表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/1119

由々しき事態ですわ





『一戦目、勝ったのは、『バーニング学園・お嬢様部』のバーニングさとし選手!パーフェクトゲームで決めました!』


 ……ぶふっ


 僕らは、蒼白になりながら、不覚にも笑わされてしまった。


「お嬢様部て………メッチャサムライ顔……ぼほっ」

 

 試合を終えた、さとし選手を見て、ナディアが、吹き出し、リーファが、くッ、とかいいながら、顔を逸して、口許を覆う。


 アイツ、試合前の格闘家みたいな顔のまま、パーティーでかぶる、安っぽい三角帽に、丸い鼻眼鏡を掛けたんだ。


 しかも。


 呼吸に合わせて、両耳のところから、吹き戻しがピロピロと伸びたり丸まったりするヤツだ!


 真面目くさった顔と背筋を張った姿勢が、たまらなくアンバランス。


 こんな力業……笑うなって方が無理だろ!?

 明日、ゲムヲが、ナーフされるって言われても、笑うわ!

 

 観客席から、爆笑が起こり、握手を求められた選手でさえ、ショックを隠せないながらも、それに笑って応えてる。


 普通、おちょくってる様にしか見えないはずなのに……


 なんか、カッ、カッ、シャキッ、って感じの動きにイヤミがなく、次に控える選手や、セッティング係のキレイなお姉さんでさえ、笑っている。


 リーファが、ナディアを振り返って、鋭く言った。


「笑ってる場合じゃないよ、クララ………その手で勝てる?」


 いや、アンタもわろうてましたやん。

 僕もだけど。


 ナディアが、痛みに顔をしかめながら言った。


「笑うと、傷に響くのう……言いたくないけんど………無傷でも、キツイ」


「…………だよね」


 ぼくは、最初から、試合を見てなかった事を後悔した。もう少し情報が欲しいとこだけど、配信を巻き戻してる場合じゃない。


 さっきも言ったけど、普通、1番目の選手より、二番目の方が強い。


『2戦目、スマブラ突撃隊からは、クマ選手!バーニング学園・お嬢様部チームからは、カレン班長・一日外出券選手!』


 ………カイジやん


元ネタを知ってるスマ勢達から、大爆笑が起こる。


「ちくしょう……ちくしょう……」


 リーファが俯いて、震えている。

 ナディアまで唇を噛んで!?


 いや、知ってるんだ、それにビックリだよ!


 笑いの波状攻撃に、僕らは必死で逆らう。


 マジで、笑わされてる場合じゃない!

 心の底で、重い石を呑んだ様なストレスと焦りを感じながら、僕は次の選手たちを見た。

 

 相手のスマブラナントカチームだって、二人目はもっとバカ強いかもしれない。

 

 スマブラナントカチームの二人目は、メガネをかけた、大人しそうなヤツだった。


 問題の方のチーム、二人目は……


 不機嫌な猫っぽい、メッチャオシャレな女子だった。


 ボーダーのニーソックスに、ベレー帽、ミニスカートからは、ショートパンツと、長い足がのぞいていた。


 互い違いの長さのオカッパ頭は、ブロンドで、ダルそうに細められた瞳は碧眼。


 身長は、ナディアより小さいかもしれない。


 ただ、ブカブカのᎢシャツにデカデカと描かれた、半泣きでビールを飲むカイジが全てを台無しにしてる……


 コイツもまた、ロックなヤツだった。


 巨大なゴシックで書かれた、


『犯罪的なッ………うまさッ………!』


 の文字にナディアがこらえきれず、しゃがみこんだ。


「あかん……なんで、配信で、あのTシャツが着れるんじゃ……」


「すみません……元ネタ全くわからなくて……」


 メグは、オロオロしてるだけ。

 いや、オマエがフツーだよ。


 幸運なことに、相手はハンチョウを知らなかったみたいで、緊張した顔のまま、ダルそうなカレン選手と握手しただけ。


 ………この大会、圧勝しても、僅差で勝っても、星が一つ付くだけだ。

 もちろん、それは大事なんだけど、次の試合と前の試合は、何も関係ない。


 2試合目がはじまった。


 クマ選手はリンク、カレン選手は、ネス。


 リンクは、『ゼルダの伝説』の主人公で、飛び道具が、メインのキャラ。

 

 ネスは、復帰とリーチの無さが弱点だけど、強力な火力を誇る、ガキンチョキャラだ。


 結論から言えば、リンク使いは大した事ない選手だった。勿論、上手いんだけど、小学生にしては、だ。さっきのジョーカーに、比べたら全然甘い。


 けど、カレン選手は手練だった。


 燃やして掴み、また、燃やしては、空中に放り投げて着実にダメージをためる。


 リンクは広いステージを利用して、飛び道具で対抗するけど、バットで上手く打ち返され、逆にダメージを喰らってる。


 ……リーファと同じくらいの実力か。


 僕は嫌な気分になった。


 こんな事、考えたくないけど………


 一戦目、ナディアが勝つのは、かなり厳しい。

三戦目、僕が勝てるとしたら、二戦目のリーファ、カレンの闘いで、優勝の行方は決まる。


 3先だから、例えばリーファが勝っても、4戦目に出てくるのは、サトシってやつだとして………


 僕は世界がぐにゃりと歪んだ気がした。


 僕が、5年生以降、初めて感じた 恐怖。

 

 スマブラで、誰かに負けるかも、じゃなくて、『コイツ』に負けるかも、は同じ小学生に対しては記憶にない。


 僕は、サトシ選手に勝てるだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