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閑話 妖精との旅路。エングランツ公国の王の間。その1


      おっさんが公国に到着する三日前。


「まだか。まだ、ルド・ロー・アスはこんのか?!」


 公王の住まい、白く美しい城として名高い雪花城の王の間に、公王の慟哭が響き渡った。


「公王陛下、落ち着いて下さいませ。玉音水晶にて、イスルカ王国にルド・ロー・アスの派遣を要請したばかりですぞ。それに、さすがに距離が‥‥直ぐにとは行きますまい」


「大臣、落ち着いてられるか! 

 時がたてばたつ程、シャウードは‥‥」


「公王陛下‥‥」


 玉座に腰掛けながら項垂れる公王に、大臣はかかる声が無かった。


「陛下! 公王陛下!」


「何だ騒々しい! 静かにせよ!」


「はっ、申し訳ありません。しかし、ユスス大臣。イスルカ王国から玉音水晶により報せが!」


「「「「なんと?!」」」」


「イスルカ王からは何と?! はよ言うのだ!」


 公王は玉座から立ち上がり、イスルカから報せを持って来た兵に詰め寄りそうな勢いで問いただした。


「貴方‥落ち着いて下さいな」


 突然、背後から公王を諌める女性の声が。公王は振り向くと、両手を広げてその女性を迎えた。


「イザベラ!」


「「「「公王妃様!」」」」


 柔らかな笑みを浮かべ、公王妃は玉座の横に並んぶ、自分の椅子にふわりと腰掛けた。


「イザベラ。落ち着けと言われても‥‥」


「騒いだ所で、どうにかなるものでもありませんよ貴方。

 それで、イスルカ王は何と?」


「そうだ! イスルカ王は何と!」


「あ‥‥はっ、はい! なんでも、ルド・ロー・アス殿が、公国からの報せを聞き、イスルカの王都を出発し、公国に急ぎ向かったとの事です!」


「「「「「おぉーー!!」」」」」


 ルド・ロー・アスが来る。来てくれる。その希望に、王の間には歓声が響く。大臣や官僚達だけでなく。公王、公王妃も喜んだ。

 ルド・ロー・アスのおかげで、公国に救われる希望が見えたからだ。


「し、しかし、イスルカからとなると‥‥大臣、王都から公国までどれ程かかる?」


「はい。‥‥イスルカから、それも王都となると‥‥。

 馬を乗り継ぎ急いでも、二週間は‥‥」


「‥‥そうだな。それだけかかるであろうな。

 兎に角、ルド・ロー・アス。彼が来てくれる、と言うだけでも有り難い」


「そうですね貴方。それで‥‥ルド・ロー・アス殿は、今どの辺りに? イスルカ王国とエングランツ公国の国境‥‥アメリア領辺りでしょうか?」


「さすがに、それは無いであろう。出立したばかりであろうし‥」


「そう‥‥ですわね」


 公王と公王妃が語り合う中、イスルカからの報せを報告しに来た兵が「あの、それについてなのですが‥‥」と割って入った。


「なんじゃ? どうしたのじゃ?」と大臣が兵に目を向ける。

 公王、公王妃も視線を向けた。視線が集まった事で、兵は一瞬たじろいだ。


「あ、あの、えーと」


「何だ? はっきりせよ!」と、モジモジする兵に公王が声を荒げた。


「は、はい! 冒険者ルド・ロー・アスとのなのですが‥‥その」


「えぇーい! さっさと言え!!」


「ルド・ロー・アス殿は、その、ヴィルム海底洞窟を通ってくるとの事です!」



「「「「「はぁ?!!!」」」」」


 王の間に居た全ての者が、目をまん丸にして驚き声をあげた。


「ヴィルム海底洞窟とは、あのヴィルム海底洞窟か?! 確か、王国と公国に繋がっているかも‥‥とは聞いていたが、大臣!」


「はっ、確かに繋がっていると報告は受けております。それに‥‥確か、それを確認したのもルド・ロー・アスだったかと」


「‥‥‥な、なるほど? と、兎に角、ヴィルム海底洞窟を通って来るのか。しかし、ヴィルム海底洞窟を通ると何なのだ?」


「あ、あの、公王陛下。イスルカの報せによると‥‥ヴィルム海底洞窟を通れば、近道になるらしく。馬で二十日の行程を、短縮出来るとの事です」


「「「「「何と?!」」」」」


「公王陛下!!」


「うむ、大臣!! これは、本当に希望が見えて来たぞ!!」


「はい!」


「貴方、直ぐにでもヴィルム海底洞窟のあるオルコス領に!」


「あぁ! 人をやり、ルド・ロー・アスを迎えねば!!

 オルコスに兵を! ルド・ロー・アスを出迎える準備を!!」


「「「「「はっ!」」」」」



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