反省する蔵人だったが、ニューススタジオの中は女性キャスターや評論家達の黄色い声が飛び交っていた。


『これは凄いですね。黒騎士選手だけでなく、80番のハマー選手も同じシールダーで大活躍をしているじゃないですか。90番のクマちゃ…クマ選手も、攻めるキッカケを作り出していますし、日本の男子選手が特に頑張った試合と言えるのではないでしょうか?』

『私もそう思いますよ。特に後半戦、フランスチームの足並みを乱したのはクマ選手であり、それを狩り獲ったのは黒騎士選手とハマー選手です。いわば、日本の男子選手がフランス選手を倒したようなものです。日本異能力の技術力と、男性選手の活躍にスポットライトが向いた試合であったと言えるでしょう』


絶賛されているけれど…これは意図してやったことだからね。

フランスのAランクエース…フランクフルトさんだったかな?彼女がCランク男性の力を過小評価している風であったから、これは見てもらわねばと男子中心の作戦に切り替えさせてもらったのだ。

お陰で、こうして評論家の皆さまにも理解してもらえたし、観客席も大盛り上がりであった。

慶太が大人気なのは幼稚園生の時から変わらないけれど、Dランクのアニキまで黄色い声援をいっぱいに浴びせられていたからね。

これで、特区内で冷遇されているDランクの方々の扱いが良くなってくれると嬉しいのだが…。


『日本の男子ファランクス界は熱いですね。ビッグゲームの方でも、男子選手が活躍しているのでしょう?』

『ええ、魔王選手とロキ選手ですね?中等部ファランクス全国大会で、呉中と桜城学園の2校は順当に勝ち上がっており、その立役者が男子中学生の彼らです。明日には2回戦が行われますが、両行の試合は立ち見客も出る熱狂ぶりです』


ほうほう。

ネットで勝ち負けだけは確認していたが、桜城のみんなも頑張っているみたいだ。2回戦と言う事は、勝てばベスト8に入る。主要メンバーが居ない状態でそこまで勝ち上がれたのは、本当に凄い。


『熱い夏。男子選手達の活躍が目覚ましいですね。日本異能力界への期待が高まっています』

『これは、とてもいい傾向だね』

『ええ、本当に見ていて、目の保養になりますからね』

『いいおばさんが、何を言ってんですか』

『『『あはははははっ!』』』


盛り上がるスタジオ。

我々に期待してくれるのは嬉しいのだが…ちょっと男子を持ち上げ過ぎだ。

今回のフランス戦、女性陣もかなり頑張ってくれたんだぞ?前半戦は盾の補強と侵入者の迎撃をしてくれたし、後半も後方を警戒してくれたし、待機得点で着実に相手を追い詰めていた。だから、フランス選手も監督も、早めに棄権してくれたのだろうし。

そう蔵人は評価していたが、他の選手達もテレビの言葉に頷いていた。

特に、鈴華達円柱組が。


「くっそ~。あたしらフランス戦、ただ突っ立ってただけじゃねえかよ」

「うちもキル2つしか取っとらんで。初めて桃花に負けたわ」

「いいじゃん、2人とも。私なんて0だよ?Aランクの主将がキル0って…」

「だからあたしもだって、美原先輩。あたしも0だよ」


鈴華達は万が一の保険で円柱役に留まってもらったが、そのせいで全く活躍の場を設けることが出来なかった。

これはある意味、俺の采配ミスだろう。フランスに、世界に理解を示す為にと前に出過ぎた。

特に後半は、その色を強くし過ぎてしまった。

大きな反省点だ。


「なぁ、ボス。次はあたしらが前に出るからな?」

「頼んます、カシラ」

「私も、主将でプータローは流石に不味いからさぁ」


みんなが振り返り、出番を寄越せと目を輝かせる。

貪欲なのは良い事だ。でも、采配を決めるのは俺ではなく監督だぞ?

