魔夏の疫病神 序章
自分の、別作品のタイトルつかっちった
( ˙꒳˙ )
リーファのマンションの、天井は高い。
お偉いさんや、芸能人なんかも、住んでるとこだから、セキュリティも厳しいし、間取りも下手な一戸建てより広い。
アイツ、こんな広い家でボッチ同然な生活してたんだよな………本人のせいもあるけど。
色々あって、少しづつ変わって来た、相棒。
笑顔が以前より増えてきたのが、うれしい。
……ぼく、なんでこんな事考えてるんだろう。
そうだ、仰向けで、居間の天井眺めてるからだ。ぼんやり色々な事考えちゃうよね、寝転がってたら。
正確には、灯りの消えた、夜の天井じゃなくて………人型に切り取られた影だけど。
うん、決して、現実逃避してるわけじゃない。
華奢な影に、覆い被さられる僕ではあるけど。
………寒いくらいの空調。
コイツが、暑がりのせいだ。
口の中に、体温で、少しだけぬるくなったピーチティーが、流れ込んでくる。
頭が痺れて、理解が追いついてないけど、口の端から溢れそうになり、反射的に飲み込んだ。
僕に連結している唇が、動いた様な気がした。
笑いの形に。
二度、三度と喉が動いて……
ヤツの顔が離れる。
………なんで、僕は突き飛ばさなかったんだ?
口うつしされた、ピーチティーが、溢れるから?
急に動くと、口を切ってしまうかも知れないから?
多分、どれも違うけど……
これだけは言える。
好きだから、とかじゃない。
確かに……見てくれはいい。
コイツが履いてるニーソックスを景品にするだけで、全国から手練のスマ勢が集まるよ、きっと。
『俺、そんなの欲しく無いけど、ホラ、祭りだから』
とか、聞かれもしない、言い訳をしながらさ。
ぼく?
うん、スマ勢。
そうだな、『コイツの顔にかぶせたバスタオルに、ヤカンで好きなだけ、水を注いでイイ権利』とかが、賞品だったら、参加するよ、メインキャラで。
「……これ、ファースト・キスだよ、屋根ゴミさん」
米軍の拷問方法の妄想から覚めた。
金髪と、碧眼が、月明かりにきらめく。
……悔しいけど認めるよ。
コイツは、とびっきりの美少女だ。
何の感動もなく、無表情に、サトシの妹は言った。
「三股の修羅場に………ジャスミン参戦でーす」
〜数時間前〜
「うおおおおお!」
ギラつく八月の太陽で灼けた、小学校のグラウンド。
ぼくが、全力投球したボールは、友達の肩に当たると、空へ舞い上がる。
午後2時。
今日は校庭解放の日。
夏休みが終わるまで、1週間足らず。いつものメンバーでドッジボールをして、最高の時間を過ごしていた。
昼御飯食べてから集まって、かれこれ、1時間くらい、猛暑の中で、ボールをぶつけあっている。
もちろん、そんな気が狂った事をするのは男子だけ。
朝から、寝込みを襲ってくる、オリガでさえ、
「ロシア人に、日本ノ夏はキツイ! バロチスタンよりアツイヨ、ムンムンしてテ」
と言って付いてこなかった。
僕は、デスノートの八神ライトのようにほくそ笑む。
計 画 ど お り。
……スマン、オリガ。
男子には、こうしてしか吸えない養分があるんだ。
この後、スーパーで、1.5Lのスポーツドリンク買ってから、古本市場でデュエマをする予定。
ワクワクして、叫びたくなる。
これだ!
僕は、世界に向けて発信したかった。
幸せってこれなんだよ!女子、いらないじゃん?
「そろそろスーパー行こうぜ、なんか、頭ガンガンするわ」
同級生のジェイクが、ヤバイ事を言い出しても、みんなヘラヘラ笑ってる。
「走りすぎだっての……あ、俺もクラクラするかも」
「倒れたら、『話し合い』行きやしな、日陰行こーぜ」
監視役のPTAの人達も、あまりの暑さに、会議室に避難してて、時々覗きに来るぐらいだ。
みんな、ぞろぞろと、校庭端の、屋根がある、廊下に移動する。
めいめい、持ってきたペットボトルや、水筒で、ガンガン水分補給。
いまから、スーパーにいくから、飲み切ってもいいしな。
一息ついてから、スマホを確認する。
女子からのlineは、無視する気満々だったけど……
「ん?」
意外なヤツから、lineの着信があった。
通話の方で。
サトシだ。
アイツのチームの3人とは、lineを交換したけど、サトシから来たのは初めてだ。
うれしいっちゃ、うれしいけど……
なんだろ?
コールバックすると、すぐに出た。
「あ、俺、林堂。久しぶり……ってわけでもないけど、どしたん? ………え? リーファ? もちろん連絡つくけど……直接かけたらいいじゃん……あ、アイツラのline知らんのか。はーはー………は?」
ぼくは、ワイワイやってる、みんなから距離を取って、囁いた。
「ジャスミンが………帰ってこない?」





