表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~  作者: イノセス
第14章~夢幻篇~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

418/497

385話(1/2)~夕火の刻、粘滑なるトーヴ~

他者視点です。

「最近多いな、アマンダ嬢視点」

暫くは、彼女の主観となります。

夢幻(むげん)龍ジャバウォック。

そう(うた)った銀龍は、のそりのそりとバリアウォールの縁まで移動し、壁の下でセレナの歌に顔を向ける暴徒達を見下ろした。

そして、


『(低音)夕火(あぶり)の刻、粘滑(ねばらか)なるトーヴ。

遥場(はるば)にあるは、総て(よわ)ぼらしきボロゴーヴ』


(うた)を、歌い始めた。

意味が分からない奇妙な歌詞だが、何故か聞き入ってしまう。セレナの歌と相まって、心の中の不安を食い尽くしてくれる。

傾く夕日によって彩られるドラゴンの瞳が、真っ赤な炎を(くゆ)らせる。

その瞳が一瞬、鋭くなったと感じる。

その時、


【【【おぉお…】】】


下で、小さな呻き声が聞こえた。

見ると、セレナの歌を聞き入っていた暴徒達が、顔を伏せて地面に(うずくま)っていた。

そして、顔を上げる。

固く閉じていた瞳が、らんらんと開いていた。

悲鳴が、聞こえる。


【ぎゃああ!いてぇ!】

【ここ、何処よ!?】

【何が…何がどうなっているんだよ!?】

【わしゃ、誰じゃ?】


暴徒だった人達に、意識が戻っている。

カイザークラスの呪縛から、解放されたんだ。

ジャバウォックが、蔵人君達が、アメリカ国民を救ってくれたのだ。


無茶なバフを掛けられ、軍隊から攻撃を受けていた彼らの殆どは、思い出した痛みに苦痛を訴え、次いで、現状を理解して悲鳴を上げた。


【おい!バリアウォールが目の前にあるぞ!】

【なんでこんな所に居るんだ!?特区の役人どもに捕まっちまうぞ!】


【おい、見て見ろ!特区の軍人が、バリアウォールの上で構えてやがる!】

【俺達を殺す気だ!】


【待って、歌が聞こえるわ!】

【セレナだ!セレナがゲリライベントをしているぞ!】

【うぉおお!マジかよ!?何ヶ月ぶりのゲリラステージだ?めっちゃテンション上がってきたぜ!】


軍隊の姿に恐怖した彼らだったが、聞こえてくるセレナの歌に表情を明るくした。

多分、セレナのコンサートが開かれていることで、軍隊は彼女の護衛をしているとでも思ったのだろう。

それを証拠に、俯いていた人々は一様に顔を上げ、こちらに向かって大きく手を振っていた。


急に大歓声を向けてきた群衆に、軍人達は戸惑った。

彼女達もジャバウォックの導きがあったと思うが、夢から覚めたばかりで状況が分かっていないようだった。彼女達の記憶には、バリアウォールを破壊しようとしていた暴徒の印象が強く残っている様子だった。

そこに、


『総員!撃ち方止め!撃ち方止め!国民に異能力を向けるな!』


指揮官達の声が、無線を通じて一斉放送された。

流石は、部隊を統率する指揮官だ。状況を瞬時に理解して、もう目の前の群衆が敵対するべき暴徒ではないと判断していた。

指揮官の攻撃中止命令を受けて、軍人達はすぐに手を下げた。そして、その指示を出した指揮官達は、険しい顔のままに私の元へ、その後ろで下界を見詰める銀龍へと視線を上げる。


【貴方が、小官の夢に出てきた銀龍ですね?】


真ん中に立つ初老の女性が、ジャバウォックの前でピシッと姿勢を正して問いかける。

そして、彼らからの答えを聞くよりも先に、綺麗な敬礼をして声を上げた。


【貴方のお陰で、我々は暗闇の中から戻る事が出来ました。私達の仲間を、大切な国民を傷付けることなく、もう一度戦うチャンスを頂きました。貴方の不思議な力が、アメリカ国民全ての命を救ってくれたのです。私は、それに感謝することしかできません。貴方の多大な貢献に、私ではこれ以上の言葉を持ち合わせておりません】


