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下スマ、横スマ、崖シェフ、ジャッジ






「ベル!」


 リーファの鋭い声にも、僕は余裕。


 画面を見ずに、勘でゲムヲを動かす。

 

 相手は2機目の始動。

 数秒の無敵時間が付く。

 

 少しくらい、セオリーを知ってれば、その無敵時間を活かし、掴みに来て、最大火力を狙うはず。


 あの音は、炎獄握。


 黒い炎を引いて掴みに来てる…はず。

 僕はリーファたちを見たまま舌を出して、その場回避。

 相手は素人、当たったところで負けっこないから気が楽だ。


 モニターに目を戻すと、ほら、読み通り、ガノンが、ゲムヲをつかみ損ねてた。

 

ここからは、時間ギリギリまで、遊ぶつもりなので、僕は、弱スプレーの連打で相手に軽いダメージを与える。


 りょうちん、まともに戦っても勝てないって事くらいはわかったみたいだ。


 ゲムヲに背を向けると、降ってきたアイテムを拾いに走る。


 けど。

 

 残念、ガノンは足が遅い。


ガノンが台の上に乗った途端、下から、ラッパで吹き上げる。


 ゲムヲの技、見た目は間抜けだけど、どれもこれも、恐ろしく良く出来てる。


 元祖・害悪キャラのレッテルは伊達じゃない。


 その技で、プカプカ吹き上げ続けて、ガンガンダメージを稼げるけど、僕はあえて、技を中断。


 相手が落としたアイテムを拾って、崖の外に捨てる。


 後ろ髪を伸ばしてるりょうちん、怒りに任せて、大技を振って来るけど、ぼくは軽くかわす。


  ……あの髪型、なんで誰も注意してあげないんだろ、ダサいよって。

 

 家族仲、悪いのかな。


 そこから、簡単にフィニッシュまで持っていけるけど、それでは面白くない。


 逃げる相手を追いかけ、こかし、アイテムを奪っては、崖下に捨てる。


 下スマで埋め、追撃せず、放ったらかしにして、アイテムを拾っては、崖外に捨てる、舐めプを続ける。


「ベル、早く終わらせて」


リーファの硬い声。

チラ見すると、何故か表情も硬い。


 ぼくは、軽く眉を上げる。


 なんで?のジェスチャーだ。


 僕は気分が良くて仕方なかった。

 この野郎は、大事な仲間に、言わなくていいことを、好き放題言ってくれたんだ、この程度の実力で。


 現実は、原神のガチャ並みに厳しいって事を、教えてやんよ。

 

 リーファはもどかしげに唇を噛み、相手陣営に一瞬目を走らせると、横のナディアに耳打ちを始めた。


 わかる。


 これ、終わった途端リアル大乱闘かもね。

 

 だけど、バロチスタンでくぐり抜けた、銃と爆弾に囲まれた日々が、ぼくを怖いもの無しにしていた。


 相手のダメージは、102%、こっちは0%。


「りょう、本気でやれや!」


 向こうの父親が悔し紛れに喚く。

 

 いえ、本気でやってますよ、おたくの、りょうちん。


レスリングで自分の子供が劣勢の時の親達と全く同じ。

 

 ホントはこっちに怒鳴ってるんだ。


 ぼくは、更に楽しくなった。

 

 罪悪感は全く感じない。

 だってそうでしょ?

逆の立場だったらコイツラ、僕らに罪悪感、感じると思う?

 

 絶対、ここぞとばかりに、全員でディスってるよ。実際、そう言う事されたから、メグは泣いてたんだろうし。

 

 ドリャアをいなして掴み、ガノンを崖外に放り投げる。


 帰ってくるところを、間抜けなコック姿のゲムヲが、フライパンから食材を連続してまき、崖に摑まらせない。


 パン、パン、バン!


 崖シェフって言うハメ技なんだけど、音による、メンタルへのダメージが凄まじいんだ。


 130、150、180%


 チラ見すると、りょうちん、涙目。


 タチの悪い事に、この崖シェフ、バースト力は無い。


 だから、ガンガンダメージだけが蓄積していく。


 片手で頭を掻きながら、リーファの方を見ると、真剣な顔で、ナディアと話してる。


めぐは、マネジャーの横で、お腹を押さえて、ケラケラわらってる。よっぽど悔しかったんだろうなあ。


瀕死の魔王が、何とか崖に掴まり、攻撃上がりしてきた所をガード、上Bで跳ね上げる。パラシュートっていう、ゲムヲの代表技だ。

 

相手と一緒に、フワフワ降りて来ながら、ジャッジっていうハンマー技を振る。頭の上に、1から9までの数字がランダムに現われ、9が出たら、相手のダメージが低%でも、画面外に吹っ飛ぶ。


 残念、「1」だ。


 僕のゲムヲに14%のダメージがついた。


 後、いい忘れてたけど、僕のゲムヲ、キラキラ光ってる。いつでも切り札を使える状態だ。


 のこり30秒。


 予選は2分30秒しかない。


 もういっか。

 お腹空いたし。

 

スマブラSPでは、殴っても殴られても、切り札が使えるようになる。


 相手のガノンもキラキラ光り始めた。


 ガノンが、ソレを仕掛けようと、僕に近づいてきたところで、先に僕はBを押す。


 ゲムヲが手足を広げ、巨大なタコに変化。


 あっけにとられている、りょうちんのガノンを、あっという間に、画面外に連れ去った。


『GAME SET!』


 ハイになってた僕は、右横のりょうちんに向かい、横ピースでウインクをかます。


 やりすぎた。


「死ね!」

 

 完全敗北した相手は、真っ赤な顔でプロコンを、僕の顔に叩きつけに来た。

 ここまでやるか?


 でも、ある程度何かして来る予測はしてたから、腰を浮かしていたので、難なくかわす……


 前に、一歩出て来たナディアママが、その手首をキャッチ。


「随分、元気のいい握手ね?」


にっこり笑って、もう片方の手で、トートバッグから、リンゴを取り出し、ゆっくり齧った。


 次の瞬間、表情が険しくなったかと思うと、リンゴが握り潰され、爆裂した。


 それを見ていた僕らは、ナディア以外、全員ドン引きする。


 ナディアが慌ててかざした、トートバッグにボトボト落ちる、リンゴの果汁をガン見しながら、スタッフのお姉さんも、口を開けていた。

 

いや、リンゴ握り潰すって、どこのボディビルダー!? その握力で、パンチしたら、石で殴るのと同じ威力だよ? ナディアパパ、良く生きてたよね、今まで!


 ヤバイな、これ、僕らみんな失格とかありえるぞ?


 僕は煽り過ぎたのを後悔していた。

 調子に乗りすぎた!


 でも、リーファが硬い顔してた理由が分かったのは、次の一言だった。


 相手の親が言ったんだ。


「……これ、1回戦と別人やろ?」



 

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