妖精との旅路 ヴィルム海底洞窟編 その4
謎の魔物との闘いは・・・・呆気なく終わった。
「弱い。せいぜい、Cランクだな」
オッサンにぶん殴られて、地面にめり込む魔物。その光景は思わず、魔物に同情をしてしまいそうになるほどだった。
「ルド様強いのです。でも・・・・なんか可哀想なのです」
地面にめり込み、ピクピクと動く魔物を見て、エリエルが同情していた。
まだ、完全にダンジョンかしてないからか。強さはそれ程でもない。成長途中といった具合だ。
それにしても・・・・何故急にダンジョン化し始めたんだ?
「ルド様、どうかしたのです?」
「ここが急に、ダンジョン化し始めた事が気になってな」
「おかしいのです?」
「おかしい・・・・のかな? ヴィルム海底洞窟は、正直、何時ダンジョン化してもおかしくは無い場所ではある。でもそれは、昔からだ。何百年、何千年も前に、ダンジョン化しておかしくない筈なのに、何故今になって・・・・」
「えーと、よく分からないのです」
「俺も分からん」
兎に角、今考える事は・・・・ダンジョン化を阻止するかしないかだ。この、迷宮の主のなりそこないを倒し。何処かにある、ダンジョンコアを完全破壊すれば。ダンジョン化は阻止可能だ。
でも・・・・新たなダンジョンは、危険でもあるが富ももたらす。
俺の勝手な判断で、破壊すべきでは無いよな。
「おし、放っておくか」
「よいのです?」
「あぁ。新たな迷宮の誕生を、俺が反対するのもおかしいしな」
「ルド様がそう決めたのら。それでよいのです。エリエルは、ルド様にしたがうのです」
と言う事で、ヴィルム海底洞窟のダンジョン化は放っておく事に。オッサンは気づいていないが。ダンジョン化を引き起こした原因の一つが。オッサンによる、ヴィルム海底洞窟蹂躙によるものだと言う事を、オッサンが知ることはない。
「おーーし、一気に行くぞ! エリエル」
「はいなのです!」
オッサンは気づいていない。あくまでオッサンは、ダンジョン化の弾込めをしただけ。けっして引き金を引いた訳では無い。
即ち、このヴィルム海底洞窟に、ダンジョン化させてしまう、大きな要因となった存在がいる事に。
『コツコツコツコツ』
「後、もう少しで海底洞窟を出られる」
「やっとなのです。暗くてジメジメで、もう飽きたのです」
「確かにジメジメだよな」
ヴィルム海底洞窟の、既に七割五分は超えた。後、数時間で出口に着く。エリエルは、安心し切って胸ポケットから出ている。
今は肩に座っている。時折、天井から落ちる雫が直撃して、頭びっしょりになっていた。
「へくちっ」
「風か? エリエル」
「ここはずっと涼しいのです。ちょっと冷えたのです」
「ははは。・・・・でも、直ぐに暖かくなるさ」
出口に向かい。洞窟は斜め上に伸びている。もう直ぐ出られると、オッサンもエリエルも気持ちをはやらせた。
その光景が目に入るまでは・・・・。
「何だこりゃ」
「これは、なんなのです!」
オッサンは驚いた。何故なら目の前に、途轍もなく長くてデカイ
蛇? らしきものが、とぐろを巻いていたのだ。
「何だコイツ? それに・・・・前来た時、こんな広い場所無かったんだが。まさか、コイツが本当の迷宮の主なのか? アレ? この妙な気配は何処かで・・・・」
「ルド様!」
「うおっ!」
ムチの様にしなる尻尾が、突然襲ってくる。オッサンは難なく回避。エリエルも、オッサンにしがみついて何とか大丈夫だった。
「迷宮の主じゃない。コイツは、間違いなく外から来た奴だ。
それも・・・・この妙な気配。
アウダマの森で感じた奴と一緒の奴か!」
巨大で長い体を、白銀の蛇はゆっくりと起こす。
オッサンを、簡単に一飲み出来てしまう大きな口を開け。
「シャーーー」と唸り、舌をレロレロと動かした。
「る、ルドしゃま」
「エリエル。胸ポケットに入ってろ」
「はいなのです」
「まったく、急いでるってのになんでこう出会すんだ!」
・・・・いや、まさか! 俺が通る事を見越して、あの連中が?