彼女が付ける勲章から、相当高い地位の軍人であるのは分かる。そんな人が言葉に詰まる程、感謝していると言っているのだろう。

しかし、その言葉を受けたジャバウォックは、ゆっくりと首を振った。そして、遠くの地平線へと視線を飛ばす。


『(低音)かくて(さと)遠し、ラースのうずめき叫ぶ声。

(よわ)ぼろしき者の、常世(とこよ)へと迷う嘆きの声』


相変わらず、言っている言葉の意味は分からなかったが、ソニアによって彼らの意志が伝わってきた。

それに寄ると、まだ助けを叫ぶ声が聞こえると言っているらしい。戦いはまだ終わっておらず、カイザークラスに洗脳されている住人はまだまだ居ると。


それを聞いて、指揮官が驚いた顔を上げた。そして、数秒迷った後に、苦々しく声を吐き出す。


【本来であれば、貴方達も我々が守るべきアメリカの客人。ですがこの現状、貴方でなければこの窮地を打破することは出来ないでしょう】


指揮官は敬礼を下ろし、深く、深く頭を下げた。


【夢幻龍、ジャバウォック様。貴方様のお力を今一度、我々にお貸しください!】


それは、日本で誠意を見せる際に行われるDOGEZA(どげざ)…じゃなくて、OJIGI(おじぎ)だったかもしれない。

兎に角、師団長クラスの指揮官である彼女が、日本の文化に合わせて懇願している。それだけ、ジャバウォックの力が特別だと軍隊も認識したと言う事だ。

そんな彼女を、ジャバウォックは燃える瞳の片方だけで捉えた。


『(低音)然り』


ジャバウォックは一言で了承すると、直ぐに瞳を前へと戻す。バリアウォールの淵に前足を掛けて、体を更に前へと傾ける。

大きな口を、少しだけ曲げる。

その口から、楽し気な詩が紡がれる。


『(低音)この身戻りし(とき)意気(いき)踏々(とうとう)たる凱旋のギャロップを踏まん』


勝って凱旋してやろうと宣言する銀龍は、そう宣うや否や、その巨体を壁から放り出した。

なに!飛び降りただと!?あのドラゴンの背中に、羽らしき物は見当たらなかったのだが、飛べるのか?

私は慌てて下を覗いたが、その時には既に、ジャバウォックは高速道路の上に降り立っており、驚き逃げ惑う住人達を掻き分けて進んでいた。


取り敢えず、無事ではある様だ。

そう安心したのも束の間、


『黒騎士君に続けー!』

「おい!セレナ!それ、あたしのセリフだぞ!」


私の横をセレナと銀髪の白銀鎧が通過していった。

彼女だけでは無い。さっきまでBGMを奏でていたメンバー達が次々と、ジャバウォックを追うように壁から飛び降り始めた。

そんな彼女達を追うように、透明な鳥と浮遊する少女が降りていく。

飛び降りた少女達は、後から降りていった浮遊系異能力者の少女達によって受け止められ、ジャバウォックが過ぎ去った道を駆け出していた。


こうしてはいられない。

私も、助走を付けて走り出す。後ろからソニアの止める声が聞こえたけれど、振り切って彼女達を追う。私には、彼らを守る義務があるのだから。

足の強化を更に掛けて、私は道路へと降り立つ。少しアスファルトが割れてしまったが、問題ないだろう。今回の騒動で、ゲート周囲は大規模な修繕が必要となっている。


私が立ち上がると、すぐ近くで衝撃が走った。

見ると、私の隣に誰かが降り立ったところだった。

小麦色の肌に、少し困ったような苦笑い。

空手少女のウララだ。彼女は、アスファルトに足が突き刺さっていた。

どうも彼女も、私と同じように壁の上から飛び降りたみたいだ。足が真っ黒になるまで強化したから、硬いアスファルトにも突き刺さってしまったらしい。

相変わらず、凄い強化の仕方だ。


私は彼女に手を貸して、足を引き抜く手伝いをする。


「よっと!ありがとうございます、ええっと、あまんださん?」

【問題ない。先程の恩返しだとでも思ってくれ】


私はウララを助け出すと、ジャバウォックの後を追って走り出す。すると、後ろからウララも着いてきた。

彼女も、彼らを追う為に降りて来たんだな。


後を着いてくるウララを見ていると、何重にも閉ざされていたバリアウォールのメインゲートが開いたのが見えた。そして、そこから軍の装甲車両が1台出てきて、同時に、耳に着けた無線機から指揮官の声が聞こえた。


『これから我々は、反撃に打って出る。各位の最優先は、先頭を走るジャバウォックのユニゾンを守る事だ。第一、第二部隊はジャバウォックに近づく敵を排除せよ。第三、第四部隊は周囲の索敵と、操られている隊員達の無力化を行うように』

了解(Roger)!』

分かりました(yes)


『各位。ここが分水嶺だ。ジャバウォックが打たれれば、アメリカに未来は無いものと思え。命を()してでも、彼らを守るのだ!』

『『yes!上官(Ma'am)!』』


その命令が下されている内にも、何台もの装甲車両がメインゲートから出てきて、私達の横を通過してジャバウォックが作り出した道をひた走る。

装甲車両が出撃し終えると、次に現れたのは武装した歩兵達だ。一時は退避して、操られそうになった彼女達だったが、今では普段通りの動きに戻っていた。そんな彼女達は、次々とゲートから走り出ていくと、ゲート前で立ち止まっていた市民達に向って走り寄って行った。

