オッサンと戦姫
たまの休みなので、ソファーでゴロゴロしてたが、ニ時間程で飽きてしまった。
「あぁーーーーーー、・・・・暇だな」
あっ、あそこの天井部分、木目が人の顔みたい・・・・・・何やってんだ俺?
・・・・・・・働き過ぎた弊害かな? 暇だと落ちつかない。
「んーーー、んーーー」
ソファーのクッションに顔を埋めて、思いっきり叫んでみた・・・・特に意味は無い。
「剣の手入れでもするか」そう呟くと、クッションを放り投げ、ソファから立ち上がった。
武具関連は、一部屋まるごとを専用の部屋にしていて、俺のコレクションが納められている。
少なくとも、四カ国を旅してきた。剣は国によって形や用途が違う。別に収集癖は無いのだが、魔物や状況に対応すべく、武具がどんどん増えていった。その結果、部屋一つを占領するまでになった。
「えーと、手入れ道具の入ったバッグは・・・・コレだな・・よいしょっと、後は・・・・昨日使ったコイツだな」
立て掛けてあった大剣をヒョイと持ち上げ、手入れ道具が入ったバックを肩にかけ、テラスに向かった。
椅子に腰掛け、丸テーブルにバッグを置いて、剣を両手で持って太陽の光りに照らして確認する。
刃が欠けてないか? 錆は? 金属疲労で割れが発生してないかなど、入念におこなう。
「大丈夫そうだな。それにしても、コイツとの付き合いもだいぶ長いな」
もっとも長く愛用しているこの大剣、鍛冶屋のドワーフのおっちゃんに、頼みこんで作ってもらった逸品だ。少量のミスリルと、アダマンタイトを含ませた特注品。この剣を作るのに、貯めてお金の大半を注ぎ込んだ。
あの後、暫く食を切り詰めたっけなぁ〜。受けるクエストも、危険度の高い高報酬のものを受けたっけ。
そう言えば? あの辺りからだったか、仕事の依頼が増えだしたのって?
・・・・もしかして、この剣を作ったが為に、俺は奴隷のように働いていたのか? いや結局、依頼を受けたの俺だしなぁ・・・・。
そもそも、来る仕事の殆どが貴族やお偉いさんばっかりってどうなの? 断れないものばかりだったよね。・・・・やっぱ引退しようかな。
オッサンは自問自答しながらも、剣の手入れを続けていた。
そんな時『ドンドンドンドン』とドアを叩く音がした。
・・・・まさか・・いやいやいやいや・・・・もしかして、そのまさか?
『ドンドンドンドン』
「ルド殿ー! ルド殿ー! 居りませぬかー!」
この声は! ・・・・誰だ?
エバンさんじゃないよな? 女性の声だし。
「ハイハイ、居りますよー」
玄関に小走りで向かい、扉を開けるとそこには・・・・銀色の鎧を見に纏った女性騎士が一人立っていた。更にその後ろでは、二十人程の女性騎士が馬車を囲み警護しているようだった。
「またこれか・・・・」
「貴殿がルド殿ですか?」
「えーと、そうですけど」
今度は何だ? もしかして・・・・断った事を殿下が怒って
「断るとは何様だ!! 極刑に処す!!」とかだったりして・・・・まさかな。
「少々お待ち下さい」そう言うと、女性騎士は馬車に走っていった。馬車のドアの前で止まり、何か話している。どうやら、馬車の中の人と話しているみたいだ。
ん? おっ、話が終わったか? 女性騎士が右手を挙げた。すると、他の女性騎士達がいっせいに動きだす。
陣形を変えた? あっ、誰か出て来た。あれは・・・・エバンさん? ん? まだ出てくる。
あれ? あの女性は・・・・美人だな。あっ エバンさんが畏まってる。エバンさんより偉い人? 女性騎士の護衛に、エバンさんより偉いってまさか・・・・・殿下?
そう、馬車から出て来たのは紛う事なき戦姫こと、
クシャーナ・ネイノーク・イスルカ殿下だった。
あっ、こっち来た。正直、何を言われるのか・・・・ちょっと緊張して来たな。それにしても美人だなぁ。
「久方ぶりだな、ルド・ロー・アス殿」
「えっ? 久方ぶり?」
「もしやお忘れですか? 十年前、ヨウドの森で起きたモンスターパレードを鎮圧した際の祝勝パーティーでお会いしました」
「パーティーで? んーと、えーと」
「本当にお忘れで?」
うっ、この顔で涙目、上目遣いは破壊力ありすぎ!