だとしたら公国での騒ぎは・・・・まあいい。
どうであろうと、倒すだけだ!!
「こい!!」
「シャーーーー!!」
『ガギィーーン!!』『ドゴーーーン!!』『バキィーーン!』
「くっそかてぇーな!」
巨大な蛇の鱗は、鋼、いやミスリル並みの硬度があった。
大剣で蛇に斬りつける度に、オッサンの手が痺れる程に。
「うびゃーー!! あひゃーーー!! 目がまわるのれすー!!」
「エリエル。もうちょい我慢してくれ!」
「はいなのれすーー!」
思った以上に、素早いし硬い。ムチのような尻尾が厄介だし。
それに・・・・奴の牙。多分、独特とかある「かもぉーー!!」
『ドゴーーーン!!』
「くそ! 厄介な尻尾だぜ。エリエル、生きてるか?」
「大丈夫なのれす?」
接近戦でたたかうには不利すぎるな。奴のリーチの方が、圧倒的に長い。いっそ事・・・・こっちも遠距離戦で行くか? 弓・・・・は弾かれるな。よし、久々に魔法による遠距離攻撃で仕留めるか。
オッサンは、大剣を背に戻し。マジックバックから杖を取り出した。長さは80センチ程で、杖の上部には、丸い魔石がはめらていた。
「それじゃあ早速・・・・エアブレイド×3!」
蛇に向けられた杖の先から、大気を切り裂く刃が放たれる。
『キィーン、キィーン、キィーン!!』
エアブレイドを食らった大蛇は、まったくの無傷だった。
「シャー」と唸り、オッサンを威嚇する。
「やっぱ硬いな。でも、お前は・・・どれだけ耐えられるかな?
エアカノン×100!!」
『ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!』と凄まじい連射で繰り出される空気砲。白銀の大蛇は、地面に押しつぶされるように、土煙の中に消えた。
『ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!』
「・・・・やった・・・・わけねぇか」
「シャーーーー!!」
本当に頑丈だな。風系じゃ無理か? 正直、相性が悪そうだ。
「うおっ・・・・よっと!」
『ドゴーーーン』
火? 水? それもと土か? いや、ここは雷だ!
大蛇の攻撃を躱しながら、魔力を溜めていく。
精神を集中し、魔力を杖の魔石、一点に集める。
そして・・・・「サンダーボルト!!」
『バリバリゴロロゴロバリリゴロロロォォォォォ!!!』
杖先から放たれた、轟く稲妻が大蛇を襲った。
雷に打たれた大蛇は叫んだ。体表面を焦がし、体内を走る雷に、体の中をズタズタに裂かれ、叫んだ。
「うおぉぉぉあぁぁぁぁぁ!!!」
オッサンは、その魔法を発動し続ける。恐らく、オッサンの勘では、そう簡単に死なないと判断したからだ。オッサンはそのまま、十秒以上、雷を名放ち続けた。
「・・・・今度こそやったか?」
オッサンは近づいて、杖で軽く突いてみる。反応は無い。
「死んだか? ・・・・ふう、まったく。何なんだよ一体。
コイツ・・・・回収して調べてもらえないかな?」
コイツ、なんか気になる。しかし、回収したらしたで。厄介事にならないか? ・・・・・ここで完全に消し去る方がいいかもな。
「終わったのれすー?」
「あぁ。蛇は倒した。けど、もう暫くはそこに居てくれ」
「はいなのれすー」と、まだ目を回しているエリエルは答えた。
「よし、じゃあやるか。素材が勿体ない気もするが、念の為だ。
・・・・灰となり、塵となって土へと帰れ。ヘルフレイム」
『ボォーーー!!』と大蛇が黒い炎に焼かれる。
焼けた側から、灰と塵になって消えていった。
「これでよしと。エリエル! 先を急ぐぞ」
「はいなのです!」
オッサンは、出口に向かって駆け出した。




