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キャスとは呼べません

 私は、レオ様の理想の女性の存在を、私が前から知っていたことを、二人が結ばれたとしても、一生黙っているようにとルークに約束させると、やっと、客間に戻りました。

「ずいぶん話が長かったな」

 レオ様がどことなく不機嫌そうに言いました。

 私はにっこり笑って、

「ルークの恋の話を聞いていたのです」

「キャス様?!」

 ルークが真っ赤になって、声を上げました。

 ふっ。私に嘘をついた仕返しですよ。


 このルーク、レオ様を崇拝していると言いながら、実は淡い恋を既に経験しているのです。いっちょ前に!

 ルークはお母様が出産後に体調を崩し、しばらくグレイ伯爵家の領地でお母様と共に過ごしたと言っていましたよね。

 その領地の牧師館の娘さんが恋のお相手なのです!2つ年上です!

 木登りをしていたルークの腕を尖った枝の先が掠め、怪我をしたのを偶然娘さんが見て、手当てを申し出たのが二人の出会いでした。

 その後、何度か会って、すっかり打ち解けたそうです。でも、ルークはレオ様の話ばかりだったんですよねー。牧師館の娘さんも、誤解しているかもしれませんね。

 王都に戻った後は、もう何もないそうです。まったくー、もったいないことを。


 ルークの攻略法なんて、私がレオ様の為に、ヒロインと恋する可能性なんて潰してやりますから、もうどうでもいいんですが、一応お知らせしますね。


 淡い恋のお相手が面倒見の良い年上の娘さんでしたので、ルークの好みのタイプは、もちろん、『面倒見の良いお姉さん』です。

 ルークは早い段階で牧師館の娘さんのことをヒロインに自ら話しますし(攻略対象自らヒントと言うか、ほぼ正解をばらしてしまうとは・・・)、イベントの際は、怪我をしたり、おなかをすかしたりしてますので、それに応じた選択をすれば、ルークは簡単に攻略出来ます。

 ルークは『魔法学園でつかまえて』の攻略対象キャラの中で一番簡単です。ライバルはいませんからね。牧師館の娘さんはもちろん出て来ませんしね。



「キャス様!なぜ知ってるんですか?!」

「カーライル家の情報網を甘く見ないで下さーい。ルークは年上好きなんですねー!」

「キャス様!」

 顔を真っ赤にしたルークが追い掛けて来ますので、私は当然逃げます。

 そんな感じで追いかけっこしていると、

「わっ」

 私なぜかレオ様に捕まりました。「な、何ですか?」

「ルークとはなんだ?おまけにルーカスにキャスと呼ばせてるのか?」

「あんなことがありましたからね!早く打ち解け合えるようにお互い愛称で呼ぶことにしたんです!(本当はども噛み予防ですが)」

 私は満面の笑顔で言いましたが、

「・・・」

 レオ様はむくれてます。なぜでしょう。


 まあ、いいです。それよりもです。

「あ、あの、シュナイダー様」

「はい?」

 シュナイダー様は私にカップを差し出し、「淹れたてです。どうぞ」

 わおっ!

「ありがとうございます!」

 シュナイダー様がお茶を淹れて下さいました!飲みたかったのでとっても嬉しいです!

「あの、シュナイダー様」

「はい?」

「シュナイダー様もよ、良ければ、キャ、スと呼んで下さいませんか・・・」

 言ってしまいました!私、大胆なことをしてしまいました!やっぱり恋は人をおかしくさせますね!


 シュナイダー様はしばらく私の顔を見つめていましたが、

「あ、はい」

「!ありがとうございます!」

 私は嬉しさのあまり飛び上がりそうになりましたが、シュナイダー様は私の背後に目線を持って行くと、微かに(本当に微かにですが)目を見張り、その後、一つ咳をすると、

「申し訳ありません。私、実はカサンドラ様の名前の響きを気に入っておりまして、これからもカサンドラ様と呼ばさせていただきます」

「え、あ、そうですか・・・」

 えー、がっくしです。でも、シュナイダー様は私の名前の響きを気に入ってるそうです!感激です!お父様、お母様、ありがとうございます!


「あ、あの、キャスさ、カサンドラ様」

 何故か、ルークが青い顔をして、「や、やはり、公爵令嬢であるカサンドラ様を気安く呼ぶわけにはいきませんので、自分もカサンドラ様とこれからも呼ぶようにします・・・」

 えー?あなた、私のこと『この女』呼ばわりしたくせにですかー?まあ、どっちでもいいですが。

 にしても、『キャス』呼びは家族とレオ様だけですかー。ちょっと寂しいです。


「キャス」

 どことなく悪い笑顔を浮かべているレオ様が、「座ろうな」

 と、言って、私をソファーに連れて行きます。

「シュナイダー、私にも茶を淹れてくれ」

 と、レオ様がシュナイダー様に頼みました。

「はい。すぐに」

 シュナイダー様はティーセットを置いてあるテーブルに向かいました。


 レオ様はにこにこしながら、私の髪をなでなでしてくれます。

「・・・?」

 どうしたのでしょう。機嫌良くなったんですかね。不機嫌になったり、上機嫌になったり、レオ様は忙しいですね。

 あ、レオ様もシュナイダー様にお茶を淹れてもらうと嬉しいんですかね?はっ!もしかして、萌えてるんですか?!



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