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おもてなし。

「ふふっ」

 私、カサンドラ・ロクサーヌ。朝の光を浴びながら、笑ってます。「ふふふっ」

 もちろん、頭がおかしくなったわけではありません。

 やーっと!『落とし穴作戦』を決行させるのです!!

 本日、我が家にレオ様、シュナイダー様、ルークの3人が来ます。

 私、この間、怒って、泣いて・・・雰囲気を微妙にさせたお詫びとして(もちろんルークが一番悪いのですが)、趣向を凝らしたおもてなしをしますので、是非来て下さいね☆と、招待状まで送って、3人をお誘いしました。


「じゃあ、私は出掛けるけど、くれぐれもよろしくね。・・・それにしても、この間もだけど、私が出掛ける時に来られるなんてねえ」

 と、母は溜め息混じりに言いました。

 母は、毎週のこととは言え、王子様が来られるのに、家を空けるのは申し訳なさそうです。

 でも、これは前回もですが、私が母の外出を狙って、招く日を決めたのです。

 ちなみに前回はシェフさんが新しいスイーツを開発したので。と、誘いました。レオ様は意外に甘いものが大好きです。そして、シュナイダー様には珍しい茶葉を手に入ったと言いました。お茶を淹れることが好きなシュナイダー様は思った以上に食いつきが良かったです。

 それにしましても、私の無理なお願いを聞いてくれる我が家の使用人さんたちには本当に感謝です!


 何せ、母に私が『落とし穴』にレオ様とシュナイダー様を落としたと知られたら、大変ですからね。何日おやつ抜きにさせられるか分かったものではありません。私、本気で泣きます。

 『落とし穴』に落ちたことは、レオ様もシュナイダー様も、性格上、恥と思うはずですから、私の両親に告げ口するとは思えません。ルークもレオ様を倣うでしょう。

 後はリバーですが、うーん・・・まあ、大丈夫でしょう!(全く根拠なし)


「いってらっしゃーい」

 私とリバーは母を見送りました。

 リバーは母を乗せた馬車が見えなくなると、

「じゃあ、僕は(剣術の)稽古があるから」

「うん。頑張ってね。私はレオ様たちをおもてなしする準備をするね」

 すると、リバーはにっこり笑って、

「上手くやるんだよ」

 と、言いましたので、

「うん!」

 と、私は元気良く答えました。張り切ってますからね!


 私は手を振りながら、リバーを見送っていましたが・・・。

「リバー、あんな風に笑ってたことあったっけ?」

 何だかいつもの笑顔と違うような気がします。

 それに、『上手くやるんだよ』って言う言葉も何だか引っ掛かります。うーん・・・。

「ま、いっか!」

 私は準備をするために裏庭へ向かいました。


 裏庭に到着した私は、まずただの花壇に見えるように落とし穴の周りに置いてあった小石を全てどけました。

 落とし穴の2メートル程向こうにはテーブルセットを既に設置してあります。3人をその椅子に座るようにと誘導するのです。

 もうちょっと近くに置きたかったのですが、テーブルセットは母のお気に入りなので、一緒に落とし穴に落ちたら大変なので、出来るだけ離して置くことにしました。

 そして、私は、自分が落ちないようギリギリの位置に、目印として、細いロープを置きました。一見何も無いように見えますが、私、めちゃくちゃ視力いいですから、大丈夫です!

「これでよし!」

 完成です!やりましたー!


 今日、やっと、半年の苦労が報われるのです!当初の予定とは違い3人になりましたが、ルークは落ちて当然ですからね!レオ様の怒りは怖かったでしょうが、やっばり、私からの罰も受けてもらわないとねっ!

「ふふっ」

 私、悪役令嬢らしい意地の悪い笑みをこぼしました。 



 そして、私は気付きませんでしたが、裏庭が見える窓辺に立ち、笑っているリバーがおりました。

「3人に罰が下るのは、本当に楽しみだ」

 と、リバーは呟きました。


 レオ様・・・私にセクハラをすることに対しての罰。

 ルーク・・・私を泣かしたことに対する罰。

 シュナイダー様・・・私の心を奪ったことに対する罰。


 リバー!シュナイダー様は何も悪くないですよ?!


 それにしましても、いつの間にリバーは腹黒くなったのでしょうか?!


 まだ9歳なのですから、お姉ちゃんは、リバーの将来が心配になって来ました!



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