表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/66

オッサンと山脈の主 その1


「なぁフィオ? ここって、結構危険地帯だよな?」


「ふえ? はい・・・・そうですぅ。一様、Aランク以上じゃないと入れないですぅ」


「リジー、油断は禁物だよ」


「でも姐さん、コレだよ!」


「「「「・・・・・・・・」」」」


 皆の前には、ベゴン山脈へと真っ直ぐに道が続いていた。木々が生い茂る魔の森に、不自然な程の道が通っている。その光景に、皆何も言えない。


「ルド殿、一つよいか?」


「何でしょう殿下」


「この道は何なのだ?」


「何だと聞かれましても、道としか・・」


「いや、何故道があるのかと聞いているのだ」


「えーと、十年以上行き来してるからですかね?」


「行き来しただけで道が出来たと・・・・」


「「「「「・・・・・・・・」」」」」


 皆黙り込んだ。重い空気の中、リサーナが口を開いた。


「ルド殿は、正真正銘の化け物だったのですね」


「「「「・・・・・・・・」」」」コクコクと黙ったまま、その意見に同意しますとばかりに、皆首を縦に振った。


 何故そうなる。十年以上行き来すれば道くらい出来るだろ。獣道みたいなもんじゃん。


 オッサンは心外だなと、内心思った。しかし、其処にあるのは獣道などとは比べられないものだった。幅六メートルの、舗装はされていないがとても平坦な道が通っていた。


「ルド、どうやったらこんな風になるんだい」


 マリーダが呆れた様子で聞いてきた。


「どんなって、普通に歩いていただけなんだが? ただ、偶に魔物が襲って来るから、それを返り討ちにしたぐらいだぞ?」


「成る程、魔物を薙ぎ払いながら森も薙ぎ払ったと?」


 殿下がふむふむと納得していた。何をどう納得したんだ?


「姫様、この道を利用すれば、ベゴン山脈一帯を開拓出来るのでは?」


「確かに、この道があれば人を大量に送り込めるな」


「あっ、殿下。それはやめた方がいいかと」


「ん? どう言う事だ?」


「ベゴン山脈一体を治めてる主が、黙って無いですから」


 アイツ、そうゆうの五月蝿いんだよね。

 

「しかし、ルド殿はその主を倒せるのでは?」


「殿下、確かに倒せます。ですが、倒したらベゴン山脈一帯が無秩序になってしまいます。統率する者が居なくなったら、魔物がベゴン山脈一帯から溢れ出ます。比較的近い領地や王都は危険にさらされますよ」


「・・・・・・・・確かに、ベゴン山脈一帯の魔物が溢れたら王国は終わりですね。姫様、ベゴン山脈の開拓は無理そうですね」


「ふむ、開拓して得られる利より失う利の方が多いか」


 殿下とリサーナが、考え込む様に答えた。王国に仕える者として心配なのだろう。こう言った問題はどの国も抱えている。何せ大半の国に魔物の領域があるだ。その一つからでも魔物が溢れれば、壊滅的打撃となってしまう。


「まぁ、安心しろリサーナ。ベゴン山脈の主は、比較的仕事してるし」


「なぁルドさん。主って仕事するのか?」


 耳をヒョコヒョコしながら、リジーが聞いてくる。


「リジー、主が仕事なんてする訳ないですぅ。ルドさんの冗談ですぅ」


「そうだよな? 魔物が仕事なんてする筈が・・・・」


「いや、するぞ」


 俺の反論にリジーの耳がピクっと反応した。フィオも「ふえっ!」と反応した。

 

 ふむ、かわえぇのぉ〜ワンコ。オッサンは生粋の犬派である。


「ルド、主が仕事ってどう言う事なんだ?」

 

 ミスリル製の戦斧を担いだマリーダが、意味が分からんと言った感じで聞いてくる。


「主ってのは強ければなれる訳じゃない。魔の領域は魔力が溢れていて、主はそれを調整する役目を負ってるんだ。領域にある地脈から、吹き出す魔力の間欠泉を調整して均衡を保ち、魔の領域一帯の安定をはかってる。主も意外に、大事な役目を負ってるんだ」


「「「「「へぇーー」」」」」


 みんな感嘆の声を漏らした。リジーは「ルドさんすげぇ」

と笑い。フィオは「そんな話、聞いた事ないですぅ」と俺の話をメモしていた。マリーダは唯「へぇー、詳しいな」とそこまで感心が無いようだ。リサーナは「Sランク冒険者となれば博識ですね」と頷き、殿下に至っては「さすがはルド殿だ!」と目をキラキラさせていた。


