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楽しくない、ゲームのススメ ~世界で イチバン 過酷な場所で~  作者: YOUKAN


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山あり谷あり






ジーワジーワと、駐輪場の植え込みから、聞こえるセミの声。


フリーズしてる、ぼくら3人。


 ナディアも、その発想は無かったのか、二重まぶたを大きく開けて、転がってるリーファをガン見してる。


で、当事者のぼくだけど……


這い登ってくる恐怖で、おなかの調子が悪くなってきました、ハイ。


レスリングの試合前とかの、上から、ずうううんって、重さがのしかかってくるストレスとは違う。


 理由のわからない、足許から登ってくる……

 どっちかっていうと、ホラー映画で感じるアレに近い。


 得体の知れない恐怖。

 その正体をさぐるべく、我々はジャングルの奥地へ……


「エロに負けた、だけだよね? ね?」


 飛ぶヒマなかったよ、ちくしょう。

 

 すがる様な眼をした、リーファを見て、ぼんやりと思った。


 なんか……結局、何しても許してくれるんじゃね……?


 逆をいえば……


何をしても、離れない?


 ぼくの頭を、小さな稲妻が貫通した。


 恐怖の正体、これだ。

 ジャングルの奥地に、飛ぶまでも無かった。


『「別れる」よりも、「別れない」の方が、遥かに怖い』


 ネットで見たセリフだし、『ギャルゲ経験、リアルっぽく語る、名無し乙!』

 って突っ込まれてたけど、ぼく、今リアタイで、経験中です。


「リー、いい加減にしんさい! 往生際悪すぎじゃ!」


「ナーに、言われたくないわ! そもそも、よく聞いたら、凛を、チチでハメただけじゃん! それ、好きと全然関係ないよね?」


 ナディアの、穏やかで、哀しげだった表情が、一気に燃え上がる。


「はぁん!? ハメるチチもないまな板が、なぁーに、ぬかしとる! 勝負下着で武装しちょる、チチの戦闘力、なめんな!?」


「ハッ、そんな飛び道具じゃ、私らの7年に、傷もつかないね! チチの谷間に、無理やり唇当てたくらいで威張んな!」


 やめて、お願い!


 別の階の、同じ登校班の奴らに聞かれたら終わりだから!


 ぼくの祈り虚しく、事態は坂を下り落ちる。


ナディアが、リーファの胸の辺りに、視線を落としてから、フッとわらった。


「リー……山がないと、谷はでけんのじゃ」


「ぶっ殺す!」


 立ち上がりざま、飛びかかろうとした、リーファを羽交い締めにする。


「てんめ、ふざけんな、このチビクロ! ずんぐりゲムヲの、お子ちゃまオッパイで、何が出来んだよ!?」


 リーファが振り回す、足が届かないとこで、ナディアが憎ったらしく、クチと目を縦長にして、煽る。


「はーい、残念、タッテましたー。凛のアレ、ギンギンでしたー、凛のママがズボン下ろした時、引っかかってましたー……ふぎっ」


 ズカズカと、玄関から出てきた母さんが、スリッパで、ナディアの頭をシバく。


 次々と、ぼくらの頭で、イイ音をさせてから、目を見開いて言った。


「……一体何を口走っとるんや、人んちの前で」


「「す、すみません」」


「下の階、同じ班の子おんのに……明日広まってたら、自業自得やで?」


 リーファと、ナディアが、蒼白になった。


 ぼくは、泣きたくなるのをこらえ、二人に言った。


「部屋、戻るぞ……手遅れかもだけど」




 さっきの洋間。


 膝を怪我してる、ナディアを椅子に座らせ、みんなさっきとおんなじポジション。


 冷房が効き始め、みんな、襟元をパタパタしてる。


 ……この部屋を出ていく前の、三倍は疲れた。

 ジンたちや、駄菓子屋、デュエマが恋しい。


 何でこんな事に……なんてもう言わないけど、大会終わったら、やりたい事一杯あったのに、何一つ、してない。


 ぼくは、改めて考える。


 なんで、あんな事したのか?


 裸で抱き寄せられた、ナディアとの事はともかく、リーファは、いつもみたいにじゃれついて来ただけなのに。


 ……考えはまとまらないけど。

 言うべき事は決まったかな。


「二人とも、聞いてほしいんだけど」


 二人が身じろぎする気配。


「正直に言うよ。何で二人に、あんな事したのか……わからない。だけど、あの時の気持ちは、思い出せる……かな。リーファ」


 腫れのだいぶ引いた顔を、ぼくに向ける相棒。


「ぼくのヒザにダイブしたりとか、色んなとこに、胸が当たるとか、何時もの事だったよな? グチも、その後のにらめっこも、全部。で……気づいたんだけど、リーファに迷惑かけっぱなしなんだよ、ぼく」


 軽く眉を寄せ、ぼくを見つめるリーファ。

 何が言いたいのか分からなさそうだ。


 そりゃ、そうだろう。

 ぼくだって分かってないもん。


「なのに、あの時……ぼくの膝で猫みたいな顔で幸せそうにしてた。それだけで、ご褒美もらえたみたいに。ずっと、苦労かけてるのに、文句も言わないで……それで……おかしくなったみたいだ」


 最後の苦しそうなぼくの言葉に、リーファが、驚く気配。


 ギシ……と、ナディアの座る椅子が静かにきしんだ。


「それから、ずっと悩んだ。相棒にそんな事するって、裏切りじゃないかって。次の日も。いっつも、レスリングで、触り慣れてるのに、あれから、手と頬に残った柔らかさが、ずっと消えなくて……困ってた」


 リーファが、目をそらして、真っ赤な顔を、両手で覆った。泣いてる。


「スゴく……うれしい」


 ぼくは、恥ずかしかったけど、頑張って言った。


「それと、ナディアに正直に言ったから、リーファにも言う。ぼく……リーファの泣き顔、スゴく可愛いって、ずっと思ってた」


 リーファは、じゅうたんにへたり込み、声を上げて泣いた。


「横で……自分以外の女、褒めてるの聞くのは……キツすぎるの……」


「ナディア」


静かに、ぼくは、泣いてる同級生に呼びかける。


黒髪ボブは、褐色のかかった、泣き顔を、ぼくに向けてくれた。



 


 

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