70日目~99日目。
70日目。
フレックスさんとの馬車の旅。
途中で合流したセシリアさんと一緒に魔物退治に励む日々。
77日目。
馬車でゆっくり移動してた所為で、10日も掛かってしまった。大体俺が拠点にしてた街から、さらに西へ7日ほど。空を飛んでいけば3日程度の距離だ。
学校に到着した途端、何だかんだで冒険者組みなる組に配属されてクラスに案内された。
割と快活な連中が集まっていて、なんだか街の食堂を思い出す。
今日から寮生活です。
78日目。
この学校、ホワイトリンドブルムという名前らしい。
基本的には冒険者を育てるための学校で、各種武器の扱いを初め、基礎的な学問、冒険に必要な基礎知識、薬草学やサバイバル学、基礎的な魔術からその発展と、様々な知識を広めているのだそうだ。
因みに基本的には冒険者の学校であるものの、此処から国の騎士団に仕官したり、なんていうのもアリなのだそうだ。
俺が所属することになった冒険者組というのは、その中でも最も冒険者育成に傾いたクラスだ。つまり、魔術師クラスほどではないがある程度魔術も勉強するし、武術やサバイバルの技術なんかも勉強する。
因みに科目は選択制で、俺は魔術系の授業を多めに選択しておいた。
何せ魔術師を名乗っているくせに、俺の扱える攻撃魔術は未だに三つという少なさ。正直泣ける。
79日目。
魔力や魔術にも色々種類があるらしい。
個人が保有する魔力をオド、大地や星が持つ魔力をマナと区分。
魔術も、術式を行使する術式魔術、言霊に力を持たせる詠唱魔術、精霊に魔力を代価として力を借りる精霊魔術とか。他にも召喚とか憑依とか傀儡とか、いろいろあるらしい。
因みに、術式の適性を授業で検査してもらえるのだが、俺の結果は全てにボチボチというなんとも悲しい結果に終わってしまった。
あの目玉、本当に魔力だけ寄越しやがったらしい。どうせならそういう才能も寄越せというのに。
80日目。
女の子に絡まれた。いや、普通の意味で。
騒がしい女だった。金髪パーマの、自称魔導騎士見習い。
なんでも購買で買った青結晶は、本来自分が買うはずの物だったのだから私に譲れ云々。
阿呆かと斬り捨てたら決闘を挑まれた。
尚更馬鹿らしかったのだが、結局何故か明日決闘する事になってしまった。
面倒くさいが、逃げる事もできなさそうだ。
仕方ないので、今晩は手持ちのローブにちょっとだけ手を加えてから寝る事にする。
晩御飯は寮母さんの手作り。ウマー。
81日目。
どうやらあの金髪、校内では有名な金髪らしい。決闘に使うという話だった闘技場には、俺達以外にずらりとならぶ観客。正直ファイトマネーを払えと。
試合に関しては、結構熱かった。
何せ俺の魔銃が基本的に効かないのだ。魔導師の名前はダテではないらしく、放った弾丸は全て障壁で弾かれてしまった。そうやっている間に金髪は俺に近寄り、手に持ったサーベルで斬りかかって来るのだから洒落にならない。
で、結局どうしたかと言うと、空を飛んで上空からファイヤーボールを連射してやった。
といっても直撃は障壁で弾かれるので、わざと外れた場所で魔術を爆発させ、その衝撃波で思い切り翻弄してやったのだ。
向こうも空に魔術を放って必死に迎撃しようとしてはいたのだが、何分空中の敵と言うの乃対処をするのは難しいらしく、かなり見当はずれな方向にばかり飛んでいった。
その上衝撃波で徐々に体力を削られていった金髪は、そのうち目を回して倒れてしまっていた。
物凄く力押しではあったものの、勝利は勝利だ。これで絡んでこなくなる事を切に願う。
82日目。
無理でした。さらに絡まれています。
再戦を挑まれているのは回避したものの、何故かあの金髪のパーティーに強制的に参加させられてしまいました。
教師に聞いて見た所、「彼女の手綱を取れた人間は君ぐらいだから」とか。
そんなに傍若無人してるのか金髪。
