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女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~  作者: イノセス
第14章~夢幻篇~

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377話(1/2)~マグネター~

※他者視点です。

私の目の前では、太陽の光を浴びて輝く黄金の龍が翼を広げる。

強欲な龍の王様、ファフニール。

その龍の名前は、私でも聞いたことがある。

神々から奪った金銀財宝を独占したという、古の邪龍。それが今、私達の目の前で同じように欲している。

魔力を。

勝利を。

正しさを。


鈴華と黒騎士君が合わさってできた黄金龍が、歪で真っ黒なスライムモドキを見下ろした。


『(低音)醜く肥え太る悪食よ。その満たされぬ欲を、苦痛を、我が全て奪い尽くしてくれよう』


ファフニールが翼を大きくはためかせる。すると、スライムの体に変化が起きた。

球体だったその体が、ボコッ、ボコッと大きく凹凸を作り、その凹凸が更に伸びて体から分離し、ファフニールの方へと引っ張られて行った。

これは、もしかして重力…ううん。鈴華の磁力だ。

ファフニールが放つ強力な磁力によって、スライムの体が引き千切られていた。


【何をしているの!?そんな下位種の異能力に惑わされるなんて!】


体の一部を奪われつつあるスライムの足元で、金切声が響いた。

カトリーナさんだ。彼女が顔を真っ赤にして、狂ったように金髪と腕を振り回していた。


【蹴散らしなさい!銀トカゲは完全に無防備!今なら貴女達の魔力弾で撃ち抜けるわ!】


彼女の命令に、スライムが緩慢な動きで答える。まだファフニールに奪われていない部分から泥水を分離させて、それを高速で撃ち出した。

泥の弾丸が、ファフニールの体を貫通、


『(低音)電磁バースト!』


貫通する前に、弾丸が跳ね飛ばされてしまった。

打ち返した?ううん、そうじゃない。泥水はファフニールの体の表面を滑る様に避けたんだ。まるで、そこに見えない壁でもあるみたいに。


スライムから放たれる弾丸を、ファフニールは仁王立ちのままで受ける。全ての弾丸が、ファフニールに体を滑るように避けていき、弾かれてしまう。

よく見ると、ファフニールを構成している白い鱗から、短いイナズマの様なものが見える。電磁バーストと言っていたけれど、電磁バリアみたいので泥水を弾いているんだと思う。それで、無数に打たれた魔力弾を全部弾いてしまっている。


それを見て、スライムの攻撃が止んだ。


【な、なんで…BCランクの、上位種でもない子供に…】


理解が出来ないと首を振りながら髪をかき乱すカトリーナさん。そうしながら1歩、2歩と後ろへ下がる。

そんな彼女を追うように、ファフニールが大きく1歩前に出る。

一回り小さくなった黒いスライムに向けて、大きく口を開いた。

その口の中に、青いイナズマが無数に走る。

目もくらむような閃光を、吐き出した。


『(低音)マグネター!』

【防御しなさい!】


私でもヤバいと思う攻撃に、カトリーナさんが必死の形相で黒スライムに命令する。すると、黒スライムが泥水を吐き出し、それが閃光に当たって飛び散る。飛び散った泥水は瞬時に固化して、土壁になった。

攻撃だけじゃなくて防御にも使える泥水。2種類の異能力を混ぜるユニゾンだから出来る技術。

これが、DP社の作り出した最新の機械。

誰もがDP社の技術に驚いた瞬間だった。


でも、それは本当に瞬間だけ。

次の瞬間には、閃光に晒される土壁が淡く光り出し、分解されて周囲に飛びっ散った。

黒スライムから吹き出される水も淡く光り出し、同じように分解されていく。

そして、閃光はバチッバチッと小さな破裂音を弾かせながら、黒スライム本体へと降り注いだ。


閃光に当たったスライムは、土壁と同様に体全体を淡く発光さらせる。

閃光を吐き終わったファフニールが翼を広げると、その動きに合わせるように、鈍く光るスライムの体が分離し始めた。真っ黒な泥水が細かく分散して、ファフニールの周りに集まり浮遊し始める。土壁だった物や、スライムが吐き出した泥水も全部、そこに集まっていく。