蔵人は両手を上げ、精いっぱいの答えを返す。


「そうですね。今後の事も考えて、僕が円柱役になる方向で相談してみます」


次の相手は、格下のジンバブエだ。きっと、シールドファランクスでガードしなくても何とかなるだろうし。



そう思っていた時期が、蔵人にもあった。

でも、試合が始まると考え直さねばならなかった。

想定した以上に、何とでもなってしまったからだ。


『ジンバブエの8番!11番!14番が同時に吹き飛んだぁ!美原選手、一気に3枚抜きです!

おおっと、左翼では伏見選手が6番のBランクをキル!これで彼女はハットトリック成功だ!放送席手前では、久我選手が17番を浮かせて場外ベイルアウト、島津選手も5番をベイルアウトさせました!』


鈴華達を前にして、ジンバブエ前線は崩壊の一途をたどり、その隙に桃花さんと理緒さんが円柱に走り込んでタッチを決めていた。

もう、何と言うか、半分いじめみたいな試合である。

蔵人は円柱に手を置きながら、その一部始終を見てため息を吐きたくなった。

そして、そう思ったのは向こう側も同じみたいで、直ぐにジンバブエベンチから停戦の申し出が鳴らされた。


『ジンバブエ棄権!前半戦開始から、たった4分29秒で試合終了!日本の勝利です!日本はリーグ戦2連勝をきめました!』

「「「わぁああああ!!」」」

「素敵よ!うらら~!」

「流石は黒騎士選手のライバルだ!」

「「う・ら・ら!う・ら・ら!」」


余りの活躍に、会場は海麗コールに包まれていた。

それを聞いて、鈴華が「あたしは!?」みたいな顔で周りを見回している。

まぁ、まぁ、鈴華。黒拳一振りで、相手のアイスピラーを粉砕してしまった海麗先輩が目立つのは仕方がないって。


「くっそぉ~!次の韓国戦では絶対に、あたしが目立ってやるからな!」


なんか、主旨が変わっている。

だが、そうやって悔しさをバネにするから、鈴華の成長率は著しく、また本当に有言実行してしまうのが彼女であった。



予選3日目の韓国戦。


「鈴華スペシャルのお届けだぜぇ!」

【【ぎゃぁああ!!】】


鈴華は最初からフルスロットルで吹っ飛ばし、ついでに相手も吹っ飛ばしていた。それに巻き込まれた韓国選手達が阿鼻叫喚となり、韓国チームの応援席はお通夜モードへ突入だ。


『ここで韓国側から棄権の合図だ!前半戦8分11秒。ファーストからフォースタッチまでを取られた今、逆転は難しいとの判断でしょう。これで日本は3連勝!予選突破まであと1勝まで迫ったぞ!逆に韓国は2敗目と厳しい状況に陥った。明日のフランス戦に勝たなければ、予選敗退が濃厚となります』


3戦目も終わると、リーグ予選の先が見えてくるチームが出てくる。

6チームが1ブロックで編成される今回のリーグ戦では、1敗でもしていれば1位通過は厳しくなり、2敗してしまうと3位以下となる可能性が高くなる。他のチームの戦績にもよるが、少なくとも日本とスイスが全勝している今の時点で、このFブロックでの2敗はかなり絶望的な成績だろう。


