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見た目は似ていますが

 私とマーガレット様は私の父とバドレー公爵様のやり取りを見ていた場所から離れました。

 バドレー公爵様はまだ尻餅をついたままですが・・・。


 私は前を歩くマーガレット様について行っていましたが、マーガレット様の肩が震えていることに気付きました。

 血が繋がらないとは言え、自分のお父様のあんなところを見たことがショックだったのでしょうか。と、私は思いましたが、

「ふふっ。いい気味・・・ふふっ」

 わ、笑っているようです!


「あーあ、あんなにこてんぱんにやられるんだもの!笑っちゃうわ!」

 マーガレット様は声高らかに笑いました。おー、悪役令嬢っぽいですねー。

 私はついつい感心していましたが、マーガレット様がいきなり振り返って、

「あなた、何なんですか?一人で戻って下さいと言いましたよね?」

「あ、あの、帰り道が分からなくて・・・」

「はあ?あなた、本当に迷子だったんですか?」

 マーガレット様は呆れたように言いました。

「は、はい・・・すみません・・・」

 マーガレット様は眉をしかめましたが、

「まあ、いいですわ。ついて来て下さい」

「あ、ありがとうございます。あ、あの、マーガレット様は良く王城に来られるんですか?」

「まさか。初めてです。横に長いお屋敷は迷わないように各区画ごとにちょっとした違いを作っているものです。王城だって、同じ事。その違いを順に覚えていればいいだけです。どこもかしこも同じなわけがないでしょう?」

 お、同じだと思ってました!

 私がまたまた感心していますと、

「あなたこそ、王城には何度も来たことがあるのでしょう?」

「いえ、一昨日と今日だけです」

「レオンハルト殿下と親しいのに?」

「えっと・・・」

 レオ様は私たちをアナスタシア殿下に会わせたくなかったから、王城に誘わなかったんですよねー。なんて、言えませんので、「レオさ、レオンハルト殿下は田舎にある我が家をとても気に入って下さってたので、自分で行く方が良かったのではないでしょうかねー・・・」

「ふうん・・・」

「・・・」

 レオ様に興味があるんでしょうか・・・なんてことを思ってますと、マーガレット様はちらりと私に視線を送りますと、

「誤解しないで下さいね。あの人の言いなりになるつもりはこれっぽっちもありませんし、お会いしたこともないレオンハルト殿下に何の感情もありませんから」

「・・・」

 私の心が分かるのでしょうか。

「まったく・・・取り入るだなんて、冗談じゃないわ。そんなつもりでアナスタシア殿下と親しくなったわけじゃないのに」

 私はうんうんと頷きますと、

「ええ。マーガレット様はそんな方じゃないですよ。自分をしっかりと持ってらっしゃる方ですもの」

 すると、マーガレット様はぴたりと足を止めて、

「なんですって?」

 私をじろりと見ました。お、怒らないで下さい!

「そ、その、お父様にあんな態度を取られても、堂々としてらしたから、そう思ったんです。そ、その、尊敬します」

 と、私が恐る恐る言うと、マーガレット様は何故か真っ赤になって、

「そ、そんなことはありませんわ。な、何を大袈裟な」

 と、言いますと、また歩き始めました。


 私は追いかけながら、

「あ、あの、お父様はいつもあんな風なのですか?お、おうちで・・・」

 と、聞きますと、マーガレット様は鼻で笑って、

「まさか。あの人は外でしか偉そうに出来ませんわ。あの人、投資で大損して、母の実家に助けてもらったんです。おまけに母は気が強いから、頭が上がらないし、それに今は一緒に暮らしていませんわ」

「なら、マーガレット様は嫌な思いをしないで済むのですね」

 と、私がホッとして、言いますと、マーガレット様はまた立ち止まって、

「どういう意味ですの?」

「え、あの、心配になって・・・あ、わ、私なんかに心配なんかされたくありませんよね・・・」

「ええ。余計なお世話ですわ」

 ですよねー・・・。

 私がしょぼんとしてますと、またマーガレット様が歩き始め、更に歩くスピードが早くなります。ひぃっ!


 私が必死で追いかけていると、

「あなた、呑気に構えない方がいいと思いますけど?」

「は、はい?」

「レオンハルト殿下にお近づきになりたいという輩はこれからもっともっと増えますわ。レオンハルト殿下の心をしっかりつかんでおいた方が宜しいのではないかしら」

 マーガレット様は早歩きしているせいか、喋るのも早いです。いえ、そんなことより、

「あ、あの、今のはどういう意味ですか?」

 と、私、聞きました。

 もちろん、聞こえていましたが、意味が分かりません。何故、私がレオ様の心をつかんでおかないといけないのでしょう?


 すると、マーガレット様は耳まで真っ赤になって、

「べ、別にあなたを心配しているわけではありませんからっ。それに、あなたに助けられなくても、私は大丈夫だったんですからね。先程言いましたが、あの人は、母には頭が上がらない情けのない男です。母に言い付けると言えば、途端に静かになるのですから。だから、あなたは余計なことをしなくて良かったのです。あまり無鉄砲なことはなさらないで下さい。逆に迷惑です」

 またまた感心するくらいマーガレット様は早口で言い終えると、スッと前を指差して、「このまま真っ直ぐ行けば、大広間ですから。・・・では、お先に!」

 マーガレット様は早歩きで行ってしまいました。は、早い。


 私、呆然としていましたが、ハッとしました。


「お友達になって下さいって、言えば良かった!」




 今回、マーガレット・フォスター様と友達にはなれませんでしたが、これが、後に、私の親友となり、同じ髪色と同じ悪役顔から、まるで姉妹のようだと言われるまでになるマーガレット様との出会いでした。





 マーガレット様は『魔法学園』にて、再登場します。


 キャスの親友兼教育係になります。




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