あ、因みに金髪の名前は、エレイン・ノーム・マクシミリアム。侯爵令嬢とか。爵位ってよくわからんが、偉いんだろうか。
83日目。
この学校には、登録したパーティーでギルドの依頼をこなす事で、授業の点数に繋がる、というシステムが存在している。
で、何故か金髪のパーティーに組み込まれた俺は、何故かそのパーティーで指揮官っぽい位置に居座る事になってしまっていた。
因みにパーティーメンバーは俺を含め、金髪ことエレインと、エレインの数少ない友人である魔術師の、天然ちゃんことシーファ・マクスウェル。シーファの幼馴染でデフォルト騎士スタイルの純朴少年、サム・ミズラヒの四人。今までは三人がメインで、後はたまに個人を誘って一緒に行動していたのだとか。
まぁ、要するに。冷静に指揮を取れる人間がいなかった、と。
エレインはごねたが、主にシーファがエレインを押さえつけて、気付けばそんな役割を押し付けられていた。
因みに今日の加害実習は、学校の運営する地下ダンジョンの攻略。
各個人の実力は十分だったので、一日も経たずに最下層まで到達する事ができた。楽勝。
84日目。
何故か表彰された。
なんでも、ダンジョンの最下層で倒したラージサイスとかいう死神っぽい魔物が、このダンジョンのラスボスだったらしい。あそこまでいける人間は、中々いないのだそうだ。
っていっても、俺がいなくても他三人の実力で十分攻略できたと思うんだけど。
って言ったら、あんな戦術は思いつかないとかべた褒めされた。うーん、リアルタイムRPG様様といったところなんだろうか。
87日目。
魔導技術研究部がゴーレムを暴走させた。
なんでも従来のゴーレムの防御力を向上させ、なおかつ従来以上の機動力を持ったゴーレムだったんだとか。
見た目は5メートルくらいの人型。レンガっぽい基礎に、所々鉄板で補強されていた。
まぁ、ああいう輩には大抵“核”が設定されている筈だ。
再利用したいから核を壊すのは勘弁してくれと泣く魔技研を振り払い、核に向かってスピアの魔術を乗せた弾丸を撃ちまくって木っ端微塵にしてやった。
ふははははwww
88日目。
魔技研の連中が復讐に来た。
今度はガーゴイル改だって。石でできた魔界の生物っぽいの。といってもゴーレムの親戚。
上空から低級魔術を連発してきた。うっとおしかったので、最近覚えた雷を撃つ魔術で潰した。
うん。快調。
89日目。
エレインたちとギルドの依頼を受けた。
なんでも北の村に出現する魔獣を駆除してほしいのだとか。牧畜をあらされて困っているという依頼だ。
距離にして片道丸一日ほど。
と言うわけで今日から再び旅の人。
因みに移動手段は学園持ちの馬車。火の番を誰がするかで五月蝿かったので、俺が立候補しておいた。
まぁ、そんなもんする気はないが。
90日目。
どうもエレインは野宿が苦手なようだ。流石は貴族。シーファとサムのほうがたくましいくらいだ。
村について一番最初にダウンしたエレイン。どうしたものかと少し困ったが、幸い今日は件の魔物も出現しなかった様子だ。
一応この後も警戒しておくことにする。
91日目。
出た。出ました。オークでした。オーク。
あの斧持った不細工な豚。家畜を奪おうとしていたところを強襲し、一気に片付けましたとも。
あ、エレインはダウンしてたから、俺とシーファのファイヤーボールでふっとばし、残ったのをサムが剣でバッサリといった。
明日には村を出る。村長さんたちに物凄く感謝された。
92日目。
出番の無かったエレイン涙目。帰り道延々と愚痴られた。
面倒くさかったが、ソレをいうとさらに文句を言われそうなので黙っておいた。
のだが、帰りに魔物に襲われた際、エレインが地面の割れ目に落ちてしまった。仕方が無いので俺が降りたのだが、魔物の襲撃が激しく、サムとシーファは先に行かせた。何せ俺がいれば空飛べるし。
――とか思っていたのに。入ってきた穴は塞がってしまうし、エレインは何気に目を覚まさないし。
