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サリーのオバア  作者: NiO
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 気がつくと、私は幼稚園の制服を着ていた。

 小さな手を引いているのは、サリーのオバアだった。


 これは夢だ――すぐにそう気づいた。

 いつの間にか寝てしまったのだろう。

 けれど、懐かしい手の感触はあまりに鮮やかで、胸が熱くなった。

 きっと、昔の記憶を夢として思い出しているのだ。


 まだ太陽の出ない早朝。

 私たちは家の近くの枯れた井戸の前に立っていた。

 オバアは小さな徳利を取り出す。泡盛だ。

 それに菊の葉を三枚浮かべる。


請い願います(サリー) 尊き方(アートートー)尊き方(ウートートー)……」


 両手を合わせ、オバアは呪文のような言葉を唱えた。

 意味は分からない。けれどその声は、不思議に澄んでいて、耳の奥にしみこんでいく。


『サリー? サリーってなんだろう』


 子供の私はそう首を傾げていた。


 やがてオバアは盃を口にし、菊酒(チクザキ)を一口飲む。


「これで今年も、家族は元気でいられるさ」


 その言葉に、私は興奮して飛び跳ねる。


「え、そうなの? じゃあ、私も飲むね!」


 サリーのオバアは前歯のない笑顔で笑い、首を振った。


「アンタは子供だから、水撫で(ウビナディ)しようね」


 そう言って、中指を菊酒(チクザキ)に浸し、私の額にちょんと触れる。


 東の空が明るみ、太陽が顔を出した。



「ライオンキ◯ングみたい!」



 笑う私の額を、サリーのオバアは指でゴシゴシと撫でる。


 前歯の無い笑顔でくすぐったそうに笑うサリーのオバアの顔は、まるで猿みたいだった。

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― 新着の感想 ―
るまるーまさんの感想にいいねを押したい… NiOさん、すみません、わたしもオバアの善意を信じられず、裏の意味がないかと読み直してしまいました……そして感想まで見て、本当に善意だとわかりました。 1周目…
悪意はないと前置きします Nioさんの話だからホラーなのかと思って、悪意を疑ってしまった。 普通に善意の話だった。
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