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勝つのは







「リーダー、任せたよ?」


 リーファがナディアに続いて、僕とハイタッチ。


「任せられた。行ってくる」


 反対に、相手のチームは、お通夜みたいだ。


 サトシは胸を押さえて、まだ、しかめっ面をしてるし、席に戻ったカレンも、まだ、呆然としている。


 気遣う様にアケミ(37)が、二人をのぞき込んでいた。苦労の耐えない女子だなあ……


 僕は、胸を突き上げる、鼓動を無視してモニター前に座る。サイドテールの眼鏡っ子も、そっと隣に腰掛けた。


 僕は、モニター上のSwitchから伸びる有線プロコンを手に取り、キーコンフィグを設定する。


 ジャンプボタンの位置なんかを、自分に向きに、設定するんだ。


 アケミのGCコンの設定を、ぼんやり眺めてて、ん?って思った。


 ………メッチャ変な設定だ。


 ᒪボタンがジャンプで、Xボタンがシールド?


 普通と逆だ。


 ………ん?


 ……あれ?


 どこかで……


 実況に指示され、元気のないアケミ(37)と握手を交し、モニターに、向き直った。


 考えるのは後だ。


 メグ達からの声援を聞き流しながら、呼吸を整える。


 始まる。


『3,2,1…Go!』


 僕はゲムヲ、アケミは、前の試合と同じクラウド。


 ステージは、ウーフーアイランド。


 浮遊する足場に乗って、ウーフーアイランドの様々な場所に着陸する。


 クラウドは、ファイナル・ファンタジーに出てくるかっこいい剣士。


 復帰以外弱点のない、強キャラだ。


 僕の使うゲムヲは、リーチが無いから、剣キャラ、キツイんだよね。


 僕は流れに任せ、何も考えず、滑るように向かって来る、クラウドを迎え撃つ。


 大剣を振り回し、剣から放たれるビームを、バケツで吸収する、ゲムヲ。


 ゲムヲは、基本相手の攻撃を、ガードして差し返す、待ちキャラだ。


剣で『凶』の文字を描く『凶斬り』をかわし、ジャンプと急降下しながら剣で斬る、『クライムハザード』を回避し、下スマを合わせて、ふっ飛ばす。


 とにかく勝つんだ。


 僕は殴り合いにこだわらず、アイテムと、アシストフィギュアを、駆使してアケミ(37)の体力を削る。


 掴んで上投げ、ラッパで下から吹いて、クラウドのダメージ、100%を突破させた。


 クラウドの大剣をかわし、マンホールめくりで、バースト。


『3-2』


 ……やってみて分かったけど、幸薄そうなこの眼鏡っ子は、強かった。


 強い技を振り続けるだけの、ブッパに見えたけど、そうじゃなかった。


 僕相手には、キッチリ嫌がるコトをやってから、ここぞという場面でスマッシュを打ち込んでくる。


 今までの相手が、そんな事をしなくても勝てる相手だった………


じゃなくて、アケミ(37)が、それだけ強かったんだ。


 変化するどのステージも、わりに平地の多い、殴り合いに向いた場所だったけど、僕は無理せず、アイテムを絡めて、クラウドを追い詰める。


 クラウドは、ゲムヲより足がずっと早いので、アイテムゲットには向いてるけど、どちらかと言うと、アケミ(37)は、殴り合いの方を好んだ。


見た目と逆で、血の気多いのかな。


 ……ただ、なんだろう。


 この違和感。


 そう、アケミ(37)の動きが、しっくり来てない気がしてならない。


 ………どうでもいい。


 僕は、その考えを追いやった。

 

彼女と闘うのはこれっきりだろうし、調子が悪いのなら、僕にとってはチャンスだ。


 この試合、どうしても勝ちたい。


 ゲムヲのピーキーな技に慣れてきたのか、隙を突かれ、クラウドの『画竜点睛』でトバされ、『2-2』になった時は内心、かなり焦った。


 ………けれど


 ぼくは、バチバチに殴り合いながら、テンションが高まるのを感じた。


 喰らった。


 喰らわせた。


 かわした。


 勝つのは………


 再び、クライムハザードをかわし、下スマで埋める。


 フルホールドで、横スマを溜め………

 

心の中で絶叫する。



 勝つのは俺だ!



 マッチで点火、バースト。


『Game Set!』


「よし!」


 背後で、リーファ達が、拳を突き上げる気配。


 観客席では、うさ山さんたちが、飛び跳ね、メグが、キャーキャー叫んでる。


 天を仰ぐ、アケミ(37)、深呼吸している、サトシと、それを覗き込む、カレン。


 これで、2勝。


勝ち越した!


 あと一勝。


……サトシを倒せば、全国大会だ!


 ………


 でも。



この後、僕ら全員、大きな勘違いに気づくことになった。

 




 

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