妖精との旅路 アウスバウ領に向かうまで
「やっと出たぁー!!」
「出たのですー!!」
ふう、久しぶりの太陽だ! やっぱり、外の空気はうまい!
「やっと出れたのです。それで、ルド様。これから、どうするです?」
「そうだな。まずは、近くにある冒険者ギルドへ顔を出す。報告したい事があるからな。ここからは人間も多くなる。エリエルは、できるだけ其処で大人しくしててくれ」
「分かったのです」
まずは、近くにある冒険者ギルドへ向かう。エングランツ公国側の、ヴィルム海底洞窟の近くには、海専門の冒険者ギルドがある。
海専門と言うだけあって、大海原へ繰り出して、海の魔物を狩る。
俺も、何度か依頼を受けた事があり。其処のギルドマスとは顔見知りだ。
エングランツ公国オルコス領港街ポートス。
「ここも変わってないな。美味そうな魚がたくさん並んでやがる」
「見てみたいのです!」
「うーん、じゃあ、少しだけ頭出してな。それと静かにだぞ」
「はいなのです。うわわーー! お魚いっぱいなのです!」
「エリエル、声が大きい」
「あわわ、なのです」
ここも変わらんな。ここポートスは、変わった港町だ。
ここにいる漁師は、なんと冒険者も兼任しているからだ。
海の魔物を狩る、専門の冒険者達の集団。見た目は海賊みたいな連中だがな。
「おっと、ここだここ」
「どうもー!」とポートスの冒険者に入ると。ギロリといっせいに睨まれた。相変わらず、人相の悪い連中ばかりだ。
「ギルマスは居るかい?」とギルドの受付嬢に声をかける。
「あら、ルドさん? お久しぶりです!」
「久しぶり。えーと、フラーラ」
「うふふ。クラーケン討伐以来ですから、かれこれ四年‥いえ、五年近く経ってますか?」
「そんなにたってるのか? まあ兎に角、ギルマス頼む」
「はい。少々お待ち下さい」と受付嬢はカウンターから立ち、奥への部屋に向かう。一分と立たないうちに「がっはっはっはっ」と聞き覚えのある笑い声が。
「よぉー! ルドー! 久しぶりだなぁー!」
「相変わらずだな。ギルマス」
相変わらずデカイ声だ。それに、見た目が熊の様で大きい。
あまりに大きな声に、ポケットのエリエルがビクッとしたのが分かった。
「がっはっはっはっ! オメェも相変わらずそうだ! でっ!
何かあったのか?」
「何かあったのか? って! 公国の、シャウードの迷宮で何かあったと聞いて来たんだよ! 何でギルマスが知らねぇんだよ!」
「がぁーはっはっはっ! 知ってるに決まってんだろ!
しかし、うちのギルドに所属してる連中じゃ、役に立たん!」
「だよな。冒険者とは言え、ほぼ漁師だもんな。ここの連中は」
「がっはっはっは! そうなんだよ! がっはっはっは!」
うるさい。その笑い声、久しぶりに聞くと本当にうるさい。
「はあー。おっと、報告があるんだった」
「ん? 報告?」
「あぁ。ヴィルム海底洞窟を抜けてきたんだが‥‥」
「相変わらず、とんでもねぇ奴だ。ヴィルム海底洞窟を、近道に利用するのはオメェくらいだぞ!」
「いいから聞け! ヴィルム海底洞窟なんだが‥‥ダンジョン化してたぞ」
「‥‥‥はぁ?!」
「だから! ダンジョン化してたって言ったんだ! 取り敢えず、何かしら対策しとけよ。まあ、ダンジョンに成り立てだから、直ぐに危険、と言う事は無いとは思う。‥‥多分」
「はぁ?! ちょっと待て! ダンジョン化?! ヴィルム海底洞窟がか? おいおい‥‥待て待て! 俺、ダンジョン管理なんて出来ないぞ? 俺は、元漁師の冒険者で、そんなの‥‥」
「そんなの知らん。そっちで何とかしろ。兎に角、報告はしたぞ。じゃあ、俺は先を急ぐから‥‥」
「待てルド! 手伝え! 手伝ってから行け!」とギルマスは俺を止めるが「そんな暇あるか!」と一蹴する。本当にそんな暇は無い。
「公国のギルド本部から、人を送ってもらえ! 後、ダンジョン探索に特化した冒険者もな。まだ、完全にダンジョン化してないから何とかなるって! 気ぃーつけてなぁー、じゃあーなー!」
「ルドーーーーー!!」
俺は逃げるようにギルドを後にした。こんな所で喋ってるのも惜しい。急ぐぞ!