 ・・・・殿下の眼差しが眩しい。


「ルド殿は、その様な知識を何処でお知りになられたのですか?」


「まぁ、仕事をしている内にな。それに、ファルガスのじいさんが色々教えるから覚えちまっただけだ」


「ファルガス様直伝ですぅ!」


「そんな大層なもんじゃ無いが・・」


「ルドさん! 少しは自分のおかしさに気づいてくださいですぅ」


「「「「「うんうん」」」」」


 みんな、確かにという顔で頷いた。


 おかしいとは何だ! おかしいとは! 俺は単に物知りなだけだ。ファルガスのじいさんのような、学者バカじゃ無いし。


「話はさて置き、急いだ方がいいんじゃないか? 道がある分歩きやすくはあるが、歩きながら話す時間はないぞ」


「そうだな、マリーダの言う通りだ。殿下、リサーナ。少し急ぐが大丈夫ですか?」


「ふむ、ルド殿。気にするな。妾とて戦姫と呼ばれるなりに鍛えている。リサーナも、妾の近衛隊の中では一番の実力者だから大丈夫だ」


「はい、姫様の言う通り問題ありません。伊達にルド殿の妹弟子ではありませんから」


「なっ、狡いぞリサーナ! 妾もルド殿の妹弟子なのだぞ」


「ですが、私より一日遅くですから」


「ぐぬぬぬっ、たった一日でわないか」


「たった一日でも、私が先です」


 ・・・・あのぉ〜、その辺でお願いします。


「じゃあ、行きますか?」



「「「「「はい!!」」」」」


 

 俺達は先を急ぐ為、走り出した。かれこれ、三時間は走っている。チラッと、右横を走る紅き三ツ星を見ると。さほど、苦も無い様子で走っている。だが、左側を走っている殿下とリサーナは、少し疲れが見える。


 そろそろ、休憩を挟むかな? いや、夜営の準備かな? 空を見ると陽が沈み始め、西の空が赤く染まっている。


 ちょうどこの辺りだったよな? あの木。あっ、あった。



「よし、みんな! あの木の下で夜営しよう」



「「ハァ、ハァ、ハァ」」


「殿下、リサーナ。これでも飲んで」


「かたじけないルド殿」


「ありがとうございます。ルド殿」


「「ん、ん、ごくん・・・・プハァー」」


「生きかえるな」「生きかえりますね」


「所でルド殿、何故この木の下なのだ?」

 