【くそぉ…日本に負けちまった…】

【一番負けちゃいけない相手だったのに】

【去年のアジア大会では勝てたのに、なんなんだよ、あの8番は】

【11番もヤバかったよ。1人で突っ込んできて、円柱役全員吹き飛ばしちゃって、3つもタッチを奪って行きやがった…】


挨拶の時、韓国選手からは負けた以上の負の感情を向けられる。

第二次世界大戦が起きていないこの世界でも、1910年の韓国併合は起きているからね。この世界でも、日本に対する韓国人の恨みは強いみたいだ。



と、お隣の国とは色々あったが、翌日のウズベキスタン戦の試合後では、純粋に日本を褒めてくれた。


【強いですね、日本。流石は東洋の奇跡を起こした国だ】

【経済援助だけでなくて、異能力でも勉強させて欲しいです】


今回も鈴華達を中心に戦ってもらったが、無事に勝利を収める事が出来た。

相手もなかなかに機動力と練度が高く、前半戦は日本側が押される場面もあった。でも後半戦では鶴海さんの指示もあり、着実に巻き返すことに成功した。


「おう、良いぜ。何時でも日本に遊びに来いよ。ボスから教わった技、教えてやっから」


鈴華は得意気にそう言って、こちらを指さす。

その途端、笑顔だったウズベキスタン選手達は表情を固くし、互いに顔を見合わせた。

うん。俺に何か?


【日本は自由な国ですね。男性がこのような場所に居ても、咎められないなんて】

【私達の国でしたら怒られてしまいます。男性をこんな場所に出すべきではないと、何らかの罰を受けてしまいます】


どうも、ウズベキスタンでは男性の社会的地位が低いらしい。

イスラム教徒が大半のこの国では、モラルや伝統といったものが強く、理想の男性像が明確に示されているのだとか。

現にウズベキスタンの男性は、外に出るだけでもヒジャブ(頭や顔を隠す布)を被らないといけないらしい。


「何言ってんだよ、お前ら。そんなんだから、あたしらに…」

「鈴華」


何か言おうとしていた鈴華を、蔵人は静かに呼び止める。

彼女達の考え方は、その地に根付いた宗教から来ている。それを無理やり変えようとするのはとても危険。宗教の否定は魂の否定。血で血を洗う悲劇の幕開けだ。

変えるなら、彼女達の心の中から。

蔵人は鈴華の横に並び立ち、ウズベキスタン選手達を前にする。


「皆さん。この後も、私達の試合を観ていて下さい。私達がどんな戦い方をするのか、是非その目で確かめて下さい」


観てどうするかは、彼女達の問題だ。我々はただ、彼女達に考えるキッカケを作り出せればいい。

これから先、新たなモラルの構築が必要であると。


【応援してますよ、日本】

【閉会式まで、選手村に滞在しますので】


彼女達は、明確なYESを言わなかった。

でも、今はそれで十分だと思う。



次の日のスイス戦では、フランス戦同様に多くの地元応援団が来場していた。観客席はスイス国旗の赤地に白十字が幾つもはためいていて、その中には聞き覚えのある声援も混じっていた。


【がんばれー!スイスー!リーグ1位をブラックナイトからもぎ取れぇー!】


本当に応援しに来たんだ、ベティさん。自分達もチーム戦で忙しいだろうに。

だが、彼女達の必死さも分かる。

スイスは今、波に乗っている。昨日はフランスにも勝利し、日本と同率1位になっていた。ここで勝てば、本戦が確実に有利となるのだ。だから、応援団はより気合が入っていた。


彼女達の応援があったからか、スイスチームは序盤から猛攻を仕掛けてきた。

防御中心の陣形ではあるが、こちらの前衛が崩れ始めるとすかさず侵入を試みて、こちらをヒヤリとさせる。

今回も蔵人は円柱役で、Aランクは藤波選手が出てきている。序盤は小さなオロチだけで戦い、侵入者を確実に仕留めていた。


後半戦にもなると、互いの選手に疲労が溜まって来て、途中入場した者が活躍し出す。そうなると、ベイルアウトを幾つも取られたスイスチームが活気づく。新しく入った選手が早速、日本前線を抜けて円柱手前まで来た。


『スイス最大のチャンス!ここで決められるか!?日本からは黒騎士が前に出た!』


そろそろ仕事しないとね。久しぶりの仕事だから、お手柔らかに頼むよ?