ファフニールの翼から、再び短い電流がパチパチと放出される。すると、真っ黒だった水にその電気が当たって透明になっていき、綺麗なアクアキネシスの魔力と硬いソイルキネシスの魔力に分離されていった。

反対に、魔力を奪われ続ける黒スライムはみるみると小さくなっていく。

一時は、フィールドの半分を埋め尽くす程に肥大化していた黒スライムだったが、今ではイーグルス円柱と同じくらいの大きさになっていた。

それと同時に、ずっと聞こえていた彼女達の苦痛の呻きも小さくなっていく。


やがて、全ての黒スライムがファフニールの磁力によって分解されると、残されたのはイーグルス円柱の前で座り込む2人の選手だけになった。

ファフニールが手を差し出すと、その2人も宙に浮き上がり、黄金龍の手の上に乗った。


『よぅし。待ってろよ。今、その変な機械を外してやるからな』


鈴華の声に戻ったファフニール。その手のひらで、小さな電流が流れる。途端に、2人のパワードスーツがバラバラに分解されて、強制的に繋がれていた手も解けた。

2人は龍の手の中で倒れ、そのまま消えてしまった。

ベイルアウトだ。


ファァアアアン!!


『試合終了!イーグルス選手がフィールドから一掃された為、桜城のパーフェクトゲーム!パーフェクトゲームが成立!CEC決勝戦の勝者は日本から来た、チーム桜城だぁ!』

【【【わぁああああああ!!!】】】


『次々と披露されたDP社の最新兵器をものともせず、それを真正面から迎え撃った桜城選手!魔力量と最新兵器だけが勝利の条件じゃないと見せつけるみたいに、個々の異能力で、チーム力で、全てをナチュラルパワーで打ち砕いて見せてくれた!劇的な勝利!圧倒的な勝利だ!』

【やった!本当にやりやがった!】

【最新兵器を殆ど素手で倒しちゃった!】

【イーグルスまで倒しちゃうなんて…なんてチームなの、オージョーは】

【日本って、こんなに強いのか?グレートアメリカってのは…嘘だったのか?】


アメリカの精鋭が集まると聞くNFL。そこのトップを争うイーグルスが負けて、お客さんの中にはショックを隠し切れない人もいた。

でも多くの人達は、桜城の劇的な勝利に酔いしれていた。


【凄い試合だったわ!こんなユニゾンが見れるなんて、思いもしなかった!】

【ユニゾンだけじゃないわ!戦略でイーグルスの個人技に勝って、仲間達との連携でタコの化け物を倒したもの!】

【でもやっぱり、このユニゾンだよ!何が凄いって、BランクとCランクが、Aランク2人のユニゾンを倒しちゃったことだ!】

【魔力が多い方が勝つって訳じゃないのね…】


目の前の劇的な逆転劇に、観客達は信じられない!と声を上げる。

それは、私も同じ思いだ。

彼らはただ勝っただけじゃない。私達に見せてくれたんだ。ファランクスは札束で殴り合うスポーツじゃないって。異能力は魔力が全てじゃないって、そう見せてくれたんだ。


『劇的な勝利を飾った桜城の選手達が、フィールド中央に集まります!勝利を決めたスズカ選手とブラックナイト選手を取り囲み、勝利を分かち合い…おおっと!なんてことだぁ!ユニゾンまで決めた功労者の2人を、空高く放り投げ始めたぞ!いや待て、これはあれか!?ジャパニーズMIKOSI(ミコシ)か!?』