 殿下は尋ねつつ、白い葉をつけた木を見上げた。


「私も気になっていました。この木は一体?」


「この木は・・・・「魔物を寄せつけない聖樹、オプリの木だよ殿下」


 俺が答えようとしたら、マリーダが割って入って来た。


「旅の時に役立つ、冒険者の豆知識ですぅ」


「こいつの下なら、安心して眠れるんだよねぇ」


 ・・・・俺の出番を取られた。殿下は「そのような木があるのか?」と首を傾げ。リサーナは「冒険者の方々は、私達が知らない知識をお持ちなのですね」と感心していた。


「・・・・取り敢えず、テントを張って夜営の準備をしようか。それと、夕食の準備を」


「はいですぅ」


「はーい」


「妾も手伝うぞ」


「テントなら、軍事訓練で張りなれてます。手伝わせて下さい」


「それじゃあ頼む。マリーダは薪の準備を、俺はその辺で何か狩ってくる」


「あぁ、分かった。美味い奴にしてくれよ」


「居たらな」



☆☆☆



 フィオとリジー、それと殿下にリサーナは、テントの準備を始めた。


「フィオ、そっち持って」


「はいですぅ」


「姫様、そうではなくこう・・・・」


「こうか?」


「いえ、こうです」


「うぬぬ、こうか?」


「はい、そうです」


 リサーナは兎も角、殿下はテント張り何てした事無いよな。王女様だし。


 さて、何か狩ってくるかな。


 道から森の中に入って百メートル程歩くと、いきなり巨大な鹿に出くわした。


「おっ、コイツは・・・・美味い奴だ!」


 オッサンは、シュバっと目にも止まらない速さで動き、一瞬にして鹿の首を斬り落とした。


「ふう、いい奴に出くわしたな。後は・・・・おっと、血の臭いに寄って来たか」


 暗い森の奥から巨大な狼の群れが、唸りながら近づいて来る。他にも、赤毛の大猿や木々の隙間から見える空に、黒いハゲワシの姿が見えた。


「夜営地に戻る前に、片付けるか」


『ドガーーーン、ドバーーーン』


 オッサンと魔物の激闘。いや、蹂躙が始まった。


「ルドの奴、派手にやってるな。フィオ、お湯を沸かすから水袋を取ってくれ」


「はいですう」


 フィオは、肩にかけるタイプのマジックバックから水袋を取り出して、マリーダに渡した。マリーダは集めた薪に火をつけて、ポットに水を注いでお湯を沸かし始めた。


「あの、大丈夫でしょうかルド殿一人で」


「妾達も加勢した方がいいのでは?」


 淡々と、夜営の準備続ける紅き三ツ星。そんな中、リサーナと殿下はオッサンを心配していた。


「大丈夫っすよ。ルドさんなら全然平気」


「そうなのですぅ。心配するだけ損なのですぅ」


「放っておけばいいさ。ルドはこの辺りを良く熟知してるようだし大丈夫だよ」


「「・・・・・・・・」」


「あっ、音が止んだ。終わったみたい。何か美味い奴が取れたならいいけど。ねっ! 姐さん」


「この辺りの魔物の分布が分からん以上、どんな物を持って来るか分からんぞリジー」


「硬いお肉は勘弁ですぅ。後、ゲテモノも嫌ですぅ」


 オッサンの心配ではなく、オッサンが取って来る物に心配する紅き三ツ星に、この程度は何の問題にもならないのだと少し安心するのだが、殿下とリサーナは戸惑ってしまう。


「おーい、大物取れたぞ」


『ドサッ』と、担いで運んで来た巨大な鹿を降ろしたオッサン。地面に降ろした鹿を見て、紅き三ツ星は驚愕した。


「「「森の王!!! キングディア!!!」


「何てもんを狩ってくるんだルド!」


「ルドさんが狩りに行ってから十分と経ってないのに・・・・化け物っす」


「ルドさんはおかしいですぅ。非常識ですぅ」


 おい、折角取って来たのにそれは無いだろ!


「マリーダ殿、この鹿は凄いのか?」


「殿下、凄いなんてもんじゃ無いよ。Aランク以上の力があり尚且つ、Sランク並みの出逢わなさと逃げ足だ。ここ三十年は狩られて無い筈だ」


「ほう、さすがはルド殿だな」


「はい姫様。さすがルド殿です」


「なぁ、マリーダ。ここ三十年狩られて無いって言ったが、俺、この森で十頭は狩ったぞ?」


「はぁ? だが、ギルドにキングディアが持ち込まれたって話は聞いた事ないぞ?」


「そりゃ、持ち込んで無いからなぁ」


「はぁぁぁぁ?」


 何故睨む? 売る売らないは俺の勝手だろ?


「あのルドさん、もしかしてですぅ。他にも、色々持ち込んで無い物があるですぅ?」


「まぁ、あるっちゃーあるな。後、別に隠してた訳じゃ無いぞ? 老後の備え的な?」


「いや、ルドさんは備える必要無いでしょ。稼ぎまくってるんだから」


 リジー、備えは必要なのだよ。異世界なら尚更・・。


「もう、この話は終わり! メシにしようメシに!」


「そうだな。ルドが折角ご馳走を取って来た訳だし。メシにしよう。フィオ、火を頼む。リジー、キングディアを捌くの手伝え」


「マリーダ、血抜きはしといたぞ。夕食は俺が作ろう」


「ルドさんのご飯! 久しぶりですぅ」


「ルドさん手料理かぁ、久々だなぁ」 


「じゃあ、料理はルドに頼むよ」


「おう、任せとけ!」


 独身生活が長いオッサンは、料理が得意だった。


 


 ☆オッサンが料理を作っている頃、王都のお城では・・。




「何じゃと! ベゴン山脈を突っきるじゃと!」


「はい、私も馬車で途中まで送る際に聞いたのですが、どうやらそのようです」


「陛下! 直ぐに後を追いかけた方がよいのでは!」


 危険地帯を突っきって行くと聞かされて、陛下と大臣は顔を真っ青にしていた。


「そのぉ〜、しかも殿下の護衛を、リサーナ殿以外を置いて行きました」


「「なにぃ!!」」


「どうしましょう陛下! そもそも、エバン殿も何故止めなかったのですか!」


「申し訳ありません。姫殿下が問題無いからと」


「陛下! どういたしますか?」


「んーむ、まぁ落ち着け、大臣よ。王国一の冒険者がついておるのだ。心配あるまい。それに、何かあれば・・・・。」


「成る程、あの計画を・・」


「そう言う事じゃ。とは言え心配じゃの」


「そうですね。あの者が居るとはいえ」


「ルド殿がついておりますし、大丈夫ですよ陛下、大臣」


「そうじゃの」


「えぇ、そうですね」



 

 ☆王都で三人が語らっている頃、ベゴン山脈では・・・・。


      ベゴン山脈の中腹の洞窟。


「この匂い、これは彼奴の! ふわーはっはっは! 今度こそ! 今度こそ奴を!!」


 巨大な何かが洞窟が這い出て、暗くなった空を見上げた。


「くっくっく、よい月だ。今宵こそ彼奴を倒し、この地一帯の主としての誇りを取り戻すのだ!!」


「ぐおおぉぉぉぉぁぉぁぁぁ」


 

 ベゴン山脈に咆哮が轟いた。



誤字などがありましたらご報告ください。

少しでも面白いと思ったら☆を下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