竜玉とオッサン、パックン事件
「と言う事で、竜爺は・・・・」
「そうですか・・・・ありがとうございます。ルド・ロー・アス」
妖精の里に帰還し、大精霊様に竜爺の最後を説明していた。
「ぐすん、竜爺ちゃん」
「エリエル、泣かないで」
「エリエルー」「泣くなー」「竜爺ー」「悲しいよー」
エリエルは、ユミアと他の妖精達に慰めてもらっていた。ただ、エリエルを慰めるのは良いが、エリエルが俺の頭の上で悲しんでいるため、妖精達がわらわらと、俺の頭に集まって来ていた。
ちょっと酷い言い方だが・・・・なんか、ライトに集まる虫みたいだな。
「あっ、そうだ! 大精霊様、コレを・・・」
「なんでしょう? あら、コレは・・・・」
「はい、竜爺の竜玉です」
「竜爺?」「竜爺だ!」「竜爺なの?」「竜爺っぽい」
今度は頭ではなく、オッサンの竜玉を持つ手に、わらわらと妖精達が集まってくる。
「うーーん、ちょっといいかしら?」
「あっ、はい」
大精霊様に竜玉を手渡すと、大精霊様は竜玉を顔に近づけ、竜玉を覗き込む様に見つめていた。すると「うーーん、うーーん」と、大精霊様は唸って悩んでいる様だった。
どうしたんだ? 竜玉がどうかしたのか?
「あの、どうかしました?」
「うーん・・・・その方法がありました」
オッサンが、大精霊に言葉を投げかけると。大精霊はオッサンをじーーっと下から上に見上げ、なんか思いついたらしい。
「ん?」
「うふふ・・・」
妖しい微笑みで、こちらに微笑む大精霊・・・・なんだ?
「手を出してくださる?」
「手? こうか?」
右手を大精霊の前に出すと、オッサンの手をサワサワスリスリと確かめ始める。・・・・なんか、いやらしい手つきだな。
「ちょっと、チクッとしますよ」
「へっ? あ痛!」
「きゃっ! だ、大精霊様?!」
オッサンの人差し指に、針で刺した様な痛みが走る。なんと、大精霊にパクッと噛まれた。軽くチューッと吸い、口から離すと同時に、オッサンは手を引っ込めて確認する。すると、指の先から僅かに血が出ていた。パクッの光景に、ユミアも思わず声をあげた。
「ちょっと、何するんですか!」
「ちょっと、血を貰いました」
「うふふ」と妖しく微笑んで返す大精霊。
・・・・一体何が目的だ? と言うか、大精霊は吸血鬼か?
「そう心配しないで下さい。ちょっと必要だったのです」
「必要って、大精霊様は吸血鬼か何かですか?!」
「うん? 吸血鬼? 面白い冗談です」
「面白くないですよ。一体なんの・・・・つも・・り・・・・って!」
オッサンは驚いた。何故なら、話ている最中に、大精霊が竜爺の竜玉を丸呑みしたからだ。ゴルフボールと、野球のボールの中間くらいの大きさの竜玉を、ゴックンと呑み込む大精霊。その光景は、言葉にならない。
よく呑み込めたな、結構大きいのに・・・・いや、そんな事より。呑んじゃったぞ、竜玉・・・・。
「えっ? ええぇぇ? ちょ、ちょっと! 何やってるんです!」
あまりの光景に、さすがのオッサンも慌てる。
「うふふ、大丈夫です」
何がどう大丈夫だと言うのか? プチパニック中のオッサンには「何言ってんだこの大精霊」とポカンとしていた。
「フォレストドラゴンの竜玉と、貴方血を取り込んで、新たな命を生み出すのです。私の体内で、竜玉と貴方の血、そして、精霊の霊力の三つが混じり合う。そうする事で、この森の新たな守護者が誕生するのです」
「「はい?」」
オッサンとユミアは、互いに顔を見合う。「何言ってるの?」とオッサンが顔で訴えると、ユミアは「わかりません」という顔で返す。
「うふふふ。簡単に言うと、貴方と私の子供みたいな感じです。うふふ♡」
「「はあっ?」」
とんでもない爆弾が投下された。オッサンとユミアは、一体何がどう言う事なのか分からず、立ち尽くしていた。そんな中、エリエルが・・・・。
「ルド様ー! おめでとうなのです!」
「「「「「「おめでとう」」」」」」
妖精達から、おめでとうと祝ってもらうオッサン。
ありがとうで言いのか? ・・・・って、んな訳あるかーー!!
「えっと・・・・ルド殿。おめでとう?」
「おい、ユミアまで何言ってやがる!」
「あはは、そうですけど、私には何がどうなっているやら」
混乱するユミアは放って置き、大精霊に詰め寄るオッサン。
「あの、大精霊様?!」
「うふふ、なんですか? あ・な・た」
「やめて下さい。その意味ありげな呼び方!」
「うふふ。落ち着いて下さいな」
「落ち着けませんよ、こんな事態で・・・・」
あぁーー、どうすれば・・・・。
「まあ、貴方がこの子に会う事は無いでしょうが」
「?」
「この子が生まれるのは、少なくとも数十年は先ですから」
「いや、だからって、はいそうなんですかと納得出来ませんから」
リュリュティアに続いて、新たな子供を授かるオッサン。何故、こう意図せず子供を授かるのか? と自問自答に耽るおっさん。
「あっ、そろそろなのです!」
考え込むオッサンの頭の上で、エリエルが突然叫んだ。
「エリエル。何がそろそろなの?」
「帰る時間なのです! ユミア、ルド様」
「「帰る時間?」」
「はいなのです」
「確かに、エリエルの言う通りね」
大精霊も、空を一瞬見つめ、エリエルの意見に賛同した。
「人もエルフも、この場所に長くは居られないの。そろそろ帰りなさい。木になっちゃうわよ」
「「木・・・・」」
はっ! 確か・・・・妖精の悪戯で木にされるって昔噺があったな。
お袋に聴かされたけど、アレってマジなのか? 案外、昔噺には、教訓みたいな物が多いから、マジな物があるのかも・・・・。
「ユミア、帰るか」
「はい」
「エリエル、送ってさしあげて」
「はいなのです!」
「それじゃあ・・・・えーーっと、お大事に?」
「大精霊様、失礼します」
「またいらっしゃい。歓迎するわ」
大精霊はそう言うが、オッサンは正直、あまり来たいとは思わなかった。
「じゃあ飛び込むです!」
「「やっぱり・・・・帰りも同じか」」