ちょっとピンチかもしれない。
93日目。
幸いエレインは目を覚ましたものの、どうやら足を挫いているらしい。
ここでお姫様抱っこをすれば王道かもしれないが、残念ながら俺にそんな余裕は無い。精々運びやすいおんぶまでだ。
途中でカエルの魔物が湧いたものの、幸いこの地下洞窟みたいな場所は通路が狭い。こういう場所では拳銃はかなり有利なのだ。なにせ回避場所が無いのだから。
そういうわけで、テキパキとカエルを駆除しながら先に進んだ。
進んだ先で、何か物凄く綺麗なものを見つけた。白と黒の飾りが取り付けられた、シンプルかつ高価そうな葡萄色のマントだ。
俺の好きな色だったし、折角なので頂いておいた。
その先に出口まであったのはラッキーだ。
本日は丘で野宿。
94日目。
エレインを背負ったまま空を飛んだ。エレインはちょっと感動してた。あの喧しいのが素直に感動していたのはちょっと可愛らしかった。これがツンデレなんだろうかと思ったくらいだ。
で、空から見ればある程度地形がわかったので、そのまま一気に学園に向けて飛んで帰った。
帰ったら学園で捜索隊を組むかとかで物凄く慌しくなっていた。セーフ。
95日目。
このマント、マジックアイテムだったらしい。それも聖遺物とか呼ばれる類の。
効果は、各種魔力の効果を無効化することと、最大の能力がなんと空を飛ぶ事!!
――地力で飛べるしなぁ。まぁ、これが有るのと無いのとでは、自転車とランニング程度の差がある。機動力アップは間違い無いし、防御力も凄く魅力的だ。
んで、ソレとは別に、なんだか学院が活気立ち始めている。何事かと聞いたら、どうやら此処に勇者がくるらしい。
勇者。なんという陳腐な響きか。
いや、別に悪いとか言わんが、俺ってそいつと間違えられたんだよね。
どんな奴なんだろうか。
96日目。
久々に個人で依頼を受けてみた。勿論街中の。
妊婦さんの変わりに力仕事を受けたり、じいちゃんばあちゃんのために力仕事したり。
基本的に力仕事代行って感じで、街の人たちに馴染めるようにした。
勇者の話で活気立ちはじめてる。
97日目。
今日は魔術師として魔導工房に出向く事になった。
青水晶一杯に魔力をチャージする。質にもよるが、大体一つ銀貨二枚との話。
一つ試しに作ってみたら、銀貨五枚とか言われた。さすが桁違い魔力。
でも聞いた話、魔力のほかにも技量とかが要るらしい。俺も成長しているという事かな?
報酬安めでいいから、大量生産する変わりに何か一つ魔導器くれって言ったら大喜びされた。
街が大分賑やかになってきた勇者様さまさまらしい。
98日目。
医療系魔術も一通り扱えるという事を話したら、今日は町外れの土方に回されてしまった。
なんでも治水工事をしているのだとか。氾濫しやすい川の横に、ちょっと深めの川を作って、其方を本流に作り変えるのだとか。むしろ地形改竄?
事故多発でピンチらしく、医療班としてせっせと治療治療。
昼過ぎくらいだろうか。ふと遅々として進まない工事にイラッと来て、「なら俺が吹っ飛ばす!!」とか勢いのまま言い出してしまった。
あの時は俺も高かった。テンションが。
習得したての逐次詠唱法。
一つの魔術が完了する前に、次の魔術を次々と編み上げる連続魔術行使技術の一種。
それで熟練度の高いファイヤーボールとスピアを、硬い地盤に向けて連射しまくった。結果は予想通り、見事に穴を掘れた。新技で穴掘りて。重機のプロモかと。
報酬は割り増ししてもらえた。ラッキー。
99日目。
どうやら明日には勇者がこの学園、ひいては街に訪れるとのことだ。
なんでも召喚されたばかりの勇者はまだ未熟で、学園で基礎から力をつける必要があるとのこと。
なんとも情け無い勇者様。そんなので世界が救えんのだろうか。まぁ俺はモブキャラ。関係ネーヨ!
今日も街の依頼をこなしていた。あ、勿論午前中は勉強してたさ。