どうも、怪我をした住人や、老人子供を保護しているみたいだ。洗脳は解けたが、まだ興奮状態の住人を取り押さえる隊員の姿もある。

蔵人君からの情報では、薬物に手を出している者もいるらしいから、そう言った危険人物の確保も含まれているのだろう。巷で流行っている"D"と呼ばれる薬物は、服用者が攻撃的になるらしいから、この騒動の後には一斉検挙が行われるだろう。


「おい!お前らも乗ってくか!?」


兵士達の働きに見とれていると、後ろから声を掛けられた。

振り返ると、大型トラックの運転席から顔を出す男性の姿があった。見覚えのない男性だが…随分と女性に対して堂々としている。まるで、蔵人君を見ている様だ。

またもや立ち止まってしまった私は、暫くの間、男性に釘付けになってしまった。

そこに、隣のウララが挙げた手が映り込む。軽く手を振って、何でもないように男性へ返答した。


「私は走っていくから大丈夫ですよ。先に行った鈴華ちゃん達を乗せてあげて欲しいです」

「おう。あんま無茶すんじゃねぇぞ」

「それは、先頭を走ってる蔵人達に言ってあげてよ」

「言われなくても、みっちり言い聞かせてやるぜ!」


男性は手を振りながら運転席へと引っ込み、そのままトラックを発進させる。かなり大きなトラックだが、貨物車にしては荷台部分がカラフルな車両だ。

通り過ぎるトラックを見送っていると、トラックはすぐに装甲車に追いついて、その隣に並んで並走していた。

軍から停められない辺り、彼も軍の関係者なのだろう。だが、あれほど気さくな男性が、アメリカ軍に居た覚えがない。蔵人君の護衛だろうか?


おっと。足が止まっていた。

私達は再び走り出す。すると、先に出ていった筈の軍車両を次々と追い越す事となった。郊外の道路は遮蔽物が散乱しており、洗脳を解かれた人が右往左往していた。それらを回避しながらだと、車両はなかなか速度を出せないようだった。だから、ブーストで速度も出て、小回りも効く我々の方が彼女達をスイスイと追い抜いてしまったのだった。


そうして走り続けていると、先程の男性が乗ったトラックにも追い付いた。トラックのすぐ目の前にはジャバウォックもいて、長い尻尾で瓦礫を退けていた。

なるほど。暴動でビルの一部が崩れしまい、瓦礫が道路を塞いでいるのか。


【手伝おう】

「私がやるよ!蔵人君!」


私とウララはジャバウォックの前に出て、瓦礫を撤去する。

これくらい何て事ない。私にかかれば、重さ10tの岩もバスケットボールと同じくらいの重さだ。ボールの様に軽く投げ飛ばしてやるぞ。

どうだとばかりに大きな瓦礫を放り投げて、私は自分の体を誇示する。私の後ろに立つトラックに向けて、ちょっとしたアピールだ。


「チェストぉお!」


私が決めポーズを披露していると、向こうでウララが拳を振り回し、私よりももっと大きな瓦礫を砕いているのが目に入った。

たった一撃を放っただけで、大岩は勿論のこと、衝撃波で道路上に散乱していたゴミまで全部、吹き飛ばしてしまっていた。

私は恥ずかしくなり、ポージングを止めた。


【……ぅうん…むにゃむにゃ…】

【……ぐぅ〜、ぐうぅ〜……】


ウララが開けてくれた道を進もうとすると、瓦礫の裏や廃墟の中から多くの人影がユラリと現れる。

目を硬く閉ざし、足取りもフラリフラリと怪しい人達。

未だに、カイザークラスに操られている暴徒達だ。

彼らは我々に気が付くと、徐に腕を上げて異能力を使用し始めた。

色とりどりの魔力弾は、とてもDEランクのものでは無かった。明らかに、バフで強化されている。


【総員!装甲車から降りて迎撃態勢!】

【ジャバウォックをやらせるな!】

【走れ!走れ!走れ!】


その攻撃に、装甲車から降りて来た隊員達が慌てて前に出て、各々のシールドで我々を守ろうとした。

だが、数が違う。

今ここに辿り着いた装甲車は数台だけで、対応できる隊員の数も、暴徒と比べたら圧倒的に足りていなかった。

彼女達が防御しきれない攻撃が、こちらへと迫ってきた。

長くなりましたので、明日へ分割致します。


「軍が出動していながら、先頭に出るとはな」


仕方ありません。ジャバウォックの力は唯一無二。機械神に対抗できるのは、彼らだけしょうから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ジャバウォックの詩はどこ起源だろ?「今回はこんな感じの龍お願い」的注文で黒戸さんか柳さんの英文学の 教養を参照か、エイトラインズのゲームデータぶっ込まれた?wこの世界のアカシックレコードにアクセスか …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