【聞いたことあるぞ!日本人はお祭りで、木で出来た小さな家を担ぐんだ!】

【その家同士でぶつかり合うってのも聞いたことあるわ!】

【これが、日本のフェスティバルなのね!】

【人まで担ぎ上げるのか、日本は!】

【興味深い文化だわ!】


お客さん達が戸惑う。

私も戸惑う。

人を空高く投げ飛ばし、それをキャッチする。なんか、背徳的な行為に及ぶ桜城の選手達。

でも、鈴華の表情はとても楽しそうで、放り投げられる度に掛けられる「ばんざーい!」という掛け声も何処か、お祭りの雰囲気を醸し出している。

見ているこちらまで、明るい気持ちになって来るお祭り。勝利の舞いだ。


「俺は良いって!部長を!海麗先輩を!みんなも上げるべきだ!」


ただ1人、ブラックナイト君だけは遠慮しているみたい。必死に手を振って拒否しているけれど、結局は数の暴力の前に空へと放り投げられる。

でも、彼も楽しそうだ。高く上げられる度に、手をバタバタさせているから。


「「ばんざーい!ばんざーい!」」

【【【バンザーイ!バンザーイ!】】】


2人が高く宙を舞う度に、観客席からも掛け声が上がり始める。それは直ぐに広まり、会場中のみんなが彼らと共に両手を上げるようになる。

桜城の勝利を、奇跡の瞬間を、みんなでお祝いする。


【セレナ・シンガーさんですね?】


私も一緒になって両手を上げていると、大会スタッフと共に、見慣れない制服の女の子達が近づいてきた。

赤い制服に紺色のストライプが入った落ち着いた制服の2人組。しかも、片方は黒髪のアジア人だ。

誰だろう?見覚えのない人達だ。もしかして、カトリーナさんが雇った刺客?

嫌な予感がして、私は顔を強張らせる。すると、もう片方のプラチナブロンドの子が、黒髪の子の眉間をチョップした。


【はい。笑顔だよ?千鶴。セレナさん怖がってるでしょ?】

「や、やっています」

【出来てないってぇ。眉間に皺が寄りまくり。ハロウィンでも子供が逃げるレベルだよ?】

「…我々は護衛なのですから、少し怖いくらいが良いんです」

【護衛対象を怖がらせてどうすんのさ】


小さくため息を吐いたプラチナブロンドの子は、私に笑顔を向けて来る。


【怖がらせてごめんね?私達は大会運営から依頼された貴女の護衛です。これから閉会式のセレモニーがあるんで、その準備をお願いしに来ました】

「この大会が終わるまで、我々が護衛に付きます」


ああ、そうだった。この後の閉会式で歌う約束だった。

でもそれは、大会運営との取り決めであり、DP社との間で取り決められた契約だったはず。DP社との契約は、ハーフタイムショーで契約違反を犯したから解除されたってマネージャーさんが言っていた。だから、セレモニーの話も無くなったと思ったんだけど…。


それを彼女達に聞くと「詳しくは聞いておりませんが、大会運営委員はプログラム通りに進めるみたいです」と返されてしまった。

それって、どうなんだろう?また彼女達が何かを企んでいて、私を利用しようとしていたりしないだろうか?

そんな疑心が生まれて、私はフィールドの端を見る。

そこには、変わらず輝く青いエッグが聳え立ち、その足元で座り込むカトリーナさんの姿があった。彼女の手元には、分解されたオール・ユニゾンの装置が抱えられていた。


ショックで立てないのだろうか?

ボロボロの姿でへたり込む彼女を見て、少し可哀そうと思ってしまった。

でも、おもむろに立ち上がった彼女は、ミコシをしている桜城選手の方を睨んで、足早にフィールドを出て行ってしまった。

何かする気だろうか?桜城は、文句なしの勝利を収めたのだから、不正だなんだって言えないと思うけど。


【ほら、セレナさん。早くしないと】


カトリーナさんが去ったゲートを見詰めていた私に、護衛の子が急かすように手招きをした。

それに、私は諦めて、彼女達の後を着いていく。

これが、カトリーナさんの罠とかじゃなければ良いんだけど…。

長くなりましたので、明日へ分割致します(今度はミスなく)

ファフニールの磁力で、黒ス篇ライムが解体されました!

ですが、カトリーナ社長は根に持っている様子でしょうか?


「勝った!ムゲン篇完!…とはならなさそうだな」


イノセスメモ:

マグネター…地球の地磁気の数百億倍という、きわめて強力な磁力を持つ星。太陽の数十倍大きな恒星が超新星爆発を起こした後の残骸。

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― 新着の感想 ―
結局ユニゾンしたのは鈴華とだけでしたか……。カトリーナさんが強調していたのは、誰とでもユニゾンができる、ということだったので、てっきりみんなとのユニゾンをシリーズで出してくるのかと思ってましたが……。…
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