漁師町の町中を駆け、俺はシャウードの迷宮があるアウスバウ領
へと向かうであった。
◆◇◆◇◆
「お耳が痛いのです!」
「ギルマスの声がデカくてうるさかったからな。えっほえっほ」
漁師町から離れ、ポケットに入っていたエリエルは、外に飛び出て、俺の横を並走するように飛行していた。相当うるさかったのか。今も耳がキンキンするらしい。
「えっほえっほ。このまま行けば明日、いや、明後日には着けるかな? いや、明日までには着くぞ! えっほえっほ!」
「ルド様は速いのです! エリエルも着いて行くので精一杯なのです!」
「無理しないで、ポケットに入っていても、いいんだぞ?」
「頼りっぱなしはダメなのです! エリエルも頑張るのです!」
「そうか。でも、無理はするなよ!」
「はいなのです!」
「ん? 何だ?」
数百メートル先に、人間の気配を察知するおっさん。
「んーー、野盗か何かか? エリエル、ポケットに入ってくれ」
「はいなのです?」
「さて、行きますか!」
「今日の獲物、こねぇーすねぇー」
「最後の獲物はいつだっけか?」
「1週間からだー前か?」
「そんな感じ?」
「おい、おめぇ等! シャキッとしやがれ!」
「そう言っても親分」「獲物こねぇーんじゃな」「だよな」
「まったく、オメェ等は!」
「おやぶーーん! 何かきまーーーす!」
「ああん? 何が来たんだ? 商人か?!」
「いえ‥‥あの」
「はっきりしねぇーか! 馬鹿野郎が!」
「男一人っす」
「んだよ。男かよ、それも一人。たいして金は無さそうだな」
「いや、そう言う問題じゃ無くてですね」
「ああん? 何だってんだ? 稼ぎ以上に大事な事はねぇーだろーが!!」
「いや、その」
「何だ!!」
「男が物凄い速さで走って来るっす」
「はあ? どれだ?」
「あれっす」
子分の一人が、砂煙を上げて爆走してくるおっさんの方を指差した。
「何だありゃあ‥‥」
「ヤバイっすよ親分! こっちに来るっす!」
「「「「「「うわぁーー! 逃げろぉーーー!」」」」」」
「ば、馬鹿野郎! 逃げんじゃ‥‥」
『ドゴーーーーーーーーン!!!』
おっさんはまったく速度を落とさず、野盗を轢いていった。
野盗達は、数十メートルの高さまで吹き飛び、そして‥‥。
「がふぁっ!」「ぎゃふ!」「ぐばはっ!」「げふっ!」
「ごぼはっ!」と落ちて地面に衝突し、変な声をあげていた。
「な、何が‥‥おき、起きた?」ガク‥‥。
「凄いのです! 吹っ飛ばしたのです!」
「途中の村か町の衛兵に、野盗の事を知らせておくか。えっほえっほと」
この後おっさんは、目的地のアウスバウ領に着くまでに、何十という野盗を轢く事になる。
野盗に襲われていた者達の証言。
その1野盗に襲われていた若者。
「俺は見た。突然、何かが野盗を轢いていったのを!」
その2野盗に苦しむ村の長老。
「わしゃー見た。村を襲っちょった野盗が、突然起きた砂煙と共に、天高く吹っ飛ばされたのを!」
その3野盗に拐かされそうになった女性。
「私は見たの。野盗に拐かされそうになって、もう駄目かと思ったその時、野盗が吹っ飛ばされて、木にぶつかってたの。
あれは一体、何だったのかしら?」
その4野盗が大勢捕まって、仕事に追われる衛兵。
「走る男が、野盗が倒れてると教えてくれて、行ってみると本当に野盗が倒れていたんだ。あの男は一体何者?」
「小さな村から、野盗を捕縛したと報せが来て、行ってみると本当に捕まえたんだ。あの村人達は、元冒険者か何かなのか?」
「俺の付き合う彼女が、野盗に襲われたと聞かされ、俺は急ぎ彼女の元に向かった。そしたら、野盗は捕まって彼女から何故か折檻されていたんだ。まさか、彼女が倒したのか?」
「何がどうなっているのやら‥‥俺には、もう訳がわからん。たった一日で、大勢の野盗が牢に連れてこられ、もう、パンク寸前だ。
誰か教えてくれ! 何がどうなっているんだ?!
砂煙の男とは何なんだ!」
おっさんは、ただ走るだけで、新たな伝説を作ってしまっていたた。