【噂の黒騎士か。私の速度に追いつけるかな?】


相手はエアロキネシスみたいで、超高速の加速でこちらを翻弄しようとしてくる。

目では十分追えるが…確かに、こいつは厄介だ。

近付いてくる相手に、蔵人は背中に盾を2枚装着する。

そして、


「タイプⅡ、エリアルワイバーン!」


速度重視のスタイルに変更し、相手へと駆け出した。


『速い!日本の黒騎士選手。背中に羽のようにクリスタルシールドを張り付けて、物凄い速さでラウラ選手に迫ります。これには堪らず、ラウラ選手が直角に曲がって左翼へ逃走。だが、黒騎士選手が逃がさない!一瞬でラウラ選手との距離を詰めて…その羽で刈り取った!ベイルアウト!Bランクのラウラ選手を一発キルだぁ!』

「「わぁあああ!!」」

「「くっろきし!くっろきし!」」

【なんて速さだ!】

【おい、今あの選手、飛ばなかったか?】

【ばか野郎。シールダーが飛ぶわけねぇだろ!】


ふぅ。なんとかなった。

蔵人は観客達に手を上げながら、円柱へと帰る。


【うわぁ~…今のでダメなのかぁ~】

【彼がベティの言っていた黒騎士なのか?】

【そうだ!あれが黒騎士だよ。おい!黒騎士!お前ちょっとは手加減しろぉー!】


無茶を言うなよ、ベティさん。



そのまま、スイス戦も何とか勝てた日本チーム。

これでFブロックを全勝し、1位での通過となる。


「次の相手って何処なんだろう?」


ホテルへの帰りのバスで、桃花さんがワクワクしながらそう聞く。

しかし、それはみんなが思っていた事。テレビからの情報で、各ブロックの1位と2位がどの国かは把握していたが、本戦のトーナメント表までは把握出来ていなかった。

ただ1人を除いて。


「多分だけど、ニュージーランドじゃないかな?」


当然のように選手専用バスに乗り込んでいたのは、我らが敏腕記者。彼女はノートを取り出して、真ん中あたりを開いた。

そこには、手書きのトーナメント表が描かれていた。


「とある情報では、各ブロックの1位はそのままの順で並ぶんじゃないかって言われているんだ。だから、トーナメント表の奇数番号は上から…

Aブロック1位のロシア。

Bブロック1位のイタリア。

Cブロック1位のアメリカ。

Dブロック1位のドイツ。

Eブロック1位のインド。

Fブロック1位の日本。

Gブロック1位の中国。

Hブロック1位のオーストラリア。

って並びになる」


挿絵(By みてみん)


「へぇ。そうなんだ。でも、それじゃあまだ、日本の1回戦が何処と当たるか分からないよね?」

「うん。2位がどうなるかって所なんだけど、ランダムかリバースのどちらかじゃないかって言われているんだ」

「リバース?」


蔵人はつい、言葉を挟んでしまったが、若葉さんは構わずに頷く。


「そう、リバース。A1位はH2位と、B1位はG2位とって感じで、1位とは逆に入れられていくんじゃないかってこと」

「ああ、そういうことね」


話を聞いていたら、後ろの席の鶴海さんが何かを納得した。

何を?


「そのリバースした順番であれば、同じブロックから出たチームが本戦で当たりにくくなるわ。当たったとしても決勝戦になるから、より公平性が保たれる」


なるほど。それは確かに公平だ。

本戦1戦目から、予選で負けたところと当たったりしたら目も当てられないからな。

ファランクスはチーム戦であり、そのチーム独自の戦法が生まれやすい競技だ。だから、相性が悪いチームはどうしても生まれてしまう。なるべく多くのチームと当たる可能性を増やして、公平性を保とうとしているのか。

蔵人も納得すると、若葉さんは首を若干斜めにする。


「う~ん。まだ確定している訳じゃないけど、この理論で言うと日本が当たるのはCブロック2位のニュージーランドになる。逆に、スイスと当たるのはCブロック1位のアメリカだね」


挿絵(By みてみん)