「姫様、仕方ありませんよ。当時はまだ八つでしたし」
「うー、しかしリサーナ。いや、そうか、そうだな。確かに小さかったからな」
うっ、何か罪悪感が・・・・でも覚えてな・・・・ヨウドの森?
「あっ、確かおやっさ、いえボルナーク将軍の主催パーティー?・・・・もしかして、将軍の横にいた女の子?」
「思い出したか! そうだ、あの時王族として皆を労う為に参加したのだ! 思いだしてくれたか!」
凄い嬉しそうな笑顔だな。それにしても・・・・なんと見事な。俺の目の前には、嬉しいのかぴょんぴょん跳ねる殿下の見事な胸が・・・・上下に揺れていた。
「姫様、はしたないですよ」
「姫殿下、良かったですな」
「うむ!!」
あの殿下、そんなに胸を張らないで。殿下の胸が強調されて、凄い事になってるから! 心を無に、心を無にするんだ俺!
「あの、それでどういった御用で?」
「あぁ、エバンから話を聞いてな・・・・本当にすまない」
「あ、あの殿下? 頭をあげて下さい」
「しかし、あの様な者を・・・・あ奴は厳しく罰するから許して欲しい。本当にすまない」
「別に殿下の所為ではありません。それに、もう終わった事ですし」
「ルド殿がそう言うなら・・・・」
ハァ、王族に頭下げられるって、生きた心地しないなぁ。
それに、前屈みになると胸が・・・・無心になれ! 無心になるのだ! 俺!
「では、これでこの話は終わりって事で・・・・」
「うむ、では次の話を」
えっ、まだあるの?
「謝罪とお詫びの意味を込めて、今日の晩餐会に是非来てくれ!」
結局こうなるか・・・・。
「是非、来てくれルド殿!」
ハァ、こうなるんだ。
「殿下、ルド殿は既に晩餐会には不参加と・・・・」
おっ、エバンさんよく言った!
「だが、ルド殿にお詫びをせねば、王家の恥となるではないか」
「確かにそうですが・・・・」
おい、負けるなエバンさん!
「姫様、そんな無理を言っては、ルド殿がお困りになりますよ」
「私は別にルド殿を困らせるつもりは・・・・」
「上位の存在である姫様が、直接来てくれと言われては、言われた方は困りますよ」
「なっ、そうなのか? ルド殿! すまん。またしても失礼を」
「いえいえ、お気になさらず」
ナイス! ナイスだ女性騎士の・・・・リサーナさん?
よし、これで晩餐会は回避できる。
「ところで、ルド殿は何故不参加なのです」
「へっ?」
おいこら! 何で急にこっちに振るんだ。えーと、どうしよう。単に行きたくないじゃ駄目だよな。
「えーと、晩餐会に着ていく物も無いですし、いきなり呼ばれても・・・・マナーなど、どうすればいいのか分からないですし」
「何だそんな事か、服はこちらで用意しよう。それと、マナーは気にしないでくれ、参加者の多くは軍関係者だからな。ルド殿と同じ冒険者も、何名か参加するぞ」
「・・・・・・・・」
「ルド殿、姫様もこう仰ってますから参加されては」
「そうですね、殿下がここまで仰ってる訳ですし。ルド殿是非ご参加を」
逃げ道が塞がれて行く。これ断るの無理だな。
「ルド殿・・・・」
あう、殿下! その顔禁止!・・・・・・・・あぁぁぁもうー、出りゃいいんだろ! 出れば!!
「ハァ、分かりました。参加しますよ」
「おぉ、来てくれるかルド殿!! 姫殿下、良かったですね」
「うむ、ではルド殿、午後の六の鐘が鳴るまでに城に来てくれ」
「ルド殿、こちらを」
リサーナさんが、クルっと巻かれた紙を手渡してきた。
「これは?」
「晩餐会の招待状です。本来ならこちらが先に来るのですが、ルド殿は急遽参加する事になったのでこちらを」
いや、別に行きたい訳じゃないからね。断れるものなら断ってるよ。仕方ないなぁ、みたいな雰囲気ださないでもらえる?
「では、ルド殿。城で待ってるいるぞ」そう言って殿下は帰っていった。
晩餐会に出る前に、どっと疲れた。
ハァ、行きたくないなぁ。オッサンは心からそう思った。
誤字などがありましたらご報告ください。
少しでも面白いと思ったら☆を下さい。