「うわぁ。スイスに負けてたら、始めからアメリカと当たる羽目になってたんだぁ」


桃花さんが「うわぁ~」と声を上げると、それを聞いた鈴華が「何言ってんだ!」とそれを咎める。


「あたしらはアメリカにも勝ってんだぞ?そんな弱気になってんじゃねえぞ、モモ」

「せやな。優勝するなら、全部に勝たんとイカンで」


う~ん。それはそうだが、アメリカに勝ったと言う自信は程々にしておいた方が良いぞ?CECの相手は2位のチームで、しかもかなり油断していたから。

蔵人はみんなの浮かれっぷりに少し警戒心を強めたが、特に咎めようとはしなかった。

下手に言って、みんなの気持ちにブレーキをかけてしまうと不味いから。折角連勝して気分が乗っている今だからこそ、この速度は維持せたい。

ただし、すこし浮かれた体に重しだけ加えさせてもらおう。


「では、その仮説が正しかったとして、ニュージーランドは楽勝な相手なのかな?若葉さん」

「ええっと。そうだね…ニュージーランド自体の異能力ランクは日本よりも格下だよ。人口も日本の半分くらいだし、Sランクの数も半分なんだ」


あら?そうなの?

思ったよりも楽観的な返答が返って来てしまい、蔵人は焦る。そして、鶴海さんに視線を向けた。

鶴海さんは大きなお目目をぱちくりさせながら、人差し指を顎に当てる。


「えっと、そうね。確かに、ニュージーランドのメダル獲得数は日本よりも下よ。でも、ことファランクスにおいては強い国でもあるわ」


なんでも、ニュージーランドはファランクスがとても人気で、国内リーグも大変盛り上がっているらしい。その規模は、アメリカにも匹敵する程だと言う。

そして、


「過去のオリンピックでは3回も金メダルに輝いていて、直近でもドイツやロシアに勝つ試合が幾つもあったわ。だからファランクスにおいては、5大列強と変わらない強さだと思った方が良いと思うの」


うんうん。やはりそうだよな。

蔵人は一安心して、みんなを振り返る。

みんなの表情は、少し硬くなっていた。


「聞いての通り、次の相手も強敵だ。だが、我々もそれなりの力を持っている。これに加え、情報収集と体調管理を怠らず、当日全力で挑めば必ず勝てる」

「おう!そうだぜ。ボスが居れば必ず勝てる!」


鈴華が拳を上げて、またお気楽な事を言う。

蔵人は手を差し出して、彼女をその手で示す。


「鈴華、良い事を言ってくれた。だが、俺が居るから勝てるのではなく、みんなが居るから勝てるんだ。俺がみんなを支え、みんなが俺を支えてくれ。俺達盾役が相手の攻撃を防ぐから、みんなは相手の前線を攻撃してくれ。そしたら、俺達も余裕が出来て攻撃に回れる。フランス戦のようにな。

俺はオールラウンダーだが、1人で何でも出来る訳じゃない。でも、みんなが力を合わせてくれるのなら何でもやろう。俺は、オールラウンダーだからな」

「オールフォーワン、ワンフォーオールって事ね」


鶴海さんの言葉に、蔵人は大きく頷く。


「このチームなら勝てる。先ずは本戦1回戦を、全力で戦おう」

「「「はいっ!」」」


蔵人の言葉に、バス全体から返事が返って来た。

桜城メンバーに対して言ったつもりだったのだが、いつの間にかみんなの耳もこちらに向いていたみたいだ。

うーん。ちょっとでしゃばり過ぎたか?


「ああ、私が、何も言えなくなってる…」


そして、畑山監督。出番を奪ってしまって済みません…。

「次はニュージーランドか」


まだそうと決まったわけではありませんが…若葉さんの情報ですからね。信憑性は高いです。


「他のブロックを見ると、順当に五大列強が勝ち上がってきているな」


日本はダークホースとなれるのでしょうか?

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